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【第3回】親4人、自分たち夫婦2人――最大6人の介護をどう考えるか?

第3回

全20回連載 「老後資金を増やす前に 介護で失わない家計のつくり方」

親の介護、自分たちの介護、仕事とお金――50代・60代が今から考えたい20の現実

親の介護が終われば、介護の問題は終わるのでしょうか?

前回の記事では、
 

自分の父親・母親。
配偶者の父親・母親。
 

夫婦で考えれば、最大4人の親について介護が必要になる可能性がある、というお話をしました。
 

しかし、50代・60代のライフプランを考えるときには、もう少し先まで見ておく必要があります。
 

なぜなら、親の介護の先には、「自分自身の介護」そして、「配偶者の介護」が待っている可能性があるからです。
 

つまり、
 

・自分の父
・自分の母
・配偶者の父
・配偶者の母
・自分
・配偶者
 

まで含めると、人生後半の介護について考える対象は、最大6人になります。
 

もちろん、6人全員に介護が必要になるという意味ではありません。
ましてや、6人分の介護費用を自分たち夫婦が準備しなければならない、という話でもありません。
 

私がお伝えしたいのは、「親の介護」と「自分たちの老後」を別々に考えないこと。

親の介護から自分たち夫婦の介護までを、一つの時間軸で見渡しておくことが大切だということです。
 

50代・60代は「介護する側」と「自分の老後を準備する側」が重なる

50代・60代という年代は、少し特殊な時期だと思います。
 

親は70代、80代、90代になり、病気や介護のリスクが高くなっていきます。
 

一方で自分自身も、
 

・定年
・再雇用
・役職定年
・収入の減少
・住宅ローン
・老後資金
・年金
・これからの働き方
 

といった問題を考えなければなりません。
 

つまり、「親を支える時期」と、「自分たちの老後を準備する時期」が重なっているのです。
 

ここを別々に考えてしまうと、「老後のためにこれだけ貯めれば大丈夫」と思っていた資金を、親の介護が始まったことで取り崩すことになる。

あるいは、介護のために働き方を変え、想定していた収入が得られなくなる。
 

そんなことも起こり得ます。
 

実際に「介護する側」も高齢化しています

厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査」によると、要介護者等と同居している主な介護者の年齢の組み合わせでは、
 

「60歳以上同士」が79.0%

「65歳以上同士」が61.9%
 

となっています。
 

つまり、「高齢の親を若い子どもが介護する」というケースだけではなく、「高齢者が高齢者を介護する」いわゆる老老介護が、すでに珍しくない状況になっています。
 

親の介護が長期間続けば、介護を始めたときには50代だった子どもが、親の介護を続けるうちに60代になることもあります。

配偶者同士の介護もあります。
 

だからこそ、「親の介護だけ何とかすればいい」という考え方では、人生後半のライフプランとして十分ではないのです。
 

【引用・参考】
厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況 介護の状況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa25/dl/14.pdf
 

介護する相手は「親」だけとは限りません

介護という言葉を聞くと、「子どもが親を介護する」というイメージを持つ方が多いかもしれません。
 

しかし、実際には配偶者が介護を担うケースもあります。
 

厚生労働省の2022年国民生活基礎調査では、要介護者等と同居している主な介護者を続柄別に見ると、
 

「配偶者」が22.9%
「子」が16.2%
 

となっています。
 

つまり、自分自身が要介護状態になった場合、最初に介護を担う可能性があるのは、自分の子どもとは限りません。
 

配偶者かもしれません。

逆に、配偶者に介護が必要になれば、自分自身が主な介護者になる可能性があります。
 

自分が75歳、配偶者が73歳。

自分が80歳、配偶者が78歳。
 

そうした年代になってから、
 

「誰が介護するのか?」

「どこで暮らすのか?」

「どのお金を使うのか?」
 

を初めて考えるのでは、選択肢が限られてしまう場合があります。
 

【引用・参考】
厚生労働省「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況 介護の状況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa22/dl/14.pdf
 

「親の介護費」と「自分たちの介護費」を混ぜない

ここで、老後資金を考えるうえで非常に重要なポイントがあります。
 

それは、「親の介護に使うお金」と、「自分たち夫婦の老後・介護に必要なお金」を、できるだけ混ぜないことです。
 

親に介護が必要になった場合、まず親自身の年金や預貯金などを活用して介護を組み立てることを基本に考えます。
 

もちろん、家庭によって事情は異なります。

親の資産が十分でないケースもあります。

子どもが一部を援助するケースもあるでしょう。
 

しかし、何のルールも決めないまま、「足りなければ、その都度子どもが出す」という状態になってしまうと、自分たちの老後資金まで少しずつ減っていく可能性があります。

しかも、それが数年間続くかもしれません。
 

介護は「いつまで続くか」が分かりません

生命保険文化センターの2024年度調査では、介護経験者の介護期間は平均4年7カ月でした。
 

一方で、4年以上介護した人も約4割います。
 

一時的な介護費用は平均47.2万円。

月々の介護費用は平均9.0万円。

在宅では月平均5.3万円、施設では月平均13.8万円となっています。
 

もちろん、これは平均値であり、「1人につき必ずこれだけかかる」という数字ではありません。
 

要介護度、介護期間、在宅か施設か、本人の所得や資産、公的制度の利用状況などによって大きく異なります。
 

ただ、ここから分かる大切なことがあります。
 

介護は、「来月いくら必要か?」だけではなく、「何年間続くか分からない支出」として考える必要があるということです。
 

【引用・参考】
公益財団法人 生命保険文化センター
「介護にはどれくらいの費用・期間がかかる?」
https://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/1116.html
 

こんな「介護の連鎖」も考えておく必要があります

例えば、55歳の夫婦を想像してみてください。
 

夫の父が82歳。
夫の母が80歳。
妻の父が84歳。
妻の母が79歳。

自分たちは55歳前後。
 

現在は4人の親が元気だったとしても、これから10年、20年の間に状況が変わる可能性があります。
 

最初に夫の母の介護が始まる。

数年後、妻の父にも介護が必要になる。

夫婦で仕事をしながら、双方の親への対応をする。

その間に自分たちは60代になる。

親の介護が一段落した頃には、自分たちが70代になっている。
 

そして今度は、自分または配偶者に介護が必要になる。
 

決してすべての家庭がこのようになるわけではありません。
 

しかし、「親の介護」と「自分たちの介護」の間には、必ずしも十分な空白期間があるとは限らない。

この可能性を知っておくことが大切です。
 

だから「介護計画」が先、「マネープラン」はその後

老後資金の相談では、
 

「老後にいくら必要ですか?」

「NISAはいくら積み立てればいいですか?」

「年金は何歳から受け取るのが得ですか?」
 

という質問が出てきます。
 

もちろん、大切な問題です。
 

しかし私は、その前に確認したいことがあります。
 

親が介護になった場合、誰が動くのでしょうか?

親自身の年金や資産を家族は把握しているでしょうか?

在宅介護を希望しているのでしょうか?

施設を希望しているのでしょうか?

兄弟姉妹はどう分担するのでしょうか?

仕事はどのように続けるのでしょうか?
 

そして、

自分や配偶者に介護が必要になったとき、どこで暮らしたいのでしょうか?

こうした「介護計画」が見えてこなければ、本当に必要な老後資金も見えてきません
 

だから私は、「介護計画を考えたうえで、マネープランを考える」という順番が大切だと思っています。
 

「6人分の介護費用を用意する」という話ではありません

この連載で「最大6人」という言葉を使うと、「そんなにお金を準備できるはずがない」と思われる方もいるでしょう。
 

6人分の介護費用を自分たちで準備しましょう、という話ではありません。
 

考えたいのは、「6人を一つの財布で支えること」ではなく、「それぞれについて、誰が・何を・どのお金で支えるのかを整理すること」です。
 

例えば、
 

親の介護費用
→基本的には親自身の年金・資産


自分たち夫婦の介護費用
→自分たちの老後資産・年金


子どもの役割
→介護そのものを抱え込むのではなく、制度やサービスを利用しながら支援体制を整える


といったように分けて考えます。
 

この整理ができていれば、親の介護が始まったからといって、無制限に自分たちの老後資金からお金を出すことを防ぎやすくなります。
 

お金だけではありません。「誰が動くか」も重要です

介護について家族で考える際、「費用はいくらか?」だけを話し合っても十分ではありません。
 

実際には、
 

・病院から連絡を受ける人
・通院に同行する人
・介護認定の申請をする人
・ケアマネジャーと連絡を取る人
・施設を探す人
・実家を管理する人
・お金を管理する人
・兄弟姉妹に情報共有する人
 

など、さまざまな役割があります。
 

一人がすべて引き受ければ、仕事との両立が難しくなります。
 

結果として、「もう会社を辞めるしかない」という判断につながる可能性もあります。
 

ですから、介護離職を防ぐためにも、お金の準備と同時に、「家族の役割分担」を考えておくことが重要です。
 

自分たち夫婦についても、今から話しておく

そして、もう一つ。

親について話すだけでなく、自分たち夫婦でも話してみてください。
 

例えば、
 

「介護が必要になったら、自宅で暮らしたい?」

「施設という選択肢はどう思う?」

「子どもには、どこまで頼みたい?」

「認知症になった場合、お金の管理はどうしたい?」
 

こうした話です。
 

50代では、「まだ早い」と感じるかもしれません。
 

しかし、元気で判断力がある今だからこそ、落ち着いて話すことができます。
 

介護が必要になってから考えるよりも、「どう生きたいか?」という人生の希望として話しておく方が、前向きな話し合いになるのではないでしょうか?
 

私自身、両親の介護から感じていること

私自身、両親の介護に直面して感じるのは、「介護は、一人だけを見ていれば済む問題ではない」ということです。
 

父の状態。

母の状態。

施設との連絡。

病院とのやり取り。

仕事との調整。

そして、自分自身の生活。
 

一つが変化すると、ほかにも影響します。
 

だからこそ、一人の介護だけを見るのではなく、「家族全体の生活をどう維持するか?」という視点が必要だと感じています。
 

そして、さらに先には、自分自身の老後があります。
 

親の介護のために自分たちの老後を壊してしまっては、介護の負担を次の世代に渡してしまう可能性があります。
 

だからこそ、
 

親を支えることと、

自分たちの人生を守ること。
 

この二つを両立させる必要があるのだと思います。
 

今日からできること――「6人の介護マップ」を作ってみる

ぜひ、紙を1枚用意してみてください。
 

そして、
 

① 自分の父
② 自分の母
③ 配偶者の父
④ 配偶者の母
⑤ 自分
⑥ 配偶者
 

の6人を書きます。
 

それぞれについて、次の項目を確認してみてください。
 

・現在の年齢
・健康状態
・現在の住まい
・介護が必要になった場合の希望
・年金や資産を家族が把握しているか?
・誰が最初に対応する可能性が高いか?
・自宅からの距離
・兄弟姉妹など協力できる人がいるか?

 

全部埋める必要はありません。

「分からない」がたくさんあっても大丈夫です。
 

むしろ、
 

どこが分からないのか?

何を家族で話していないのか?
 

それが見えることに意味があります。
 

老後資金を増やす前に、介護で失わない仕組みをつくる

人生後半のお金を考えるとき、
 

年金。

退職金。

預貯金。

NISA。

資産運用。
 

だけを見るのではなく、
 

親の介護。

配偶者の親の介護。

自分自身の介護。

配偶者の介護。

そして、介護と仕事をどう両立するのか?
 

ここまでを一つのライフプランとして考えることが必要です。
 

老後資金を増やす前に、介護で失わない仕組みをつくる。

そのための第一歩は、「介護は親だけの問題ではない」と気づくことなのかもしれません。
 

次回予告

第4回は、「介護費用は月9万円だけではない――平均数字の正しい見方」をテーマにお伝えします。
 

「介護には平均でいくらかかるのか?」

多くの方が気になるテーマですが、平均額だけを見て介護資金を考えることには注意が必要です。
 

在宅と施設の違い、介護期間、見えにくい費用なども含めて、「介護費用の数字をどう読むべきか」を考えていきます。
 

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2026年08月16日 18:12

想定外の介護|第6回朝は普通だった父が、数時間後には危険な状態になった

第6回

「さっきまで大丈夫だった」が通用しない、高齢者介護の想定外

※この記事は、私自身の父の介護経験をもとに、本人の尊厳と個人情報に配慮しながら構成しています。
また、介護施設の対応を批判するものではありません。
施設職員の方々が父の変化に気づき、対応し、その状況を家族に共有してくださったことで、私たちが知ることのできた介護の現実です。
 


朝食の時は、いつもと大きく変わらなかった

父について施設から教えていただいた話の中で、私が特に驚いたことがあります。
 

ある日の朝。

父は普段どおり朝食をとっていました。

その時点では、特に目立った症状はなかったそうです。
 

少なくとも家族がその姿を見ていたら、「今日も大丈夫そうだ。」と思ったのではないでしょうか?
 

ところが、その数時間後。

午前10時頃に父の呼吸状態が急激に悪化しました。
 

施設の方からは、間質性肺炎の「急性増悪」が起こり、酸素飽和度が大きく低下し、かなり危険な状態だったと聞きました。
 

私はその話を聞いた時、思わず、「朝は普通だったのに...?」と思いました。
 

朝食をとっていた父が、わずか数時間後には危険な状態になっていた。

これもまた、私にとって大きな「想定外の介護」でした。
 


そもそも「間質性肺炎」とは、どんな病気なのか?

ここで、間質性肺炎について少しだけ触れておきたいと思います。
 

肺の中には、「肺胞」と呼ばれる小さな袋がたくさんあり、そこで体内に酸素を取り込んでいます。

間質性肺炎では、この肺胞の壁などに炎症や損傷が起こり、壁が厚く硬くなる「線維化」が進むことがあります。その結果、肺から酸素を取り込みにくくなり、進行すると息切れや、痰をあまり伴わないせきなどが現れることがあります。
 

また、「間質性肺疾患」は一つだけの病気を指す言葉ではありません。

原因が分からないものだけでなく、膠原病、薬剤、放射線治療、感染症、アレルギーなど、さまざまな原因や病型があります。
したがって、経過や治療、急変のしやすさも人によって違います。
 

私自身も、父がこの病気になるまでは「間質性肺炎」という言葉を詳しく知りませんでした。

病名を知った後も、「肺の病気なのだ。」という程度の理解と、「実際の生活の中で、どんなことが起こり得るのか?」という理解には、大きな隔たりがあったように思います。
 


「急性増悪」とは何なのか?

さらに、今回の父の出来事を理解するうえで重要なのが、「急性増悪」という言葉です。

日本呼吸器学会では、特発性間質性肺炎などの一部では、それまで比較的安定していた状態から、1か月以内という短期間に症状が急激に悪化することがあり、それを「急性増悪」と呼ぶと説明しています。

感染症や心不全などをきっかけに呼吸状態が急に悪化する場合もあります。
 

つまり、「少しずつ悪くなっていく。」とは限らないのです。
 

昨日まで比較的落ち着いていた。

朝も食事をしていた。
 

ところが、その後に呼吸状態が一気に悪化する。

父に実際に起きたのは、まさにそうした変化でした。
 


酸素飽和度が下がるとは、どういうことなのか?

施設からの連絡には、「酸素飽和度がかなり低下した。」という話もありました。
 

酸素飽和度、一般に「SpO2」と呼ばれる数値は、血液中のヘモグロビンに、どの程度酸素が結びついているかを皮膚の上から測ったものです。
指先にパルスオキシメーターを挟んで測る数値、と言えばイメージしやすいかもしれません。
 

もちろん、数値だけで個々の人の状態を単純に判断することはできません。

しかし、普段の状態から大きく低下することは、呼吸状態の変化を知る重要な手がかりになります。
血中の酸素が十分でない状態は、重症になると生命に関わる場合もあります。
 

私は父について、「酸素の数字が下がった。」という短い説明の裏側に、これほど重大な意味があることを改めて実感しました。
 


「朝は大丈夫だった」が安心材料にならないことがある

私たちは親の状態を、その瞬間の姿で判断します。
 

電話をしたら声が元気だった。

面会したら普通に会話ができた。

食事も食べていた。

歩いていた。

笑顔もあった。
 

そうすると、「まだ大丈夫そうだ。」と安心します。

私自身もそうでした。
 

でも父の経験を通じて、「今、大丈夫そうに見えること」と「この後も大丈夫であること」は、同じではないと知りました。
 

朝食を食べられた。

だから今日は大丈夫。
 

必ずしも、そうとは限らない病気もあるのです。
 


高齢者の場合、「一つの変化」が大きな変化につながることがある

ここで、もう一つ知っておきたいことがあります。
 

高齢になると、若い頃と比べて身体の「予備力」が低下していくことがあります。

国立長寿医療研究センターは、加齢に伴って身体の予備能力が低下し、フレイルと呼ばれる脆弱な状態になると、日常生活で起こるさまざまなストレスに対処する力が低下し、生活能力が大きく落ちることがあると説明しています。
 

すべての高齢者が同じという意味ではありません。
 

ただ、
 

若い人なら乗り越えられる体調変化が、高齢者には大きく影響する。

一つの入院をきっかけに歩く力が落ちる。

一つの感染症から急に状態が変わる。

治療によって別の持病への対応が変わる。
 

そんなことが起こる場合があります。
 


高齢者は「一つの病気だけ」を抱えているとは限らない

さらに高齢者の場合、複数の慢性疾患を持っていることも珍しくありません。
 

厚生労働省の高齢者向け資料でも、高齢期には糖尿病、心疾患、呼吸器疾患、慢性腎臓病、骨粗しょう症などの慢性疾患に加えて、認知機能低下、筋力低下、摂食・嚥下障害などが複雑に関係することが示されています。
 

父もそうでした。
 

間質性肺炎だけではありません。

糖尿病という持病もありました。
 

前回の記事で書いたように、間質性肺炎の治療をきっかけに糖尿病の管理方法が変わり、朝・昼・晩3回のインスリン注射が必要になりました。
 

間質性肺炎が落ち着いた。

だから元の生活に戻れる。

そうではありませんでした。
 

一つの病気の治療が、別の持病の管理に影響し、その結果、自宅へ戻ることが難しくなりました。

そして今回は、比較的落ち着いて生活している中で、間質性肺炎そのものが突然悪化しました。
 


病気の種類によって「想定外の形」も違う

介護の想定外は、すべて同じ形で起きるわけではありません。
 

呼吸器の病気であれば、父のように呼吸状態が急激に変化することがあります。

糖尿病であれば、薬や注射、食事との関係が毎日の暮らしに深く入り込むことがあります。
 

筋力や歩行能力が落ちれば、昨日まで行けていたトイレに一人で行けなくなることがあります。

認知機能が低下すれば、薬を飲んだかどうかが分からなくなったり、トイレに行くタイミングを判断しにくくなったりすることもあります。
 

つまり、「親に何の病気があるのか?」によって、起こり得る想定外も変わってくるのです。

だから私は、「介護」と一言で考えることが難しいのだと思うようになりました。
 


「病気」と「介護」は別々ではなかった

父母の介護を経験する前の私は、
 

病気は病院の話。

介護は生活の話。
 

どこか別々のものとして考えていたように思います。
 

でも実際には違いました。
 

父の間質性肺炎。

糖尿病。

インスリン注射。

排せつ。

服薬。

入浴。

歩行。
 

どれも別々の問題ではありません。
 

病気が変化すると、生活が変わる。

生活力が落ちると、介護が増える。
 

治療内容が変わると、家族の支援方法まで変わる。

医療と介護と暮らしは、すべてつながっていました。
 


第5回では「退院できる」と安心した直後に、想定外が起きた

前回の記事では、父の間質性肺炎が落ち着き、「これで退院して自宅へ帰れる。」と安心した矢先の出来事を書きました。
 

治療の影響で糖尿病の管理方法が変わり、朝・昼・晩3回のインスリン注射が必要になった。

その結果、自宅へ戻ることが難しくなり、介護付き有料老人ホームへの入居を選ぶことになった。
 

そして今回。

施設で比較的落ち着いて生活していると思っていた父に、突然の急変が起きました。
 

私は改めて感じました。

介護の想定外は、一度では終わらない。
 

一つを乗り越えたから、「これでもう大丈夫。」とは言えないことがあるのです。
 


もし自宅で一人だったら

父の話を聞いて、どうしても考えてしまったことがあります。
 

もし、あの日。

父が施設ではなく、自宅にいたら。
 

朝食を普通に食べている姿を見て、「今日は大丈夫そうだね。」と家族が仕事へ出かけていたら。
 

そして、その数時間後に急変していたら。
 

もちろん、これは仮定の話です。
 

自宅介護が悪いという話でもありません。

施設介護が必ず安全という話でもありません。
 

ただ、「朝は普通だったから、一人でも大丈夫だろう。」という判断だけでは分からないリスクがある。

私は父の経験から、そのことを強く感じました。
 


「うちの親も、見えていないだけかもしれない」

この連載で、読者の皆さんを怖がらせたいわけではありません。

不安を煽ることが目的でもありません。
 

私が伝えたいのは、「そんなことも起こるのか?」という現実です。
 

高齢者の場合、身体の予備力が低下していることがあります。

複数の持病を抱えていることもあります。
 

そして病気の種類によっては、ゆっくり悪くなるだけではなく、突然状態が変わることもあります。
 

昨日元気だった。

朝も普通だった。

だから今日も大丈夫。
 

必ずしも、そうとは限りません。
 

だからこそ、
 

「親は今、どんな病気を持っているのか?」

「その病気では、どんな変化が起こる可能性があるのか?」

「家族はどこまで知っているのか?」
 

一度考えてみることには意味があると思います。
 


私が作成した「親が倒れる前の介護準備チェックシート」では、かかりつけ医、服薬、持病・既往歴、急な入院時の連絡先なども確認できるようにしています。
 

親の持病や既往歴を「おおよそ把握しているか」も、30項目の一つです。
 

今すぐ何か重大な決断をする必要はありません。

まずは、「自分は、親の病気についてどこまで知っているだろう?」
 

そんな問いを、自分に向けてみるところからでもよいのではないでしょうか?
 

介護は、一つの出来事ではありません。
 

高齢であること。

持病があること。

病気の種類。

治療の変化。
 

それらが重なり合いながら、家族が想像していなかった介護につながることがあります。
 

それもまた、私が父の介護から知った「想定外の介護」の現実です。
 

▼親が倒れる前の介護準備 簡易診断アプリはこちらから
 

親が倒れる前の介護準備チェックシートはこちらから
 

▼親の介護や介護準備が気になっている方はこちらをご覧ください。

2026年08月15日 17:19

「5万円の特別レク」は高い?敬老会イベントの費用対効果を考える

連載⑪

レクが変わると、施設が変わる。

「外部レクに5万円か...。ちょっと高いかな?」

敬老会などの特別イベントを検討しているとき、こう感じる施設長や管理者の方もいらっしゃるのではないでしょうか?
 

普段、職員の皆さまが施設内で行っているレクリエーションと比較すれば、「1回5万円」という金額は決して小さくありません。

だからこそ大切なのは、「5万円は高いか、安いか」だけで判断しないこと。」ではないでしょうか?
 

その5万円によって、

  • 利用者様にどんな体験を届けられるのか?

  • 職員の企画・準備負担はどう変わるのか?

  • 何人の方が楽しめるのか?

  • 敬老会らしい特別な時間になるのか?

  • 当日の画像を採用などのHPなどに活用できないか?

  • SNSによる情報発信に活用できないか?

まで含めて考えることが必要だと思います。

今回は、敬老会などの特別レクリエーションの「費用対効果」について考えてみます。
 


普段のレクと「特別レク」は、同じ物差しで比べない

まず整理しておきたいのは、毎日のレクリエーションと敬老会のような特別イベントは、役割が少し違うということです。

普段のレクには、

  • 身体を動かす

  • 人との交流を楽しむ

  • 日々の生活にメリハリをつくる

  • 安心できる習慣をつくる

といった大切な役割があります。

一方、敬老会や周年行事、クリスマス会などは、「今日は特別な日」と感じていただくための機会でもあります。

ですから、「毎週のレクなら5万円は高い。」という判断と、「年に一度の敬老会として5万円をどう考えるか?」は、分けて考えることも必要なのではないかと思います。
 


「1回5万円」ではなく「何人に届けられるか?」で考えてみる

たとえば、50名の利用者様が参加するイベントであれば、5万円は単純計算で1人あたり約1,000円です。

30名なら、1人あたり約1,700円です。
 

もちろん、人数だけで費用対効果が決まるわけではありません。

しかし、「1回5万円」という数字だけを見るのと、「利用者様一人ひとりに、どんな体験を届けられるのか?」「他の活用方法があるのではないか?」という視点で見るのとでは、印象が変わります。
 

特に、見るだけでも楽しめて、希望する方は少し参加もできるようなプログラムであれば、身体状況の異なる多くの利用者様が同じ空間で楽しめる可能性があります。
 


見落とされやすいのが「職員の準備時間」というコスト

施設内でイベントを行う場合、表面的な費用はあまりかからないことがあります。
 

しかし、その裏側では、「今年は何をしよう。」と企画を考え、
 

必要な物を探し、

買い出しをし、

飾り付けをつくり、

出し物を練習し、

当日の進行を確認する。
 

こうした時間がかかっています。
 

もちろん、職員の皆さまが工夫してつくるイベントには、外部サービスにはない素晴らしさがあります。
 

だから、すべて外部に任せればよいということではありません。
 

ただ、「施設内で行えば無料」ではないという視点は持っておきたいところです。

職員の準備時間も、施設にとって大切な経営資源だからです。
 


外部レクの価値は「職員も一緒に楽しめること」にある

外部レクを活用する大きなメリットの一つは、職員の皆さまの役割を変えられることだと思います。
 

施設内だけでイベントを運営すると、
 

司会をする。
音楽を流す。
道具を配る。
進行する。
盛り上げる。
 

職員の皆さまはどうしても「運営する側」になります。
 

一方、外部の専門家に進行を任せられれば、
 

利用者様の隣に座る。
一緒に拍手する。
声をかける。
普段とは違う表情に気づく。
 

そんな関わりがしやすくなります。

私は、これも特別レクに費用をかける価値の一つだと思っています。
 


「楽しかった」で終わらない価値も考えてみる

敬老会の価値は、その場で利用者様が楽しむことだけではありません。
 

イベントのあとに、
 

「昨日は楽しかったですね。」

と利用者様と職員の会話が生まれる。

写真を見ながら思い出を振り返る。

ご家族に、その日の様子を伝える。

施設だよりや広報で、施設の取り組みとして紹介する。
 

そうした形で、イベント後にも体験を活かすことができます。

特別イベントは、「その1時間だけの出来事ではなく、その後の会話や交流につながる可能性がある。」という視点も、費用対効果を考えるうえでは大切だと思います。
 


では「5万円ならやるべき」なのか?

ここは、はっきりお伝えしておきたいと思います。
 

5万円だから価値があるわけでも、特別レクなら必ず導入した方がよいわけでもありません。
 

たとえば、

  • 何のために実施するのか明確でない。

  • 利用者様の状況に内容が合っていない。

  • 会場条件が合わない。

  • 施設の予算に無理がある。

  • 職員側の準備が想定以上に必要。

という場合には、別の方法を考えた方がよいこともあります。
 

大切なのは、「5万円を使うこと」ではなく、その施設にとって「5万円を使う意味があるか?」を判断することです。
 


費用対効果を考える5つの質問

敬老会などの外部レクを検討するときは、次の5つを考えてみてください。

① このイベントの目的は何ですか?

長寿をお祝いしたいのか?
特別な体験を届けたいのか?
ご家族も含めて楽しみたいのか?

目的が違えば、選ぶ内容も変わります。

② 何人くらいの利用者様が楽しめますか?

一部の方だけでなく、見るだけでも楽しめる方を含めて考えてみます。

③ 職員の企画・準備時間はどのくらい減らせますか?

外部に依頼することで、どこまで施設側の負担を軽くできるのか確認します。

④ 普段のレクにはない「特別感」がありますか?

年に一度の敬老会なら、「今日はいつもと違う」と感じられる価値も大切です。

⑤ イベント後にも活かせますか?

利用者様との会話、ご家族への報告、施設内広報など、その後につながる体験になっているかを考えます。

この5つに照らして考えると、単純な価格比較ではなく、「自施設にとっての価値」で判断しやすくなります。
 


室内サーカスの場合はどう考える?

私がご紹介している高齢者施設向けの室内サーカス型レクリエーションも、基本料金は5万円からです。

その特徴は、単にショーを見るだけではなく、「見る楽しさと、参加する楽しさを組み合わせられること」にあります。
 

利用者様全員が同じことをする必要はありません。
 

見る。
拍手する。
笑う。
少し体験してみる。

それぞれの形で一緒の時間を楽しむ。
 

敬老会のように、身体状況の異なる多くの方が集まるイベントでは、こうした参加の幅は一つのメリットになると考えています。
 

とはいえ、施設によって条件は違います。

だからこそ、「サーカスをやるかどうか?」から考えるのではなく、「今年の敬老会で、どんな時間を利用者様に届けたいのか?」から考えることをおすすめしています。
 


5万円を見る前に、まず「目的」を見る

「5万円は高いですか?」と聞かれたら、私は、「何を実現したいかによります。」と答えます。
 

普段のレクとして考えれば、高く感じるかもしれません。
 

一方、
 

年に一度の敬老会で、
多くの利用者様が一緒に楽しみ、
職員の準備負担を抑え、
いつもとは違う特別な時間を届けたい。
 

という目的であれば、検討する価値はあると思います。
 

大切なのは、「金額からイベントを選ぶのではなく、目的から予算を考えること。」

これが、敬老会の費用対効果を考える一つのポイントではないでしょうか?
 


施設長向け「5万円の特別レク」判断チェック

候補となる外部レクが見つかったら、次の項目を確認してみてください。

  • 敬老会で実現したいことが明確になっている。

  • 多くの利用者様がそれぞれの形で楽しめそう。

  • 職員の企画・準備負担を抑えられる。

  • 日常レクとは違う特別感がある。

  • 金額だけでなく、得られる体験まで含めて比較している。

  • 他の施設との差別化が図りたい。

3つ以上チェックがつくなら、一度具体的に内容と見積もりを比較してみてもよいと思います。
 


「秋の施設イベント30分無料相談」のご案内

「5万円をかける価値があるのか判断できない。」

「うちの規模なら、どんなイベントが合うのだろう。」

「敬老会に何か特別なことをしたいけれど、予算とのバランスで迷っている。」


そんな施設様を対象に、

秋の施設イベント30分無料相談

を行っています。
 

利用者様の人数、身体状況、会場、ご予算、職員体制などを伺いながら、「その施設では、何にお金をかけると最も価値が生まれるのか?」

を一緒に整理します。
 

室内サーカスありきのご相談ではありません。
 

まずは、今年の敬老会や秋イベントで何を実現したいのかから、一緒に考えます。
 

キャリア&ライフプラントータルサポート
代表 山岸 博幸
TEL:090-3903-8408
HP:https://career-life.org/

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2026年08月14日 17:54

第6回 「見えているのに、見つけられない」ってどういうこと?

第6回

「あれ、メガネがない」
 

そう言いながら、テーブルの上を何度も探している。

でも、メガネは目の前に置いてある。
 

家族からすれば、
 

「そこにあるじゃない」

「目の前にあるよ」
 

と思うような場面です。
 

あるいは、「鍵がない」と言って家の中を何度も探している。
 

でも、鍵はいつもの場所に置いてある。
 

こうした場面に出会うと、周囲の人はつい、
 

「ちゃんと見て」

「さっきからそこにあるよ」

「どうして分からないの?」
 

と言いたくなるかもしれません。
 

でも、ここで少しだけ立ち止まって考えてみたいのです。
 

本人には、本当に私たちと同じように見えているのでしょうか?
 


「目に入っている」と「見つけられる」は同じではない

私たちは普段、「見えているのだから、分かるはず」と思っています。
 

けれども、物を見るという行為は、単に目に映すだけではありません。
 

たくさんの情報の中から必要なものに気づき、
 

「これはメガネだ」

「これは自分の鍵だ」
 

と認識し、目的のものとして見つける。
 

私たちは、こうしたことをほとんど意識せずに行っています。
 

認知症のある方の場合、このような情報の整理や認識が難しくなることがあります。
 

つまり、「目には入っているのに、探しているものとして気づけない。」
 

そんなことが起こる場合があるのです。
 


もし、自分だったらどう感じるでしょうか?

想像してみてください。
 

あなたは確かにここに置いたはずの鍵を探しています。
 

テーブルを見る。

棚を見る。

バッグの中を見る。
 

でも見つからない。
 

家族からは、「目の前にあるじゃない」と言われます。
 

もう一度見る。

それでも分からない。
 

さらに、「どうして分からないの?」と言われる。
 

もし自分だったら、どんな気持ちになるでしょうか?
 

「自分がおかしくなってしまったのだろうか?」

「どうして見つけられないんだろう...。」

「ちゃんと探しているのに...。」
 

そんな不安や焦りを感じるかもしれません。
 

場合によっては、恥ずかしさや苛立ちにつながることもあるでしょう。
 

周囲から見れば、「探し方が悪い人」に見える。
 

でも本人側から見れば、「見つけられずに困っている人」なのかもしれません。
 

これは、これまでこの連載で繰り返し考えてきた視点でもあります。
 


「もっとよく見て」では解決しないこともある

家族としては、「ほら、ここ」と教えてあげたくなります。
 

もちろん、それで本人が気づけることもあります。
 

でも、「ちゃんと見れば分かるでしょう」と繰り返すだけでは、うまくいかない場合もあります。
 

なぜなら、本人は「見ようとしていないのではなく、見つけにくい状態にある」可能性があるからです。
 

例えば、
 

テーブルの上にたくさんの物が置いてある。

模様の多いクロスの上に鍵が置いてある。

周囲にいろいろな色や形がある。
 

そんな状況では、探している物が周囲の情報に紛れてしまうことがあります。
 

私たちにとっては簡単な状況でも、本人にとっては、「どれを見ればいいのか分からない世界」になっているのかもしれません。
 


「探す力」を試すより、「見つけやすくする」

そこで、発想を少し変えてみます。
 

「本人が見つけられるかどうか?」を試すのではなく、「どうすれば見つけやすくなるだろう?」と考えてみるのです。


例えば、
 

いつも使う物の置き場所を決める。

テーブルの上をできるだけ整理する。

周囲とはっきり区別できる場所に置く。
 

一度にたくさんのことを伝えず、「ここにありますよ」とゆっくり示す。
 

本人と一緒に探す。
 

ほんの少し環境や伝え方を変えるだけで、本人自身が見つけられることもあります。
 

大切なのは、
 

「できないから代わりに全部やってしまう」ことでも、「できるまで何度もやらせる」ことでもありません。
 

本人ができる形を一緒に探していくことではないでしょうか?
 


私たちの「当たり前」が、本人にも当たり前とは限らない

今回のテーマは、「見えているのに、見つけられない」でした。
 

これは少し不思議に感じるかもしれません。
 

でも、「認知症世界の歩き方」を考えていくときに、とても大切なのは、

「私たちの当たり前を、そのまま本人の当たり前だと思わないこと」だと私は感じています。
 

「見えているんだから分かるはず」

「ここにあるんだから見つかるはず」

「さっき説明したんだから覚えているはず」
 

私たちは無意識のうちに、自分の世界を基準にして相手を見ています。
 

でも、本人が生きている世界から考えてみると、「なるほど、だから困っていたのか」と見え方が変わることがあります。
 


「どうして分からないの?」から「どう見えているんだろう?」へ

認知症のある方への関わりには、一つの正解があるわけではありません。
 

認知症の症状や困りごとの現れ方も、人によって違います。
 

だからこそ、「認知症だからこうだ」と決めつけるのではなく、「この人には、今この場面がどう見えているんだろう?」と想像してみる。
 

その問いを持つだけでも、私たちの言葉や関わり方は少し変わってくるのではないでしょうか?
 

「どうして見つけられないの?」ではなく、「どうすれば見つけやすくなるだろう?」へ。
 

相手を変えようとする前に、私たちの見方を少し変えてみる。

それも、認知症のある方とともに暮らしていくための大切な一歩なのだと思います。
 


次回は「時間が分からない世界」を旅してみます

私たちは毎日、
 

「あとで」

「さっき」

「明日」

「10時になったら」
 

と、時間を当たり前のように使っています。
 

でも、もしその「時間の感覚」が分かりにくくなったとしたら?
 

次回は、「時間が分からない世界」で暮らすということを一緒に考えてみたいと思います。

認知症世界の旅は、まだ続きます。
 


9月27日「認知症世界の歩き方」実践ワークショップを開催します

このブログ記事では文章を通して、「本人にはどんな世界が見えているのだろう?」ということを一緒に考えています。
 

9月27日には、「認知症世界の歩き方」公認ファシリテーター(旅のガイド)として、実践ワークショップを開催します。
 

認知症について「教えてもらう」だけではなく、参加者のみなさんと一緒に、本人が生きている世界を想像し、考え、対話していく時間です。
 

ご家族に認知症のある方はもちろん、医療・介護・福祉に関わる方、地域で認知症について考えてみたい方、そして「まだ自分には関係ない」と思っている方にも参加していただければと思っています。
 

※認知症の症状や困りごとの現れ方には個人差があります。本記事は、特定の方の状態を一律に説明するものではありません。

▼「認知症世界の歩き方」実践ワークショップの詳細・参加申込はこちらから
 

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2026年08月12日 14:46

【第5回】親が元気なうちに準備することは、親を急かすことではない

第5回

さいたま市で親の介護が心配になったら読む話

急な入院・介護で家族が慌てないためのやさしい準備

「親が元気なのに、介護や終活の話をするのは早すぎるのではないか?」
 

そう感じる方は少なくないと思います。
 

まだ自分で買い物に行ける。
病院にも一人で通えている。
友人とも出かけている。
趣味も楽しんでいる。
 

そんな親を前にして、
 

「もし介護が必要になったらどうする?」
「どこの病院に通っているの?」
「何かあった時、誰に連絡すればいい?」
「終活のことも少し考えない?」
 

とは、なかなか言い出しにくいものです。
 

もしかすると、
 

「縁起でもない」
「まだそんな年じゃない」
「早く死ねと言われているみたいで嫌だ」
 

と受け取られてしまうかもしれない。

そんな不安もあるでしょう。
 

でも、親が元気なうちに準備することは、親を急かすことではありません。
 

むしろ私は、親が元気だからこそできる準備があると思っています。

元気な今だからこそ、本人の希望を聞ける

介護が必要になってからでは、家族が本人の希望を十分に聞けないことがあります。
 

急な入院で話す余裕がない。

認知症が進み、自分の希望をうまく言葉にできない。

体力が落ち、考えること自体が負担になる。
 

そうなってから、
 

「お母さんはどうしたい?」
「家で暮らしたい?施設がいい?」
「もしもの時は誰に連絡してほしい?」
「どこまで治療を望んでいる?」
 

と聞いても、十分な答えが得られないことがあります。
 

だからこそ、元気な今のうちに、
 

「これからどんな暮らしをしたいのか?」
「何を大切にしているのか?」
「誰に頼りたいのか?」
 

を少しずつ聞いておくことが大切です。
 

これは親の人生を決めるためではありません。
 

親自身の希望を、家族が知っておくための会話です。

いきなり「終活しよう」と言わなくても大丈夫

終活という言葉は、まだまだ重く感じる方が多い言葉です。
 

ですから、無理に「終活」という言葉を使わなくてもかまいません。
 

たとえば、
 

「最近、病院はどこに通ってるの?」

「何かあった時に連絡するなら、誰がいい?」

「お薬手帳って、どこに置いてあるの?」

「これからもこの家で暮らしたい?」

「もし入院した時に必要なものって、どこにある?」
 

そんな日常会話からで十分です。
 

大切なのは、終活という名前をつけることではありません。
 

家族が少しずつ親のことを知っていくこと。
 

それ自体が、立派な介護準備です。

親に聞く前に、自分のことを話してみる

親に介護や終活の話を切り出すのが難しい時には、まず自分の話から始める方法もあります。
 

たとえば、
 

「最近、自分も何かあった時の連絡先を整理してるんだ」

「スマホの中に大事な情報がいっぱい入っているから、家族が困らないようにしておこうと思って」

「私も保険証とか大事な書類の場所をまとめようと思ってる」
 

と、自分の準備について話してみる。
 

そのうえで、「お母さんはどうしてる?」と聞けば、会話が自然になります。
 

親だけに準備を求めると、親は「年寄り扱いされた」と感じるかもしれません。
 

でも、「家族みんなで備える」という姿勢なら、受け止め方も変わります。

準備とは「決めること」ではなく「知っておくこと」

介護準備というと、
 

「介護施設を決めなければ」
「財産のことを全部確認しなければ」
「遺言を書いてもらわなければ」
 

と考える方もいます。
 

でも、最初からそこまで決める必要はありません。
 

まずは、
 

・どこの病院に通っているか?
・どんな薬を飲んでいるか?
・保険証や大切な書類はどこにあるか?
・緊急時に誰に連絡してほしいか?
・今の暮らしで困っていることはないか?
・これからも大切にしたいことは何か?
 

を知っておくだけでも十分です。
 

介護準備の最初の一歩は、決めることではなく、知ること。
 

そこから始めてみてください。

「何かあってから」では、話す余裕がなくなる

親の介護について考える時、多くの家族が「何かあったら、その時考えればいい」と思います。
 

もちろん、それも一つの考え方です。
 

ただ、何かが起きた時には、想像以上に余裕がありません。
 

急な入院。
仕事の調整。
病院とのやり取り。
きょうだいへの連絡。
介護保険の手続き。
退院後の生活の検討。
 

次から次へと判断を求められます。
 

そんな時に、
 

「親はどうしたかったんだろう」
「誰に相談すればいいんだろう」
「書類はどこにあるんだろう」
 

というところから始めるのは、とても大変です。
 

だからこそ、何も起きていない今に、少しだけ話しておく。
 

それだけでも、家族の負担は変わります。

今だから話せることがある

親が元気な今は、一緒に笑いながら話せます。
 

「そんなことまだ考えてないよ」と言われても、「じゃあ、また今度ね」と笑って終えることができます。
 

一度で全部聞く必要はありません。
 

少し話す。
また別の日に話す。
何かのきっかけで思い出したら聞いてみる。
 

そんな形でよいのです。
 

介護や終活の準備は、一度の家族会議で完成させるものではありません。
 

日常の会話の中で少しずつ作っていくものだと思います。

地域の相談先も、元気なうちに知っておく

親のことについて、家族だけでは分からないこともあります。
 

そんな時に、早めに知っておきたいのが、地域の相談窓口です。
 

さいたま市では、シニアサポートセンターが、高齢者やその家族の相談窓口になっています。
 

介護が始まってからだけではなく、
 

「最近、親の様子が少し気になる」
「どんな準備をしておけばいい?」
「まだ元気だけど、一人暮らしが少し心配」
 

という段階でも、相談先を知っておくことは大切です。
 

困ってから探すのではなく、困る前に知っておく。
 

これも立派な介護準備です。

親を急かすのではなく、親の人生を尊重するために

介護準備や終活は、親の人生を急がせるものではありません。
 

むしろ逆です。
 

親が自分らしく暮らせる時間をできるだけ長くするために。

本人の希望を大切にするために。

家族が勝手に決めなくて済むようにするために。
 

必要な準備を、元気なうちから少しずつ始めておく。
 

それが本来の介護準備や終活なのだと思います。

今日からできる小さな一歩

今日は、親に何かを決めてもらう必要はありません。
 

まずは、こんな一言から始めてみてはいかがでしょうか。
 

「最近、困っていることない?」

「病院って今どこに通ってるの?」

「何かあった時、誰に連絡してほしい?」
 

それだけで十分です。
 

そして、もし親が話したくなさそうなら、その日はそこで終わりにする。
 

また話せそうな時に話せばよいのです。
 

親が元気なうちに準備することは、親を急かすことではありません。
 

今だから話せる。
今だから聞ける。
今だから一緒に考えられる。

 

その小さな会話が、将来、親と家族の両方を助けてくれるかもしれません。
 

介護準備は、親を急かすためではなく、親の希望を大切にするために。
 

終活は、人生の終わりを考えるだけではなく、これからを安心して暮らすために。
 

まずは、家族のやさしい会話から始めてみませんか?

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2026年08月11日 17:35

第5回本人の世界を想像すると、対応が変わる

第5回

見えている景色は同じではない

私たちは普段、
 

「ここは自宅」
「この人は家族」
「これはトイレのドア」
「今からお風呂に入る」
「今日は病院へ行く日」
 

といったことを、ごく自然に理解しながら生活しています。
 

ところが、認知症のある方にとっては、同じ場所にいて、同じものを見ていても、その意味が私たちと同じようにはつながらないことがあります。
 

家族から見れば、いつもの自宅。

でも本人には、「ここはどこだろう?」と感じられているかもしれません。
 

家族から見れば、いつもの娘。

でも本人には、「この人は誰だろう?」と戸惑う瞬間があるかもしれません。
 

そこで大切にしたいのが、「本人には、今この世界がどのように見えているのだろう?」と想像してみることです。
 

本人の世界を少し想像できるようになると、「どうして分からないの?」という気持ちから、「それなら不安になるよね」という理解へと、私たちの対応も変わっていきます。
 


私たちには「いつもの場所」でも、本人には違って見えることがある

たとえば、長年暮らしてきた自宅。

家族にとっては、どこに何があるか分かりきった場所です。
 

しかし認知症のある方は、場所や状況を把握することが難しくなり、
 

「ここはどこ?」「私の家に帰りたい」と言うことがあります。
 

家族からすると、「何十年も住んできた自分の家なのに...」と驚くでしょう。
 

そして、「ここがあなたの家でしょ!」と説明したくなります。
 

それでも本人が納得しないと、「どうして分からないの?」という苛立ちが生まれるかもしれません。
 

でも、少し視点を変えてみます。
 

もし自分が目を覚ました時、見覚えがあるような、ないような場所にいて、周囲の人から、「ここがあなたの家ですよ!」と言われたらどうでしょう。
 

頭ではそう言われても、自分の感覚として「ここが家だ!」と感じられなければ、不安になるのではないでしょうか?
 

本人も同じなのかもしれません。
 

大切なのは、「ここが家だと分からせること」だけではなく、「ここが安心できる場所だと感じてもらうこと」なのだと思います。
 


「分からない」ことは、想像以上に怖い

私たちは日常生活の中で、多くのことを予測しながら行動しています。
 

このドアを開ければトイレがある。
この人について行けば診察室に行ける。
服を脱ぐのは、これからお風呂に入るから。
 

先の出来事がある程度分かるから、安心して行動できます。
 

ところが、認知症のある方にとって、こうした「意味のつながり」が分かりにくくなることがあります。
 

たとえば、お風呂に入ってもらおうとした時。
 

家族には、「いつもの入浴」です。
 

でも本人には、
 

突然服を脱ぐように言われた。
知らない場所へ連れていかれる。
何をされるのか分からない。
 

そんな状況に感じられているかもしれません。
 

もしそうなら、「お風呂くらい入ればいいのに」という家族の見方とは、まったく違う世界です。

本人が拒否するのは、「わがままだから」ではなく、「何が起こるか分からず怖いから」なのかもしれません。
 


同じ言葉でも、伝わり方は同じとは限らない

家族が、「早くして」と言ったとします。
家族としては、「あと10分で出掛けるから少し急いでほしい」という意味です。
 

でも本人には、
 

なぜ急がなければならないのか?
どこへ行くのか?
今、何をすればよいのか?
 

それらが十分につながっていないことがあります。
 

すると、「急いで」という言葉だけが強く感じられ、不安や混乱につながることがあります。
 

そんな時は、「早くして」ではなく、
 

「10時になったら病院へ行きます。」

「まず、この上着を着きましょう!」

「そのあと一緒に玄関へ行きましょう!」
 

というように、今必要なことを一つずつ伝える方が分かりやすい場合があります。
 

本人が理解できないのではなく、「私たちの伝え方が、本人の世界に合っていない」可能性も考えてみたいところです。
 


「何もないのに怖がっている」と決めつけない

認知症のある方が、
 

「怖い」
「誰かいる」
「ここにはいたくない」
 

と訴えることもあります。
 

周囲には、その理由が分からないことがあります。
 

すると、
 

「何もないよ」
「誰もいないよ」
「怖がることなんてないでしょう」
 

と言ってしまいがちです。
 

しかし本人が感じている不安は、本物です。
 

本人に見えているもの、聞こえているもの、思い出していること、その場の雰囲気などによって、私たちとは違う意味づけがされていることがあります。
 

その時、「何もないから大丈夫」と否定するより、
 

「怖かったんですね。」

「一緒にいますよ。」

「少しこちらへ移動しましょうか?」
 

と、まず安心につなげる。
 

原因を探すのは、そのあとでも構いません。
 

事実を訂正することより、今感じている不安を受け止める。
 

これも、本人の世界を想像した対応の一つです。
 


「できない」のではなく、「分かりにくい」のかもしれない

たとえば、トイレに行けなくなった時。

家族は、「トイレの場所まで分からなくなった。」と思うかもしれません。
 

しかし、
 

ドアが他の部屋と同じで見つけにくい。
表示が小さい。
夜になると廊下が暗い。
途中に物が多く、目的地が分かりにくい。
 

といった環境の影響も考えられます。
 

「本人ができなくなった」と考えるだけでなく、「本人にとって分かりにくい環境になっていないか?」を見直してみる。
 

トイレの表示を大きくする。
入口を分かりやすくする。
通路を整理する。
必要な場所に目印を付ける。
 

本人を変えようとするのではなく、環境の方を本人に合わせる。
 

そうすることで、まだ自分でできることが増える可能性があります。
 


本人の「昔の世界」が、今につながっていることもある

「会社に行かなくちゃ。」

「子どもを迎えに行かなくちゃ。」

「ご飯を作らないと主人が帰ってくる。」
 

今の状況とは合わないことを話す認知症の方もいます。
 

家族は、
 

「もう仕事は辞めたでしょう。」

「子どもはもう50歳だよ。」

「お父さんはもう亡くなったでしょう。」
 

と事実を伝えたくなります。
 

しかし、その言葉の背景には、
 

長年働いてきた責任感。
子どもを守ってきた母親としての役割。
家族の食事を作ってきた生活習慣。
 

その人が長い人生の中で大切にしてきたものがあるのかもしれません。
 

そう考えると、「間違ったことを言っている」だけではなく、「その人にとって大切だった世界を、今も生きているのかもしれない。」と見ることができます。
 

正すことよりも、「ずっと家族のために頑張ってきたんですね!」と、その人の人生そのものを受け止める。
 

そこから生まれる安心もあります。
 


想像することは、決めつけることではない

ここで一つ、大切にしたいことがあります。
 

「本人の世界を想像する。」といっても、「きっとこう思っているはずだ。」と決めつけることではありません。
 

本当の気持ちは、本人にしか分かりません。
 

だからこそ、
 

「もしかしたら不安なのかな?」

「何か分かりにくいことがあるのかな?」

「どうすれば安心できるかな?」
 

と考えてみる。
 

そして、本人の表情や言葉、行動を見ながら確かめていく。
 

想像することは、答えを決めることではなく、本人を理解するための仮説を持つこと。
 

この姿勢が大切なのだと思います。
 


家族と本人では「見えている景色」が違う

家族から見れば、「また同じことをしている。」かもしれません。
 

本人から見れば、「今、初めて困っている。」のかもしれません。
 

家族から見れば、「何も怖いことはない」場所でも、本人には、「何が起こるか分からない場所」なのかもしれません。
 

家族から見れば、「簡単なこと」でも、本人には、「手順が見えない難しいこと」になっているかもしれません。
 

同じ場所にいるからといって、同じ世界を見ているとは限らない。
 

このことに気づくと、「どうしてできないの?」という問いが、「どうすれば分かりやすくなるだろう?」に変わります。
 

「どうしてこんなことを言うの?」という問いが、「本人には、今どう見えているのだろう?」に変わります。
 

そして、その問いの変化が、私たちの対応を変えてくれます。
 


本人の世界を知ろうとすることから、寄り添いは始まる

認知症の方への対応には、すべての人に当てはまる一つの正解があるわけではありません。
 

同じ認知症でも、その人の人生、性格、環境、体調、家族関係によって感じ方は違います。
 

だからこそ大切なのは、「認知症だからこうだ!」と決めつけるのではなく、「この人の場合は、どうなのだろう?」と考え続けることです。
 

何が好きだったのか?
どんな仕事をしてきたのか?
どんな生活を大切にしてきたのか?
何を怖がるのか?
何をすると安心するのか?
 

その人を知ることが、本人の世界を理解する手掛かりになります。
 

認知症を見るのではなく、認知症とともに暮らしている「その人」を見る。
 

それが、本当の意味で寄り添うことにつながるのではないでしょうか?
 


今日の小さな一歩

認知症のある方の言動を見て、「どうして?」と思った時。
 

すぐに注意したり、正したりする前に、ほんの少しだけ想像してみてください。
 

「本人には、今この場面がどう見えているのだろう?」
 

場所が分からないのかもしれない。
次に何が起きるか分からず怖いのかもしれない。
言葉の意味がつながっていないのかもしれない。
昔の大切な記憶の中にいるのかもしれない。
 

答えが分からなくても構いません。
 

本人の世界を想像してみようとすること。
 

その一歩だけでも、「困った人への対応」から、「困っている人への寄り添い」へと、私たちの関わり方は少し変わっていくのだと思います。
 

認知症のある人の世界を本人の視点で理解し、誰もがともに暮らしやすい社会をデザインするための、「認知症世界の歩き方」実践ワークショップに参加してみませんか?
(本人が見ている世界から、よりよい関わり方を考える。)
 

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2026年08月10日 19:45

【第2回】あなたの老後資金計画に「親の介護費用」は入っていますか?

第2回

全20回連載 
「老後資金を増やす前に 介護で失わない家計のつくり方」

親の介護、自分たちの介護、仕事とお金―50代・60代が今から考えたい20の現実

■老後資金は考えていても、「親の介護費用」は考えていない?

50代、60代になると、自分たちの老後について考える機会が増えてきます。
 

「年金はいくらもらえるのだろう?」

「退職金はいくら残るだろう?」

「老後の生活費はいくら必要だろう?」

「NISAなどでもう少し資産を増やした方がよいだろうか?」
 

こうしたことを考えたり、老後資金のシミュレーションをしたりしたことがある方も多いと思います。
 

ところが、ここで一つ質問があります。
 

その老後資金計画に、「親の介護費用」は入っているでしょうか?


さらに言えば、自分の両親だけではありません。
 

結婚している方であれば、
 

・自分の父親
・自分の母親
・配偶者の父親
・配偶者の母親
 

最大4人の親について、介護が必要になる可能性があります。
 

もちろん、4人全員に介護が必要になるとは限りません。
 

また、親の介護費用をすべて子どもが負担するという意味でもありません。
 

しかし、50代、60代のライフプランを考えるのであれば、「親の介護によって、自分たち夫婦のお金と働き方に何が起こる可能性があるのか?」という視点は、最初から入れておく必要があると私は考えています。

■介護は、決して一部の家庭だけの問題ではありません

総務省の「令和4年就業構造基本調査」によると、2022年時点で介護をしている人は約629万人。

そのうち、仕事を持っている人は約365万人です。
 

つまり、多くの人が、「仕事をしながら家族の介護をする。」という状況に置かれています。
 

私たちが老後資金について考える50代・60代は、同時に親の高齢化が進む時期でもあります。
 

自分たちの老後を準備しなければならない。

でも、親の介護にも対応しなければならない。
 

ここに、ミドルシニア世代特有の難しさがあります。
 

【引用・参考】
総務省統計局「令和4年就業構造基本調査 結果の概要」
https://www.stat.go.jp/data/shugyou/2022/pdf/kgaiyou.pdf


■「親のお金だから大丈夫」とは限らない

本来、親の介護に必要なお金は、まず親自身の年金や預貯金などから支払うことを基本に考えることが大切です。
 

しかし、実際に介護が始まったとき、
 

「親の年金額を知らない。」

「預貯金がどのくらいあるのか分からない。」

「どこの銀行に口座があるのか知らない。」

「生命保険に入っているのか分からない。」

「施設に入ることになったら、いくらまでなら払えるのか分からない。」
 

という家庭は珍しくありません。
 

親が元気なうちは、お金のことを聞くのに抵抗を感じる方も多いでしょう。
 

しかし、何も分からない状態で突然介護が始まると、目の前の支払いを子どもが一時的に立て替えることも起こり得ます。

交通費、入院用品、介護用品、施設探し、実家との往復...。
 

一つ一つはそれほど大きな金額ではなくても、長期間続くことで自分たちの家計に影響していきます。

■介護費用は「月々のサービス利用料」だけではありません

生命保険文化センターの2024年度調査によると、介護経験者が負担した介護の一時的な費用は平均47.2万円、月々の費用は平均9.0万円でした。

介護期間は平均4年7カ月となっています。
 

また、介護を行った場所によっても費用は異なり、月々の平均費用は、
 

在宅 5.3万円
施設 13.8万円
 

となっています。
 

ただし、この数字を見て、
 

「9万円×55カ月だから約500万円」

「それが親4人だから約2,000万円」
 

などと単純に計算することは適切ではありません。
 

介護期間、要介護度、在宅か施設か、親本人の年金や資産、公的制度の利用状況などによって、実際の負担は大きく異なるからです。
 

重要なのは、「平均でいくらかかるか?」だけではありません。
 

自分の家庭では、「誰に介護が必要になったとき、誰のお金を使い、どのように対応するのか?」を考えておくことです。


【引用・参考】
公益財団法人 生命保険文化センター
「介護にはどれくらいの費用・期間がかかる?」
https://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/1116.html

■問題は「介護費用」だけではなく「自分の収入」です

ここが、私が特にお伝えしたいところです。
 

親の介護による家計への影響を考えるとき、「介護にいくら払うのか?」ばかりを考えてはいけません。
 

もう一つ考えなければならないのが、「介護によって、自分の収入がどう変化するか?」です。
 

例えば、50代の会社員が親の介護に直面したとします。
 

親の通院同行のために有給休暇を取る。

ケアマネジャーとの打ち合わせのために早退する。

急な入院で仕事を休む。

遠距離介護で週末ごとに実家へ帰る。

残業や出張が難しくなる。

転勤を断る。

管理職を続けることが難しくなる。
 

そして最悪の場合、「もう仕事と介護を両立できない。」と会社を辞めてしまう。
 

すると、介護費用という「支出の増加」と、給与という「収入の減少」が、同時に起こることになります。


これが、親の介護を老後資金計画に入れておかなければならない最大の理由の一つです。

■自分の老後資金を準備する時期と、親の介護が重なる

50代は、本来であれば老後資金を最後に積み上げていきたい大切な時期です。
 

住宅ローンを終わらせる。

子どもの教育費が一段落する。

退職までの10年ほどで預貯金を増やす。

NISAなどを活用して資産形成を続ける。

定年後の働き方について考える。
 

ところが、その大切な時期に親の介護が始まり、「お金を積み立てる時期」から、「お金を取り崩す時期」へ突然変わってしまう可能性があります。
 

さらに、働き方まで変われば、老後資金計画そのものを見直さなければならなくなります。
 

だから私は、親の介護を「親だけの問題」として考えるのではなく、「自分たち夫婦のライフプランの一部」として考える必要があると思っています。

■介護する側も高齢化しています

2025年の厚生労働省「国民生活基礎調査」では、要介護者等と同居する主な介護者について、「要介護者と介護者がともに60歳以上」という組み合わせが79.0%でした。

「ともに65歳以上」も61.9%です。
 

介護する側自身も高齢化しているということです。

親の介護が長期化すれば、「親の介護をしていたら、自分自身も高齢者になっていた」ということも十分に考えられます。
 

そして親の介護が終わった後には、今度は、
 

自分自身の介護。

配偶者の介護。
 

という問題が待っているかもしれません。
 

だからこそ、老後資金計画を考えるときには、「自分たち夫婦の生活費」だけではなく、親の介護から自分たちの介護までを、一つの時間軸で考えていく必要があります。
 

【引用・参考】
厚生労働省
「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況 介護の状況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa25/dl/14.pdf

■大切なのは「親4人分のお金を準備すること」ではありません

ここまで読むと、「親4人の介護費用まで自分たちで準備しなければいけないのか?」と不安になる方もいるかもしれません。
 

そうではありません。
 

私がお伝えしたいのは、「子どもが親4人分の介護費用を貯めましょう。」という話ではありません。

むしろ逆です。
 

親の介護によって自分たちの老後資金を失わないために、親が元気なうちに、
 

・親自身の年金や資産を確認する
・どこで暮らしたいのかを聞く
・介護が必要になったときの希望を聞く
・兄弟姉妹の役割を話し合う
・費用を誰がどこまで負担するのか考える
・自分の勤務先の介護支援制度を確認する
 

こうした準備をしておくことが重要なのです。
 

つまり、「介護費用を準備する」だけではなく、「介護で自分たちの家計を壊さない仕組みを準備する」ということです。

■私自身、両親の介護に直面して感じたこと

私自身、両親の介護に直面して、改めて感じたことがあります。
 

親が元気なときには、「そのときになったら考えればいい」と思ってしまいがちです。

しかし、実際に入院や介護が始まると、短期間にさまざまな判断を求められます。
 

病院への対応。

介護認定。

介護サービス。

住まい。

お金。

仕事の調整。

家族との役割分担。
 

こうしたことが一度にやってきます。
 

その状態になってから、
 

「お父さん、預金はいくらあるの?」

「お母さん、施設に入りたい?」

「兄弟で誰がいくら負担する?」
 

と話し合うのは、簡単ではありません。
 

だからこそ、「まだ介護なんて必要ない」と思える時期に話を始めることが、とても大切なのだと感じています。

■今日からできること――「4人の親」を書き出してみる

今日、ぜひ一度やっていただきたいことがあります。
 

紙を1枚用意して、
 

自分の父
自分の母
配偶者の父
配偶者の母
 

を書き出してみてください。
 

そして、それぞれについて、
 

① 年齢

② 現在の健康状態

③ 一人暮らしか、夫婦暮らしか?

④ 年金や預貯金について家族が把握しているか?

⑤ 介護が必要になった場合、誰が最初に対応しそうか?

⑥ 在宅・施設など、本人の希望を聞いたことがあるか?
 

を確認してみてください。
 

すべて「分からない」でも構いません。
 

大切なのは、「自分が何を知らないのか?」に気づくことです。
 

それが、介護準備のスタートになります。

■老後資金を増やす前に、介護で失わない仕組みをつくる

老後資金計画というと、
 

「いくら貯めるか?」

「何%で運用するか?」
 

という話になりがちです。
 

もちろん、それも大切です。
 

しかしその前に、
 

親の介護による支出。

介護による自分の収入減少。

そして、その後に訪れる自分と配偶者の介護。
 

ここまで含めて考えて初めて、本当の意味での老後資金計画になるのではないでしょうか?
 

老後資金を増やす前に、介護で失わない仕組みをつくる。

この視点を、50代・60代の方にぜひ持っていただきたいと思っています。

■次回予告

第3回は、「親4人、自分たち夫婦2人――最大6人の介護をどう考えるか?」をテーマにお伝えします。

「親の介護が終われば安心」というわけではありません。

その先にある自分自身と配偶者の介護まで含めて、人生後半の介護をどのように捉えればよいのかを考えていきます。
 

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2026年08月09日 17:38

想定外の介護|第5回退院が見えてきた父に、朝・昼・晩3回のインスリン注射が必要になった

第5回

病気は落ち着いたのに、自宅に戻れなくなった想定外

※この記事は、私自身の父の介護経験をもとに、本人の尊厳と個人情報に配慮しながら構成しています。
 治療内容や経過はあくまで父の場合であり、病状や治療方法は一人ひとり異なります。
 


「ようやく退院できる」——そう思った矢先でした

父が間質性肺炎で入院した時のことです。

入院当初は、もちろん父の病状が一番の心配でした。
 

このまま良くなるのだろうか?
どのくらい入院するのだろうか?
また以前のような生活に戻れるのだろうか?
 

そんなことを考えながら、病状の経過を見守っていました。
 

そして治療が進み、間質性肺炎の状態が落ち着いてきました。
 

やがて、退院の話も出始めました。
 

私は、「良かった!これで父はようやく家に帰れる。」と、正直ほっとしました。
 

ところが、その安心は長く続きませんでした。

退院後の生活について話を進めていく中で、思ってもいなかった問題が出てきたのです。
 


入院前は、糖尿病を内服薬で管理していた

父には糖尿病の持病がありました。

ただ、間質性肺炎で入院する前までは、糖尿病については内服薬で管理していました。
 

ですから私の中では、「糖尿病は以前からある持病」という認識はあっても、それが父の退院先を左右するような問題になるとは考えていませんでした。
 

ところが、間質性肺炎の治療ではステロイド系の薬が使われました。

父の場合、その治療を経て、血糖管理の方法が大きく変わりました。
 

退院後は、朝・昼・晩、1日3回のインスリン注射が必要になったのです。
 

私は、その話を聞いて戸惑いました。
 

間質性肺炎は落ち着いた。
退院も見えてきた。
 

なのに今度は、別の問題が出てきた。
 

しかも、それまでとはまったく違う生活上の問題でした。
 


「1日3回の注射」が、自宅に帰ることを難しくした

朝。

昼。

晩。
 

毎日3回のインスリン注射。
 

この「3回」という言葉を聞いた時、私は初めて現実を考えました。
 

自宅に戻った場合、誰が対応するのか?
朝だけなら、何とかなるかもしれない。
夜だけなら、家族が帰宅してから対応できるかもしれない。
 

しかし、昼があります。
 

私も含め、家族には仕事があります。
 

毎日、朝・昼・晩と父のそばにいて、必要な対応を続けることは、私たち家族にとって現実的ではありませんでした。
 

それまで私は、「病気が治まれば退院して、自宅に戻る。」という流れを、どこか当たり前のように考えていました。
 

でも、その当たり前が崩れました。
 

父は退院できる状態に近づいている。

なのに、自宅には戻せない。
 

この矛盾したような状況が、私には大きな想定外でした。
 


病気が良くなったのに、元の生活には戻れなかった

ここは、今振り返っても強く印象に残っています。
 

「病状が落ち着きました」
 

本来なら、家族にとって嬉しい言葉です。
私もそうでした。
 

でも、病気が良くなることと、以前の生活に戻れることは、同じではありませんでした。
 

父の場合、間質性肺炎そのものは落ち着いてきた。
 

けれど、その治療を経たことで糖尿病の管理方法が変わった。

そして、その新しい医療上の条件によって、自宅での生活が難しくなった。
 

一つの病気を治療する。

その結果、別の持病への対応が変わる。

その変化が、退院後の暮らし方まで変えてしまう。
 

そんなことが起きるとは、私は想像していませんでした。
 


病院のケースワーカーに相談することになった

では、父は退院後、どこで暮らすのか?

ここから、また新しい問題が始まりました。
 

自宅には戻れない。

しかし、病院にはずっと入院していられるわけではない。
 

私は病院のケースワーカーの方に相談しました。
 

父の状態。
糖尿病の管理。
インスリン注射。
家族の生活。
退院後に必要になる支援。
 

そうしたことを一つずつ整理していきました。
 

最終的に、私たち家族にとって現実的な選択肢となったのが、介護付き有料老人ホームへの入居でした。

これも、まったく想像していなかった展開です。
 

入院する前の父は、自宅で生活していました。
 

私も、「病院で治療して、良くなれば家に帰る」と思っていました。
 

それが、入院 → 治療 → 退院 → 自宅ではなく、

入院 → 治療 → 退院 → 介護施設

になったのです。
 

介護施設を探すことになるとは、入院した時には想像すらしていませんでした。
 


「退院」は、必ずしも「家に帰ること」ではない

この経験から、私は「退院」という言葉の受け止め方が変わりました。
 

以前の私は、
 

退院=良くなった
退院=家に帰る
退院=元の生活に戻る
 

というイメージを持っていました。
 

でも、高齢の親の場合、必ずしもそうではありません。
 

病気そのものは治療できても、
 

歩く力が落ちているかもしれない。

排せつに支援が必要になっているかもしれない。

服薬管理ができなくなっているかもしれない。

医療的な対応が増えているかもしれない。

認知面が変化しているかもしれない。
 

そして父のように、持病の管理方法そのものが変わることもある。
 

「退院できます」と言われて初めて、「では、退院した後はどこで、どう暮らすのか?」という、もう一つの現実が始まることがあります。
 


持病があることで、想定外が重なっていく

父には、間質性肺炎になる以前から、糖尿病という持病がありました。
 

今回私が強く感じたのは、高齢の親に複数の病気や持病がある場合、一つだけを見ていてはいけないということです。
 

間質性肺炎がどうなるか?
一命を落とすことはないのか?
 

当初、私の頭の中にあったのは主にそこでした。
 

でも実際には、
 

間質性肺炎を治療する。

治療によって血糖管理が変わる。

インスリン注射が必要になる。

本人(私)だけでは対応が難しい。

家族が在宅で支えることも難しい。

自宅への退院が難しくなる。

退院先として介護施設を探す。
 

と、次の問題がつながっていきました。
 

一つ解決すると、次の問題が出てくる。

それまで想定していなかったことが、次々と現実になる。
 

まさに、この連載のタイトルである「想定外の介護」そのものでした。
 


介護は、病気そのものだけを見ていても分からない

親が入院すると、どうしても病名に目が向きます。
 

肺炎なら肺炎。

骨折なら骨折。

心臓病なら心臓病。

がんならがん。
 

家族は、「その病気が治るか?」を心配します。

もちろん、それは当然です。
 

でも、高齢者の場合には、元々持っている病気、身体機能、認知機能、服薬、生活環境などが複雑に関係していることがあります。
 

そのため、主な病気が落ち着いたからといって、介護の問題まで元に戻るとは限らない。
 

私は父の経験から、そのことを知りました。
 


「良かった」と安心した直後に、次の想定外が来る

介護では、この感覚が何度もあります。
 

病状が落ち着いた。

良かった。
 

施設が決まった。

良かった。
 

状態が安定した。

良かった。
 

そのたびに、家族は少し安心します。
 

ところが、その直後に別の問題が出てくることがあります。
 

父の場合は、「間質性肺炎が落ち着いた」という安心の直後に、「朝・昼・晩3回のインスリン注射が必要」という現実が現れました。
 

そして、その一つの変化が、「自宅へ帰れるかどうか?」という大きな問題につながりました。
 

介護の想定外は、一つの大きな事件として起こるだけではありません。
 

治療の変化。

薬の変化。

できることの変化。

生活場所の変化。
 

それらが連鎖することがあります。
 


もし、あなたの親だったら...

少しだけ、自分の親に置き換えて考えてみてください。
 

親に何か持病はありますか?

どんな薬を飲んでいるでしょうか?

その病気の管理方法が変わったら、自宅で今までと同じように暮らせるでしょうか?

医療的な対応が1日数回必要になったら、誰が対応するでしょうか?

本人が対応できなくなったら、家族だけで支えられるでしょうか?
 

私は父が入院する前、そこまで考えたことはありませんでした。
 

だからこそ、「そんなことまで起こるのか?」と、読者の皆さんには知っておいていただきたいと思っています。
 


病気が落ち着けば元通り——ではなかった

今回の出来事で、私にとって一番の想定外は、インスリン注射そのものではありませんでした。
 

間質性肺炎が落ち着き、ようやく父が自宅に帰れると思った時に、別の持病への対応が変わったことで、自宅に戻れなくなったこと。
 

ここでした。

病気が一つ良くなっても、生活全体が元通りになるとは限らない。
 

一つの治療が、その人の別の病気や暮らし方に影響することがある。
 

そして、その結果として、住む場所まで変わることがある。
 

私は父の介護を経験するまで、その現実を知りませんでした。
 

介護は、一つの出来事ではなく、想定外が次々と起こるものです。
 

しかもその想定外は、本人だけではなく、家族の仕事や生活、そしてこれからの暮らし方まで変えていくことがあります。
 

この連載では、その現実をこれからもお伝えしていきたいと思います。
 

「うちの親は、まだ大丈夫」そう思っている方にこそ、「こんなことも起こるのか?」と、一度知っていただけたらと思っています。
 

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親が倒れる前の介護準備チェックシートはこちらから
 

▼親の介護や介護準備が気になっている方はこちらをご覧ください。

2026年08月08日 19:51

敬老会の外部レクを選ぶとき、施設長が確認したい5つのポイント

連載⑩

レクが変わると、施設が変わる。

「今年の敬老会は、外部の方にお願いしてみようか?」
 

そんな話が出たとき、次に悩むのが、「では、何を基準に選べばいいのか?」ということではないでしょうか?
 

演奏会、マジック、体操、ダンス、地域ボランティア、さまざまなパフォーマンス...。
 

高齢者施設で活用できる外部レクリエーションには、いろいろな選択肢があります。
 

もちろん、
 

「楽しそうだから」
「料金が予算内だから」
 

という理由も大切です。
 

しかし、敬老会のような特別イベントでは、それだけではなく、
 

利用者様に無理なく楽しんでいただけるか?
職員の皆さまに過度な負担がかからないか?
その施設らしい特別な時間になるか?
 

といった視点も必要です。
 

今回は、敬老会の外部レクを検討するときに、施設長や管理者の方に確認していただきたい5つのポイントを整理します。
 


ポイント① 利用者様にとって「安全に楽しめるか」

最初に確認したいのは、やはり安全性です。
 

外部レクの場合、普段施設にいない人が入り、いつもとは違う道具や音、動きが加わります。
 

だからこそ、

  • 会場に必要な広さはどのくらいか?

  • 車椅子の方でも参加できるか?

  • 座ったまま楽しめるか?

  • 使用する道具に危険性はないか?

  • 大きな音や急な動きはないか?

  • 利用者様の状態に合わせて内容を調整できるか?

といったことを、事前に確認しておくことが大切です。
 

「盛り上がる企画」であること以上に、安心して楽しめる企画であること。
 

これは高齢者施設の外部レク選びでは欠かせない条件だと思います。
 


ポイント② いろいろな方が「それぞれの形で参加できるか?」

次に大切なのが、参加しやすさです。
 

介護施設では、利用者様の身体状況や認知機能、その日の体調や気分も一人ひとり違います。
 

そのため、「全員で同じ動きをする」ことだけを前提にしてしまうと、参加しにくい方が出てくる場合があります。
 

私は、
 

見るだけでもいい。
拍手だけでもいい。
笑顔でその場にいるだけでもいい。
興味があれば少し体験してみてもいい。
 

そんな、参加方法に幅のあるレクが、高齢者施設には向いていると思います。
 

外部レクを選ぶ際には、「積極的に参加できない方でも、その場を楽しめるでしょうか?」

と確認してみてください。
 

これは、とても大切な質問です。
 


ポイント③ 職員の「準備と当日の負担」はどのくらいか?

外部レクを依頼したのに、「結局、準備はほとんど施設側だった。」
 

という状態になってしまっては、本来期待したメリットが小さくなってしまいます。
 

事前に確認しておきたいのは、

  • 会場設営はどこまで必要か?

  • 音響設備は施設側で準備するのか?

  • 道具は持参してもらえるのか?

  • 職員は何人程度サポートする必要があるのか?

  • 司会進行は誰が行うのか?

  • 終了後の片付けはどの程度必要か?

などです。
 

外部レクを活用する大きな意味の一つは、職員の皆さまが「運営する人」だけではなく、利用者様と一緒にその時間を過ごしやすくなることだと思います。
 

利用者様の隣で笑う。
普段とは違う表情に気づく。
楽しそうな様子をご家族に伝える。
 

そうした関わりに時間を使えるかどうかも、外部レク選びの大切な視点です。
 


ポイント④ 料金ではなく「費用と得られる価値」を見る

外部レクを比較するとき、当然ながら費用は重要です。
 

しかし、「一番安いところを選ぶ」だけではなく、「その費用で、どんな時間をつくれるのか?」
 

まで考えてみることをおすすめします。
 

たとえば、

  • 何分間のプログラムなのか?

  • 見るだけなのか、参加型なのか?

  • 何人まで参加できるのか?

  • 道具や音響は料金に含まれているのか?

  • 職員の準備時間をどの程度減らせるのか?

  • 敬老会らしい特別感があるか?

によって、同じ金額でも価値は変わります。
 

特に敬老会は、毎週行う通常レクとは少し性格が違います。
 

年に一度の大切な機会として、「いくらかかるか?」と同時に「どんな体験を届けられるか?」で考えることが大切ではないでしょうか?
 


ポイント⑤ 「今年は特別だったね」と思える時間になるか

最後に確認したいのが、特別感です。
 

敬老会は、日常のレクリエーションとは違う特別な行事です。
 

もちろん、豪華でなければならないわけではありません。
 

大切なのは、
 

「今日はいつもと少し違うね」

「楽しかったね」

「こんなの初めて見たね」
 

そんな会話が自然に生まれることです。
 

非日常の体験が加わることで、敬老会が利用者様にとって印象に残る一日になる可能性があります。
 

そして、その様子を職員やご家族が一緒に楽しめれば、施設全体にとっても良い時間になります。
 


外部レクは「何を呼ぶか?」より「何を届けたいか?」

ここまで5つのポイントをご紹介してきました。
 

改めて整理すると、

① 安全性

② 参加しやすさ

③ 職員の負担

④ 費用

⑤ 特別感

です。
 

ただ、最も大切なのは、この5項目をすべて満たす業者を探すことだけではありません。
 

その前に、「今年の敬老会で、利用者様にどんな時間を届けたいのか?」を施設内で共有することだと思います。
 

そこが決まれば、
 

演奏会がよいのか?
マジックがよいのか?
体操がよいのか?
サーカスがよいのか?
 

選択肢を比較しやすくなります。
 


室内サーカスという選択肢

私が現在、介護施設の特別イベントの一つとしてご紹介しているのが、室内で楽しめる参加型サーカスレクリエーションです。
 

ゴールドサーカスの高齢者施設向けプログラムでは、椅子に座ったまま行える準備運動や、スカーフジャグリング・お手玉などを使った参加型レク、そしてミニサーカスショーを組み合わせています。
 

車椅子や足腰に不安のある方も参加しやすいよう、安全面に配慮した柔らかく軽量な道具を使用し、利用者様の体調などに合わせた進行を基本としています。
 

「見る楽しさ」と「参加する楽しさ」の両方があることは、敬老会のような特別イベントとの相性が良いと感じています。
 

ただし、すべての施設にサーカスが合うわけではありません。
 

だからこそ、施設の状況や利用者様に合わせて、まず選択肢を整理することを大切にしています。
 


施設長向け「外部レク選び5項目チェック」

外部レクの候補が見つかったら、次の5項目を確認してみてください。
 

□ 安全性
利用者様の身体状況に合わせて実施できるか?
 

□ 参加しやすさ
見るだけ・拍手だけなど、複数の参加方法があるか?
 

□ 職員負担
事前準備・当日の運営にどの程度の職員対応が必要か?
 

□ 費用
料金だけでなく、内容・時間・準備負担などを含めて納得できるか?
 

□ 特別感
「今年の敬老会は楽しかった」と感じてもらえる体験になりそうか?
 

この5つを比較するだけでも、外部レク選びはずいぶん整理しやすくなると思います。
 


「秋の施設イベント30分無料相談」のご案内

「敬老会の企画を考えているけれど、何を選べばいいかわからない。」

「外部レクを検討したいが、どんなものが施設に合うかわからない。」

「利用者様には喜んでいただきたい。でも職員の準備負担は増やしたくない。」
 

そんな施設様を対象に、「秋の施設イベント30分無料相談」を行っています。
 

利用者様の人数や身体状況、会場、ご予算、希望される雰囲気などを伺いながら、貴施設に合ったイベントの方向性を一緒に整理します。
 

室内サーカスありきの相談ではありません。
 

今年の敬老会で、利用者様にどんな時間を届けたいのか?
 

そこから一緒に考えていきます。

▼秋の施設イベント無料相談のお申込みはこちらから

 

2026年08月07日 20:00

【第4回】家族が困るのは「気持ち」より先に「情報がないこと」

第4回

さいたま市で親の介護が心配になったら読む話

急な入院・介護で家族が慌てないためのやさしい準備

親が急に入院した。
転倒して救急搬送された。
認知症の疑いが出てきた。
一人暮らしを続けるのが難しくなってきた。
 

こうした出来事が起きた時、家族はもちろん気持ちの面でも大きく揺れます。
 

「大丈夫だろうか?」
「これからどうなるのだろう?」
「自分に何ができるだろう?」
「もっと早く気づいていればよかった...。」
 

そんな不安や戸惑いで頭がいっぱいになるのは、ごく自然なことです。
 

けれど、実際には、家族は気持ちを整理する間もなく、すぐに現実的な対応を求められることが少なくありません。
 

病院から連絡が来る。
必要な持ち物を準備する。
通院歴や持病を確認する。
飲んでいる薬を伝える。
保険証や診察券を探す。
今後の支援や退院後の生活を考える。
 

この時、家族が本当に困るのは、気持ちの問題そのものよりも、「必要な情報が手元にないこと」である場合がとても多いのです。

家族は「悲しむ前に動かなければならない」

親に何かあった時、家族はまず心配します。

それと同時に、すぐに動かなければなりません。

急な入院なら、病院からこんなことを聞かれるかもしれません。
 

・かかりつけ医はどこですか?
・持病はありますか?
・飲んでいる薬は分かりますか?
・アレルギーはありますか?
・保険証は持っていますか?
・普段はどのような生活をしていますか?
・ひとり暮らしですか?
・退院後に支援してくれる家族はいますか?
 

でも、その時に
 

「よく分かりません。」
「保険証がどこにあるか知りません。」
「薬の名前は分かりません。」
「どこの病院に通っていたか曖昧です。」
「誰に連絡したらいいのか分かりません。」
 

ということが起きると、家族は一気に慌てます。
 

つまり、家族が最初にぶつかる壁は、「どう気持ちを整理するか?」より前に、「必要な情報が見つからない」という現実なのです。

情報がないと、家族の負担は何倍にもなる

たとえば、親が入院した時に、必要な情報が整理されていないと、家族は次のような負担を抱えます。

1. 手続きに時間がかかる

保険証、診察券、お薬手帳、介護保険証、病院の書類など、必要なものがどこにあるか分からないと、それだけで大きな負担になります。

2. 医療者や支援者に正確に伝えられない

持病や服薬内容、これまでの通院先が分からないと、医師や看護師、ケアマネジャー、地域包括支援センターの職員にも、必要な情報を十分に伝えられません。

3. 家族間で認識のズレが起こる

きょうだい、配偶者、親族の間で、誰が何を知っているかがバラバラだと、連携が取りにくくなります。

4. 不安がさらに大きくなる

本来なら親の体調や今後を考えたいのに、「まず書類を探さなければ」「誰に聞けばいいのか分からない」という状態になると、不安や疲れが何倍にも膨らみます。

「情報を整理すること」は冷たいことではない

ここで誤解してほしくないのは、情報を整理することは、親を「管理すること」ではない、ということです。
 

中には、こう感じる方もいらっしゃるかもしれません。
 

「親の保険証の場所を聞くなんて、気が引ける。」
「薬のことを確認すると、監視しているみたいで嫌がられそう。」
「お金や書類の話をすると、親を追い詰めるような気がする。」
 

たしかに、言い方やタイミングには配慮が必要です。

でも、本来これは、親を縛るためではなく、親に何かあった時に、親をきちんと支えるための準備です。
 

たとえば、
 

「急な入院の時に困らないように、保険証の場所だけ確認しておきたい。」
「何かあった時にお母さんの希望を大切にしたいから、病院のことを少し教えてほしい。」
「家族が慌てないように、必要なものを一緒に整理しておきたい。」
 

このように伝えれば、目的は「支配」ではなく「安心」だということが伝わりやすくなります。

最初に整理しておきたい情報

では、何を整理しておくとよいのでしょうか?
 

全部を一度にやる必要はありません。
まずは、次のような基本情報からで十分です。

1. 通院先・かかりつけ医

  • どこの病院、クリニックに通っているか

  • 何科に通っているか

  • 主治医の名前

  • 次回の受診予定

2. 薬の情報

  • 飲んでいる薬

  • お薬手帳の有無

  • 薬の保管場所

  • 飲み忘れの有無や管理方法

3. 保険証・診察券などの場所

  • 健康保険証

  • 診察券

  • 介護保険証

  • 限度額認定証など必要な書類

4. 緊急連絡先

  • 家族の連絡先

  • 近くに住む親族

  • 親が頼っている人

  • 緊急時に連絡してほしい順番

5. 親の基本情報

  • 生年月日

  • 住所

  • 既往歴

  • アレルギー

  • これまでの入院歴や大きな病気

6. 本人の希望

  • 具合が悪くなった時、誰に頼りたいか

  • どこで暮らしたいと思っているか

  • どのような支援なら受け入れやすいか

7. 相談先

  • 親の住んでいる地域のシニアサポートセンター

  • 自分の住んでいる地域の相談先

  • 必要に応じた専門機関

「連絡ノート」を1冊作るだけでも違う

情報整理というと、大げさに感じるかもしれません。

でも、まずはノート1冊でも十分です。

たとえば、「連絡ノート」として、

  • 通院先

  • かかりつけ医

  • 緊急連絡先

  • 保険証の場所

  • 大切な書類の置き場所

  • 親が気にしていること

  • 何かあった時に家族で共有したいこと

などを書いておくだけでも、いざという時の安心感は大きく変わります。
 

手書きでもかまいません。
完璧でなくても大丈夫です。

「分かる人しか分からない状態」から、「家族が見て分かる状態」に近づけることが大切です。

家族だけで抱え込まないために

情報が整理されていないと、家族は「自分が何とかしなければ」と背負い込みやすくなります。
 

でも、すべてを家族だけで解決しようとしなくて大丈夫です。

介護や高齢者支援には、相談できる窓口があります。

さいたま市では、シニアサポートセンターが、地域の高齢者や家族の相談窓口になっています。
 

「まだ介護ではない」
「まだ元気だから相談するのは早い」

と思うような段階でも、
 

・最近、親の物忘れが気になる
・一人暮らしが心配
・何から整理すればよいか分からない
・家族で話し合うきっかけがほしい
 

そんな時に、早めに相談先を知っておくことは大きな安心につながります。

情報があるだけで、家族は落ち着いて動ける

親に何かあった時、家族の不安をゼロにすることはできません。

大切な親のことですから、心配になるのは当たり前です。

でも、必要な情報が分かっているだけで、家族はずいぶん落ち着いて動けるようになります。
 

保険証の場所が分かる。
かかりつけ医が分かる。
飲んでいる薬が分かる。
緊急連絡先が分かる。

どこに相談すればよいか分かる。
 

たったそれだけでも、「どうしよう」と立ち尽くす時間は減らせます。
 

介護準備や終活は、難しい制度の勉強から始める必要はありません。

まずは、情報を分かる形にしておくこと
それが、家族を助け、親を支える大きな一歩になります。

今日からできる小さな一歩

今日からできることとして、まずおすすめしたいのは次の3つです。
 

1つ目。
親の通院先、かかりつけ医を確認すること。
 

2つ目。
保険証、診察券、お薬手帳の場所を確認すること。
 

3つ目。
家族の連絡先を、親にも家族にも分かる形で整理すること。
 

そして、できればノートやメモに書き出してみてください。
 

家族が困るのは、気持ちが弱いからではありません。
情報がない中で、急に判断や対応を求められるからです。
 

だからこそ、今のうちに少しだけ整理しておく。
その小さな準備が、いざという時に親も家族も支えてくれます。
 

介護準備は、やさしい確認から。
終活は、安心して暮らし続けるための整理から。

まずは、今日できる一歩から始めてみませんか?

 

親の介護が心配。でも、何から始めればよいか分からない方へ

 

親が倒れる前の介護準備チェックシートはこちらから

 

2026年08月04日 17:02

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