仕事と介護の両立・介護離職防止・終活支援|キャリア&ライフプラントータルサポート

埼玉県さいたま市を拠点に、企業の介護離職防止・仕事と介護の両立支援、個人の介護準備・終活相談を提供。

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【第4回】なぜ社員は会社に介護の悩みを相談できないのか?

介護離職防止の実践講座 第4回

社員50人以下の会社を守る!介護離職防止の実践講座
~小さな会社だからこそできる、人材を守る30の取り組み~

はじめに―「困ったら相談して」と言うだけで十分でしょうか?

「介護で困ったら、いつでも相談してください」
 

経営者や管理職が社員にそう伝えることは、大切な取り組みです。

しかし、社員は本当に安心して相談できているでしょうか。
 

例えば、長年会社を支えてきた50代の社員が、親の介護に直面したとします。

これまで仕事に責任を持って取り組んできた社員です。
 

ところが、親の通院への付き添いや介護サービスの調整などで、急に休まなければならない日が増えてきました。
 

「会社に迷惑をかけたくない」

「今の仕事を続けたいけれど、周囲にどう思われるだろう」

「相談したら、これまでのように仕事を任せてもらえなくなるのではないか」
 

このような不安を抱える可能性があります。
 

これは特定の相談者の事例ではなく、想定した場面です。
 

第3回では、介護について社員から相談がないからといって、問題が存在しないとは限らないことをお伝えしました。

今回はさらに一歩踏み込み、社員が介護の悩みを会社に相談する際、どのような障壁が考えられるのか。そして、経営者や管理職には何ができるのかを考えます。
 

厚生労働省委託調査から見える、職場への相談の難しさ

まず、公的調査を確認してみましょう。
 

厚生労働省の委託により実施された「令和6年度仕事と介護の両立等に関する実態把握のための調査研究事業」では、家族の介護・手助けを行っている労働者などを対象に、仕事と介護の両立に関する調査が行われました。

調査期間は2024年12月、報告書の公表は2025年3月です。
 

この調査では、現在介護・手助けをしている正規労働者1,100人のうち、43.2%が、職場で介護について上司や同僚に相談できる雰囲気があるとは思わないと回答しています。

これは「そう思わない」17.8%と「あまりそう思わない」25.4%を合計したものです。
 

また、介護・手助けについて相談した人や機関を尋ねた設問では、正規労働者のうち、相談先として「勤務先」を選択した人は11.9%でした。
ただし、相談先は複数回答であり、この数値だけで「残りの人は会社への相談を必要としていた」と判断することはできません。

これらの結果は従業員50人以下の企業に限定したものではなく、インターネット調査の回答者についての集計です。

また、なぜ相談しにくいと感じたのか、個々の理由を直接証明する数字ではありません。
 

それでも、会社への相談のしやすさを考えるうえで、参考になる結果といえるでしょう。
 

【出典】厚生労働省委託「令和6年度仕事と介護の両立等に関する実態把握のための調査研究事業/労働者調査結果の概要」

28ページ・図表28「介護・手助に関する相談の状況」
32ページ・図表33「介護に関する職場への相談しやすさ」

https://www.mhlw.go.jp/content/11911000/001535332.pdf
 

なぜ社員は、会社への相談をためらうのか?

ここからは、調査で理由が立証されたということではなく、企業の現場で考慮しておきたい4つの障壁について、実務的な視点から整理します。
 

① 家族の問題を職場に知られたくない
親の介護には、健康状態、認知症の症状、家族関係、経済的な事情など、極めて個人的な情報が関わります。

介護をしていること自体を、職場で広く知られたくない社員もいるでしょう。

特に小規模企業では、経営者や社員同士の距離が近い場合があります。

相談した内容が、本人の知らないところで同僚に伝わってしまうのではないか。

そのような不安を持つ可能性も考えられます。
企業として重要なのは、仕事と介護の両立に必要な情報と、会社が知る必要のない家族の個人情報を区別することです。

社員の家庭事情を詳しく把握することが、介護離職防止の目的ではありません。
 

② 仕事への評価や今後のキャリアが心配
「介護が始まったと伝えたら、重要な仕事から外されるのではないか」

「管理職への昇進が難しくなるのではないか」

「これまでのように期待してもらえなくなるのではないか」

このような不安も、相談をためらう要因として考慮すべきものです。

もちろん、実際にそのような不利益が生じると決まっているわけではありません。

しかし、職場において介護への理解が十分に示されていなければ、社員が将来のキャリアを心配する可能性があります。

介護休業等の申出や取得を理由とする不利益な取扱いは禁止されています。

企業には、法令を守ることに加え、社員が不安なく制度を申し出られる職場づくりが求められます。
 

③ 同僚に迷惑をかけたくない
社員50人以下の会社では、一人の社員が複数の役割を担っていることがあります。

自分が休むことで、同僚の仕事が増える。

顧客への対応が遅れる。

部下や後輩に負担をかける。

そのように感じ、相談をためらう社員がいても不思議ではありません。

だからこそ、仕事と介護の両立支援は、社員本人に任せるだけでは十分ではありません。

普段から業務の引き継ぎや複数人での対応を進めておくことが、相談しやすい職場づくりにもつながります。
 

④ 相談しても、何が変わるのか分からない
社員が介護休業や介護休暇などの制度を知らなければ、会社に相談する意味を感じにくい場合があります。

「相談しても、結局は自分で何とかするしかないのではないか」

そう考えることもあるでしょう。

企業が必要なのは、単に「何でも相談してください」と伝えることではありません。

利用できる制度や申出先を明確にし、相談があったときに適切な対応ができる状態を整えることです。
 

管理職の言葉が、相談のしやすさを左右する

ここで、経営者や管理職の対応について考えてみましょう。

社員から介護の相談を受けたとき、どのような言葉をかけるでしょうか。

例えば、次のような言葉には注意が必要です。

避けたい対応例
 

「みんな忙しいから、なるべく休まないでほしい」

「ご家族のことだから、自分で何とかするしかないね」

「介護が大変なら、今の仕事を続けるのは難しいのでは?」
 

これらは、実際の発言事例ではなく、対応を考えるために作成した例です。

上司に悪意がなかったとしても、社員が「相談しなければよかった」と感じてしまう可能性があります。

一方で、次のような対話が考えられます。
 

相談を受けたときの望ましい対応例

「話してくださってありがとうございます」

「仕事を続けるうえで、今どのようなことに困っていますか?」

「利用できる会社の制度をご案内します。一緒に確認しましょう」

「ご事情については、必要な範囲だけ確認させてください」

「今後、状況が変わったときも相談してください」
 

大切なのは、上司がすぐに結論を出すことではありません。

本人の状況と希望を確認し、制度を適切に説明し、仕事を続けるための選択肢を一緒に考えることです。
 

厚生労働省は、企業向けに「介護に関する相談を受けた場合 ~会社の対応ポイント編~」「~相談時の対話例編~」という実務資料を公開しています。

【出典】厚生労働省「企業による社員の仕事と介護の両立支援に向けた実務的な支援ツール」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_61776.html
 

この資料には、面談や相談対応のための具体的な様式も用意されています。

人事部門がない小規模企業でも、こうした公的資料を活用することができます。
 

相談を受けた管理職が実践したい3つのステップ

それでは、社員から介護について相談があったとき、どのように対応すればよいのでしょうか。

ステップ1|本人の希望と仕事上の困りごとを確認する

まず、相談してくれたことを受け止めます。

そして、本人が仕事を続けたいと考えているのか、現在どのような業務上の困難があるのかを確認します。

親の病名や家族関係など、業務に直接関係しない詳細まで聞き出す必要はありません。

ステップ2|法令に基づく制度周知と意向確認を行う

2025年4月1日から、介護に直面した旨の申し出をした社員に対して、介護休業制度等の個別周知・意向確認を行うことが、事業主の義務となっています。

2026年10月現在、既に施行されている義務です。

周知事項には、介護休業に関する制度、介護両立支援制度等、申出先、介護休業給付金に関する情報が含まれます。

制度の取得を控えさせるような意向確認は認められません。
 

また、雇用環境の整備については、研修、相談体制、利用事例の提供、利用促進方針の周知という4つの措置から少なくとも1つを実施する義務があります。

管理職が親身に相談に乗ることだけで、こうした法令上の義務をすべて果たしたことにはなりません。
 

【出典】厚生労働省「介護休業制度特設サイト/法改正のポイント」

https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/kaigo/law-amendment/

 

ステップ3|働き方と業務の調整を検討する

利用可能な制度を確認したうえで、必要に応じて勤務時間や業務分担などを検討します。


例えば、

  • 通院への付き添いがある日に休暇を取得できるか

  • 一時的に担当業務を調整できるか

  • 他の社員への引き継ぎが必要か

  • 必要に応じて、地域包括支援センターなどの介護相談窓口を案内できるか

といった点を考えます。

相談内容を関係者に共有する場合には、本人の意向とプライバシーに十分配慮し、業務上必要な範囲に限定することが重要です。
 

【モデルケース】社員20人の会社で、介護相談を受けたら

ここで、架空の会社を例に考えてみましょう。

※以下は実在する企業や相談者の事例ではありません。
 

従業員20人の会社に勤務する54歳の営業担当者Aさん。

母親の介護が必要になり、週に何度か通院への付き添いや介護サービスの調整を行っています。
 

しかし、職場は忙しく、休暇を取ることに申し訳なさを感じていました。

ある日、Aさんは上司に相談します。
 

「実は、母の介護で仕事を続けられるか不安なんです」
 

上司は、まず本人の話を聞きます。

「相談してくれてありがとうございます。仕事を続けるために、今どんなことが必要か一緒に考えましょう」
 

会社は介護休業等の制度について個別に周知し、利用意向を確認します。

そして、本人の希望を踏まえ、業務の引き継ぎや勤務調整について検討することにしました。
 

介護の事情については、本人の意向を確認し、必要な関係者だけで共有します。

この対応によって、必ず両立が実現するとは限りません。
 

しかし、Aさんが退職以外の選択肢も考えられるようになる可能性があります。

大切なのは、相談の段階で退職を前提にせず、利用できる制度や支援策を確認することです。
 

社員50人以下の会社が、今から始めたい4つの取り組み

私は、経営者・管理職の皆様に、まず次の4つをお勧めします。
 

① 相談先と制度の案内を、社員全員が確認できるようにする
就業規則だけでなく、必要な情報をA4用紙1枚などにまとめ、定期的に周知します。
 

② 相談を受ける管理職に、基本的な対応方法を伝える
本人の話を聞き、制度を案内し、必要な担当者につなぐ役割を理解してもらいます。公的な対話例や研修資料を活用する方法もあります。
 

③ 個人情報の共有ルールを確認する
相談記録の管理者、情報の共有先、共有する範囲を明確にします。社員の家族の情報を社内に広めないよう配慮します。
 

④ 介護の有無にかかわらず、働き続けやすい業務体制を整える
業務の属人化を減らし、休暇取得や引き継ぎが可能な体制を整えます。
 

これらは実務上の改善提案であり、法令上必要なすべての措置を網羅したものではありません。

まずは自社の法令対応を点検し、そのうえで職場に合った取り組みを進めることが重要です。
 

キャリアコンサルタントとして、そして父母の介護と父の看取りを経験した立場から

私は、生命保険業界で約20年間、営業管理職を経験した後、キャリアコンサルタントに転身しました。

これまで12年以上にわたり、5,200名以上の就職・キャリア支援に携わってきました。
 

また、2023年からは私自身も父母の介護を経験し、2026年9月には父の看取りも経験しました。

仕事と介護を両立することには、制度や知識だけでは解決しきれない難しさがあります。
 

家族への思い。

仕事への責任感。

今後のキャリアへの不安。

そして、周囲の人に迷惑をかけたくないという気持ち。
 

こうした感情が重なると、自分の状況を誰かに伝えること自体が難しくなる場合もあると考えます。

だからこそ、私はキャリア支援の専門家として、相談する人の意思や気持ちを尊重し、その人自身が納得できる選択肢を一緒に整理する姿勢を大切にしています。
 

企業における介護離職防止も、同じではないでしょうか。
 

社員が安心して相談できる。

会社が利用できる制度を適切に案内する。

本人が希望する働き方について、一緒に考える。
 

それが、従業員と会社の双方を大切にする職場づくりにつながると考えています。
 

おわりに―「相談してください」から「相談できる会社」へ

経済産業省は、2026年3月に「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」を改訂しました。

仕事と介護の両立支援を、企業における人材不足へのリスクマネジメントや人的資本経営に関わる取り組みとして位置づけています。

【出典】経済産業省「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」(2026年3月改訂)https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kaigo/kaigo_guideline.html
 

社員50人以下の会社では、経営者や管理職の言動が職場の雰囲気に大きく影響する場合があります。
 

「困ったら相談してください」

その言葉を、社員が実際に相談できる環境につなげることが大切です。
 

制度が整っていること。

相談先が分かること。

プライバシーが尊重されること。

そして、相談した後も、自分の希望やキャリアを大切にしてもらえること。
 

介護離職防止の第一歩は、社員に介護の事情を話させることではなく、必要なときに安心して話せる環境を整えることです。
 

経営者の皆様。

御社は「相談してください」と伝えているだけでしょうか。

それとも、「社員が安心して相談できる会社」になっているでしょうか。

ぜひ、この機会に考えていただければ幸いです。
 

次回、第5回は、「介護離職対策は万全ですか? 経営者が確認したい5つの視点」をテーマにお届けします。
 


【経営者・幹部社員・人事担当者の皆様へ】御社の介護離職への備えを確認してみませんか?

「社員が介護について相談できる環境は整っているだろうか?」

「制度はあるけれど、実際に利用できる職場になっているだろうか?」
 

そんな疑問をお持ちの経営者・人事担当者の皆様に向けて、「介護離職危険度チェック(無料)」をご用意しています。

自社の制度や相談体制を振り返るきっかけとして、ぜひご活用ください。
 

▼介護離職危険度チェック(無料)
https://fwjmj.hp.peraichi.com/
 

※このチェックは自社の現状把握を支援するものであり、法令への適合性を公的に証明するものではありません。

キャリア&ライフプラントータルサポートでは、従業員50名以下の中小企業を中心に、企業の規模や課題に応じた支援を提供しています。
 

  • 仕事と介護の両立・介護離職防止に関する企業研修

  • 従業員向け個別キャリアカウンセリング

  • 経営者・管理職向けの介護相談対応研修

  • 社外相談窓口や介護離職防止コンサルティング

  • 「認知症世界の歩き方」実践ワークショップ

「認知症世界の歩き方」は、認知症のある方の視点を体験的に学び、家族介護への備えや仕事と介護の両立について考えるきっかけとなるプログラムです。
 

▼法人向けサービスのご案内
https://career-life.org/corporate_services.html


キャリア&ライフプラントータルサポート
代表 山岸 博幸
国家資格キャリアコンサルタント
「認知症世界の歩き方」公認ファシリテーター(旅のガイド)


参考資料・出典

1.厚生労働省委託調査「令和6年度仕事と介護の両立等に関する実態把握のための調査研究事業」

2024年12月調査、2025年3月報告。介護に関する相談先、職場への相談のしやすさを参照。
https://www.mhlw.go.jp/content/11911000/001535332.pdf

調査研究事業の公式掲載ページ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000200711_00009.html


2.厚生労働省「介護休業制度特設サイト/法改正のポイント」
2025年4月1日施行済みの雇用環境整備、個別周知・意向確認、40歳前後の情報提供などを確認。https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/kaigo/law-amendment/


3.厚生労働省「企業による社員の仕事と介護の両立支援に向けた実務的な支援ツール」
相談対応ポイント、対話例、面談シート、個別周知・意向確認書などを参照。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_61776.html


4.厚生労働省「仕事と介護の両立支援 ~両立に向けての具体的ツール~」企業が利用できる研修資料や支援ツールを参照。https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/model.html


5.経済産業省「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」2026年3月30日改訂。仕事と介護の両立支援を経営課題として捉える考え方を参照。https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kaigo/kaigo_guideline.html
 


※本記事は2026年10月31日時点で確認できる公的情報をもとに作成しています。調査結果、法令上の義務、筆者の実務上の考察を区別しています。個別の法令適用や就業規則等の整備については、厚生労働省・都道府県労働局の最新情報を確認し、必要に応じて社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

2026年10月31日 08:24

【第3回】「うちの社員は大丈夫」は本当か? 経営者が気づきにくい介護の問題

第3回 うちの社員は大丈夫」は本当か?

社員50人以下の会社を守る!介護離職防止の実践講座
~小さな会社だからこそできる、人材を守る30の取り組み~

はじめに―「うちの会社では介護の相談なんて聞いたことがない」

「うちの会社では、介護で困っている社員はいないと思います」

経営者の方から、そんな言葉を聞くことがあります。
 

確かに、これまで介護を理由とした退職がなく、社員から相談を受けた経験もなければ、特別な対策は必要ないと感じるかもしれません。

しかし、ここで一つ考えていただきたいことがあります。
 

「介護の相談がないこと」と「介護で困っている社員がいないこと」は、本当に同じでしょうか。
 

社員が家族の介護をしていても、会社には伝えていない場合があります。
 

「家庭のことを会社に話す必要はない」

「上司や同僚に迷惑をかけたくない」

「相談したことで、仕事上の評価に影響したら困る」
 

そう考える社員がいても不思議ではありません。
 

もちろん、介護をしている社員が全員、仕事との両立に悩んでいるわけではありません。

会社の支援を必要としていない方もいるでしょう。
 

しかし、相談が寄せられていないという理由だけで、「問題は存在しない」と判断するのは早計です。

今回の第3回では、社員の介護問題が経営者から見えにくくなる背景と、社員50人以下の会社が今から取り組める対策を考えていきます。
 

厚生労働省委託調査が示す「職場に相談しにくい」という現実

まず、客観的な調査結果を確認しましょう。
 

厚生労働省の委託により実施された「令和6年度仕事と介護の両立等に関する実態把握のための調査研究事業」では、家族の介護・手助けを行っている労働者などを対象に、職場環境や相談状況について調査しています。
 

調査は2024年12月にインターネット調査として行われ、2025年3月に報告書がまとめられました。
 

このうち、介護をしている正規労働者1,100人に対する調査では、「介護のことについて、上司や同僚に話したり、相談したりできる雰囲気が職場にあると思うか」

という質問に対して、

  • 「あまりそう思わない」25.4%

  • 「そう思わない」17.8%

という結果が示されています。
 

合わせると、43.2%が、介護について職場で相談できる雰囲気があるとは思っていないことになります。

つまり、この調査では、介護をしている正規労働者の約4割が、職場の相談しやすさに否定的な認識を持っていたのです。
 

ただし、これは従業員50人以下の企業だけの調査結果ではなく、インターネット調査の回答者についての数値です。

全国のすべての社員や、小規模企業の社員の43.2%が同じ状況にあると断定できるものではありません。
 

また、この数字は「実際に会社に相談しなかった人の割合」ではなく、「相談できる雰囲気があるとは思わない人の割合」です。

それでも、経営者が知っておきたい重要な調査結果だと考えます。
 

【出典】
厚生労働省「令和6年度仕事と介護の両立等に関する実態把握のための調査研究事業」労働者調査結果の概要・32ページ、図表33「介護に関する職場への相談しやすさ」
https://www.mhlw.go.jp/content/11911000/001535332.pdf
 

なぜ、社員の介護問題は経営者から見えにくいのか

私は、企業の組織運営とキャリア支援の視点から、特に3つの点に注意が必要だと考えています。

① 介護は家庭内の問題だと考えている

親の介護は、もともと家庭の中で対応するものだと考えている社員もいるでしょう。

実際、家族介護には、親の健康状態、認知症の症状、金銭面、兄弟姉妹との役割分担など、非常に個人的な事情が関わります。

そのため、社員が会社に詳しい事情を伝えたくないと思うことは自然です。

企業として大切なのは、家庭の事情を必要以上に聞き出すことではありません。

本人のプライバシーを尊重しながら、仕事への影響が生じた場合には相談できる環境を整えることです。
 

② 仕事に責任感を持つ社員ほど、相談をためらう場合がある

例えば、長年会社を支えてきたベテラン社員が、
 

「今、自分が休めば仕事が回らなくなる」

「同僚に負担をかけたくない」
 

と考える可能性があります。
 

これは実務上想定される一例であり、責任感の強い社員ほど必ず相談をためらうという統計的事実を示すものではありません。

しかし、経営者としては、日頃から重要な役割を担っている社員ほど、必要なときに業務を調整できる仕組みがあるか確認しておくべきでしょう。

相談しにくい原因を、社員個人の性格や考え方だけに求めないことが重要です。
 

③ 社内制度や相談先を知らない

介護休業や介護休暇などの制度があっても、社員が利用方法を知らなければ、必要なときに活用できません。
 

会社の制度について、どこに書いてあるのか。

誰に相談すればよいのか。

仕事を続けるために、どのような選択肢があるのか。
 

こうした情報が伝わっていなければ、社員は「介護が始まったら仕事を辞めるしかない」と考えてしまう可能性があります。

制度の存在だけでなく、社員が制度を理解し、安心して申し出られる状態になっているかが重要です。
 

【2026年10月現在】企業には既に介護離職防止に関する義務があります

ここで、法律上の対応についても確認しておきましょう。
 

2025年4月1日に施行された改正育児・介護休業法により、企業には介護離職防止のための新たな措置が義務づけられています。

2026年10月現在、これらは施行済みの義務です。
 

主な内容は次のとおりです。
 

① 介護休業等を利用しやすい雇用環境の整備
企業は、研修の実施、相談体制の整備、利用事例の収集・提供、制度利用促進方針の周知という4つの措置から、少なくとも1つを実施する必要があります。


② 介護に直面した社員への個別周知・意向確認
社員から介護に直面した旨の申し出があった場合には、制度や申出先などを個別に周知し、利用意向を確認しなければなりません。


③ 40歳前後の社員への早期情報提供
介護が始まる前の段階で、介護休業制度等について情報提供することも義務となっています。


これらは、従業員50人以下という会社規模だけで免除されるものではありません。

なお、研修の実施と相談窓口の設置の両方が、すべての企業に一律で義務づけられているわけではありません。

法律上の義務と、企業が自主的に行うことが望ましい対策は区別して理解する必要があります。


【出典】
厚生労働省「介護休業制度特設サイト/法改正のポイント」
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/kaigo/law-amendment/
 

経営者に必要なのは、社員の介護事情を探ることではない

ここは、私が特に強調したい点です。
 

社員の介護問題が見えにくいからといって、経営者が社員全員に家庭の事情を詳しく尋ねればよいわけではありません。
 

例えば、
 

「あなたの親は元気ですか?」

「認知症の家族はいませんか?」

「これから誰が介護をする予定ですか?」
 

といった個人的な質問を、社員に一律に行うことは慎重に考える必要があります。
 

特に小規模企業では、少ない情報から本人や家族の事情が周囲に伝わってしまう可能性もあります。

企業が最初に確認すべきなのは、社員個人の家庭事情ではなく、会社として必要な支援体制が整っているかどうかです。
 

「介護が始まったとき、どこへ相談すればよいか」

「利用できる制度を知っているか」

「制度利用を申し出た社員に対して、適切に対応できるか」
 

こうしたことを確認する方が、実務上の改善につながると考えます。
 

社員50人以下の会社が始めたい5つの取り組み

では、小規模企業では具体的に何から始めればよいのでしょうか。
 

ここからは、私がお勧めする実務上の取り組みをご紹介します。

なお、これらは法律上の義務をすべて網羅したものではなく、職場環境を改善するための提案です。

① 経営者から仕事と介護の両立を支援する姿勢を伝える

例えば、朝礼や社内ミーティングで、「家族の介護が必要になったときは、一人で抱え込まず、退職を決める前に相談してください」と伝えることが考えられます。

ただし、言葉だけでは十分ではありません。
 

相談できる担当者や利用できる制度を示すことが重要です。
 

② 介護に関する制度と相談先を分かりやすく周知する

介護休業・介護休暇等の制度、申出先、相談方法などを一覧にして、従業員が確認できるようにします。

厚生労働省の資料を活用すれば、社内向けの案内を一から作成する負担を抑えられます。
 

【参考】
厚生労働省「仕事と介護の両立支援 ~両立に向けての具体的ツール~」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/model.html
 

③ 社員の意向を尊重した相談対応を行う

介護について相談があったときは、会社が一方的に働き方を決めるのではなく、本人の希望を確認します。

また、相談内容の共有範囲は必要最小限とし、誰が情報を管理するのかを決めておくことが大切です。
 

④ 業務が特定の社員だけに集中しない体制をつくる

介護のために休暇が必要になったとき、他の社員が業務を引き継げるようにしておくことも重要です。

これは介護に限らず、病気や育児などによる急な欠勤への備えにもつながります。
 

⑤ 自社の支援体制を定期的に点検する

一度制度を周知したら終わりではありません。

担当者が変わった場合にも適切に対応できるか、必要な情報が最新の状態になっているかなどを確認します。

制度があることに安心するのではなく、必要なときに機能する状態を維持することが大切です。
 

「相談がない会社」から「必要なときに相談できる会社」へ

経済産業省は、2026年3月に「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」を改訂しました。

このガイドラインでは、仕事と介護の両立支援を、人材不足に対するリスクマネジメントや人的資本経営の観点から重要な経営課題として位置づけています。
 

【出典】
経済産業省「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」(2026年3月改訂)
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kaigo/kaigo_guideline.html


私は、社員50人以下の会社にとって重要なのは、社員全員の介護事情を把握することではないと考えています。

むしろ、「介護に直面した社員が、必要なときに安心して相談できる会社になっているか」という視点が重要です。
 

従業員が少ないからこそ、経営者の考え方や日頃のコミュニケーションが、職場に伝わりやすい面があります。

その特徴を、社員の働きやすさにつなげていきたいものです。
 

キャリアコンサルタントとして、そして父母の介護と父の看取りを経験した家族として

私は、生命保険業界で約20年間、営業管理職を経験した後、キャリアコンサルタントに転身しました。

これまで12年以上にわたり、5,200名以上の就職・キャリア支援に携わってきました。
 

また、2023年からは私自身も父母の介護を経験し、2026年9月には父の看取りも経験しました。

専門家として働く人の悩みに向き合ってきた経験と、実際に家族の介護を担った経験。
 

その両方を通じて、私が大切だと感じていることがあります。
 

それは、仕事と介護の両立について、誰もが同じ考え方や事情を持っているわけではないということです。
 

介護の状況を会社に詳しく伝えたい方もいれば、必要な範囲にとどめたい方もいるでしょう。

今の仕事をできる限り続けたい方もいれば、家族との時間や今後の働き方について悩んでいる方もいるかもしれません。
 

だからこそ、企業が一方的に答えを出すのではなく、社員本人の思いや希望を尊重することが大切だと考えています。

介護離職防止は、社員を無理に会社へ引き留めるための取り組みではありません。
 

本人が働き続けたいと考えているときに、退職以外の選択肢も検討できる環境を整えること。

そのために、会社として何ができるかを考えていくことが重要です。
 

おわりに――「相談がないから安心」という思い込みを見直す

今回の記事で、経営者の皆様にお伝えしたかったのは、次のことです。
 

介護の相談がないことは、会社に介護の問題が存在しないという証拠にはなりません。
 

一方で、社員の家庭事情を詳しく把握することが、介護離職防止の目的でもありません。

必要なのは、法令上の義務を適切に果たし、利用できる制度を周知し、社員が安心して相談できる環境を整えることです。
 

まずは、次の問いを自社に投げかけてみてください。
「うちの会社では、社員が介護に直面したとき、安心して相談できるだろうか?」


その問いが、介護離職防止に向けた大切な一歩になると考えています。

次回、第4回は、「なぜ社員は会社に介護の悩みを相談できないのか?」をテーマに、社員が相談をためらう背景や、管理職に求められる対応について、さらに詳しく考えていきます。
 


【経営者・幹部社員・人事担当者の皆様へ】御社の介護離職への備えを確認してみませんか?

「うちの会社は介護の相談がないから大丈夫」

本当にそうでしょうか。
 

キャリア&ライフプラントータルサポートでは、中小企業の経営者・人事担当者の皆様に向けて、「介護離職危険度チェック(無料)」をご用意しています。

自社の制度や相談体制、従業員への情報提供などを振り返るきっかけとして、ぜひご活用ください。
 

▼介護離職危険度チェック(無料)
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※このチェックは自社の現状把握を支援するものであり、法令への適合性を公的に証明するものではありません。

また、企業の規模や課題に応じて、次のような支援も提供しています。
 

  • 仕事と介護の両立・介護離職防止に関する企業研修

  • 従業員向け個別カウンセリング

  • 経営者・人事担当者向けコンサルティング

  • 「認知症世界の歩き方」実践ワークショップ

「認知症世界の歩き方」実践ワークショップは、認知症のある方が体験する世界への理解を深め、家族介護への備えや仕事と介護の両立を考えるきっかけとなる体験型プログラムです。


▼法人向けサービスのご案内
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キャリア&ライフプラントータルサポート
代表 山岸 博幸
国家資格キャリアコンサルタント
「認知症世界の歩き方」公認ファシリテーター(旅のガイド)
 


参考資料・出典

1.厚生労働省「令和6年度仕事と介護の両立等に関する実態把握のための調査研究事業」

2024年12月調査、2025年3月報告。労働者調査結果の概要・32ページ、図表33「介護に関する職場への相談しやすさ」を参照。https://www.mhlw.go.jp/content/11911000/001535332.pdf


調査事業の公式掲載ページ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000200711_00009.html


2.厚生労働省「介護休業制度特設サイト/法改正のポイント」
2025年4月1日施行の介護離職防止に関する事業主の義務を確認。
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/kaigo/law-amendment/


3.厚生労働省「仕事と介護の両立支援 ~両立に向けての具体的ツール~」社内研修資料、制度周知資料、実態把握調査票、面談シートなどを参照。https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/model.html


4.経済産業省「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」2026年3月30日改訂。企業経営における仕事と介護の両立支援の重要性、経営者の役割、取り組みの進め方を参照。
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kaigo/kaigo_guideline.html


5.厚生労働省 Webマガジン「働きながら育児・介護を両立――“働き続けられる職場”を考える」
2026年9月10日公開。仕事と介護の両立に関する直近の行政解説として参照。
https://www.mhlw.go.jp/web_magazine/feature/20260910.html
 


※本記事は2026年10月24日時点で確認できる公的資料をもとに作成しています。
統計は調査時点・対象・質問内容を明記し、調査結果と筆者の実務上の考察を区別しています。
具体的な法令適用や就業規則等の整備については、厚生労働省・都道府県労働局の最新情報を確認し、必要に応じて社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

2026年10月24日 07:40

【第2回】ベテラン社員が突然退職したら? 小さな会社が失う本当のもの

第2回 ベテラン社員が退職したら止

社員50人以下の会社を守る!介護離職防止の実践講座
~小さな会社だからこそできる、人材を守る30の取り組み~

はじめに―「あの社員が辞めたら、会社はどうなる?」

「もし、あの社員が突然退職することになったら...」

経営者の皆様は、このようなことを考えた経験はないでしょうか。
 

長年会社を支えてきた営業担当者。

豊富な技術と経験を持つ現場責任者。

お客様から厚い信頼を寄せられているベテラン社員。
 

こうした人材は、会社にとって大切な存在です。
 

しかし、ある日突然、親の介護が必要になり、これまでと同じ働き方を続けることが難しくなるかもしれません。
 

「親の介護をすることになりました。今の仕事を続けられるか分かりません」

そのとき、会社としてどのような対応ができるでしょうか。
 

もちろん、介護が始まったからといって、必ず退職するわけではありません。

利用できる制度や働き方を検討することで、仕事を継続できる場合もあります。
 

しかし、会社に相談できず、利用できる制度も知らないまま、退職という選択に至ってしまう可能性はあります。
 

今回のテーマは、ベテラン社員の離職によって、小さな会社は何を失う可能性があるのかということです。
 

単に人手が一人減るという問題だけではありません。

企業経営の視点から、一緒に考えてみたいと思います。
 

2026年版中小企業白書が示す、人手不足という経営環境

まず、現在の中小企業を取り巻く状況を確認しましょう。
 

2026年4月24日に公表された中小企業庁の「2026年版中小企業白書」では、労働供給の制約や人手不足が、企業経営における重要な課題として取り上げられています。

同白書では、2010年代以降、多くの業種で人手不足感が強まっていることが示されています。
 

さらに、今後の労働供給制約への対応として、労働生産性の向上や、限られた人材の有効活用が重要なテーマとなっています。
 

【出典】
中小企業庁「2026年版中小企業白書」https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2026/PDF/chusho.html


【概要資料】
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2026/PDF/chusho/01Hakusyo_gaiyo_web.pdf


これは、企業が人材を失った場合、必ず後任者を確保できるとは限らないという経営環境を考えるうえで重要な情報です。

もちろん、人手不足の程度は、地域や業種、職種によって異なります。
 

それでも、採用だけに頼るのではなく、現在働いている社員が能力を発揮し続けられる環境を整えることには、経営上の意味があります。
 

介護を理由とする離職は、現実に起きている

総務省統計局の「令和4年就業構造基本調査」によると、2022年の調査年の直近1年間に、介護・看護を理由として前職を離職した人は、全国で約10万6,000人でした。

この数字は2022年の全国調査の結果であり、2026年現在の離職者数や、従業員50名以下の企業に限った数値ではありません。

しかし、介護・看護を理由に仕事を離れる人がいるという現実を示しています。


【出典】
総務省統計局「令和4年就業構造基本調査 結果の要約及び概要」
※表8-4「介護・看護のために過去1年間に前職を離職した者の数」を参照。
https://www.stat.go.jp/data/shugyou/2022/pdf/kall.pdf


家族の介護は、必ずしも予定どおりに始まるものではありません。

親の突然の入院や認知症の進行などによって、社員の生活状況が大きく変化する場合があります。

そうしたとき、企業がどこまで備えているかによって、社員が利用できる選択肢は変わってくるのではないでしょうか。
 

小さな会社がベテラン社員の離職で失いかねない4つのもの

私は、ベテラン社員の離職による経営への影響を、特に次の4つの視点から考えています。

なお、以下は特定企業で損失を計測した調査結果ではなく、企業が確認しておきたい実務上のリスクです。
 

① 顧客との長年の信頼関係

例えば、ある営業担当者が10年以上、同じ取引先を担当していたとします。

その社員は、顧客が何を大切にしているのか、どのような提案が求められているのかを理解しています。

問題が起きたときにも、過去の経緯を踏まえて対応できるかもしれません。
 

こうした関係は、短期間で築けるものではありません。

もちろん、担当者が退職したからといって、必ず顧客との関係が失われるわけではありません。
 

しかし、顧客との関係が特定の社員に依存している場合、十分な引き継ぎができなければ、顧客対応に支障が生じる可能性があります。

顧客との信頼関係を、担当者個人だけに任せていないでしょうか。

経営者として確認しておきたいポイントです。

② 技術・経験・仕事のノウハウ

製造業では、設備の微妙な調整や品質の見極め。

営業職では、顧客の状況に応じた提案や交渉。

サービス業では、困難な顧客対応や現場での判断。
 

長年働いてきた社員は、マニュアルだけでは説明しきれない経験を身につけていることがあります。
 

こうした知識や技術が特定の社員だけに蓄積されていると、その人が不在になった際、業務に影響が出る可能性があります。

大切なのは、ベテラン社員を責めることではありません。
その社員が安心して働き続けられる環境を整えながら、経験やノウハウを組織全体の財産として共有していくことです。

③ 若手社員を育てる力

ベテラン社員は、日々の業務を通じて若手社員の成長を支えている場合があります。
 

仕事の進め方を教える。

困ったときに相談に乗る。

顧客への対応を見せる。
 

こうした日常的な関わりは、人材育成の重要な機会です。
 

もし、その役割を担っていた社員が退職すれば、若手社員への指導体制を見直す必要が生じるかもしれません。

単に後任者を採用すれば解決するとは限らないのです。

④ 残された社員の時間と職場の余裕

一人の社員が退職すると、それまで担当していた業務を誰かが引き継ぐ必要があります。

新しい担当者がすぐに確保できなければ、既存社員の負担が増える場合があります。
 

残業が増える。

管理職が現場業務を兼任する。

教育や業務改善に使える時間が減る。
 

その結果、職場全体の働き方を見直さなければならなくなる可能性があります。
 

これは、介護離職だけに限った問題ではありません。

ただし、介護を理由とした離職については、制度の周知や働き方の調整によって防げる場合もあるため、企業として早めに対応する意義があります。

【モデルケース】従業員28人の製造会社で、現場責任者から介護の相談があったら

ここで、架空の会社を例に考えてみましょう。

※以下は実在の企業や相談者の事例ではありません。
 

従業員28人の製造会社。

55歳の現場責任者Aさんは、製造工程の管理、品質確認、若手社員への技術指導を担当しています。
 

ある日、Aさんの父親が入院し、退院後の介護が必要になることが分かりました。

Aさんは、通院の付き添いや介護サービスの調整などを担うことになり、社長に相談します。
 

「これから、急に休まなければならない日が増えるかもしれません。周囲に迷惑をかけるなら、退職も考えています」
 

このとき、社長はどのように対応すればよいのでしょうか。
 

「困るから辞めないでほしい」とだけ伝えても、Aさんの問題は解決しません。
 

一方で、本人の状況や希望を確認せずに退職を前提として話を進めることも適切ではありません。
 

まずは、介護に直面した従業員への個別周知・意向確認など、法令上必要な対応を行い、本人が利用できる制度を説明することが必要です。

そのうえで、例えば次の点を一緒に整理することが考えられます。

  • Aさんは、今後も仕事を続けたいと考えているか。

  • 通院や介護サービスの調整など、どのような時間的制約があるか。

  • 利用可能な休業・休暇や勤務調整の制度は何か。

  • 一時的に他の社員へ引き継げる業務はあるか。

  • 地域包括支援センターなど、介護に関する相談先を把握しているか。

本人の家庭事情について、業務上必要のない情報まで聞き出す必要はありません。
 

また、介護のすべてを社員本人が担うことを前提にするのではなく、介護保険サービスなどの利用も視野に入れることが大切です。

厚生労働省も、仕事と介護を両立するためのポイントとして、勤務先の両立支援制度の利用や、介護保険サービスの活用を紹介しています。
 

【出典】
厚生労働省「仕事と介護の両立ポイント」
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/kaigo/balance/


こうした対応を通じて、Aさんが退職以外の選択肢も検討できるようになるかもしれません。

もちろん、すべての場合に仕事の継続が可能になるとは限りません。

それでも、会社と本人が十分に話し合い、利用できる選択肢を確認することには、大きな意味があります。
 

2026年現在、介護離職防止は経営者が取り組むべき課題

2026年3月、経済産業省は「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」を改訂しました。

経済産業省は、従業員の仕事と介護の両立支援を、人材不足に対するリスクマネジメントや、人的資本経営の観点から重要な取り組みとして位置づけています。
 

【出典】
経済産業省「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」(2026年3月改訂)
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kaigo/kaigo_guideline.html


また、2025年4月1日に施行された改正育児・介護休業法では、介護に直面した従業員への個別周知・意向確認や、介護休業等を利用しやすい雇用環境の整備などが、既に事業主の義務となっています。

これは、社員50人以下という企業規模だけを理由に免除されるものではありません。
 

【出典】
厚生労働省「介護休業制度特設サイト/法改正のポイント」
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/kaigo/law-amendment/

なお、本連載の「社員50人以下」は、実践策を考えるために設定した対象企業の規模であり、法律の適用範囲を示す区分ではありません。

重要なのは、法令上必要な対応を確実に実施したうえで、自社の事業や従業員の状況に合わせた支援を考えることです。
 

ベテラン社員を守るために、今から始めたい3つの取り組み

では、人手も予算も限られた会社では、何から始めればよいのでしょうか。

私は、次の3つをお勧めします。

① 特定の社員に依存している業務を洗い出す

まずは、主な業務について確認してみましょう。
 

「この社員が急に休んだら、誰が対応するのか?」

「その仕事の手順や情報は共有されているか?」

「顧客とのやり取りを、会社として把握できているか?」
 

こうした問いを通じて、業務の属人化を確認します。
 

ただし、特定の社員が介護をしているかどうかによって、評価や業務配分を不当に変えることがあってはなりません。

介護の有無に関係なく、組織全体の事業継続対策として進めることが大切です。
 

② 業務を引き継げる体制を整える

業務手順を簡単な文書にまとめる。

顧客情報を社内の適切な担当者が確認できるようにする。

複数の社員が基本的な対応方法を理解する。
 

こうした取り組みを日頃から進めておけば、社員が介護や病気などで一時的に休む場合にも対応しやすくなります。

最初からすべての業務を共有する必要はありません。

重要度が高く、代替が難しい仕事から優先して取り組むことをお勧めします。
 

③ 介護の相談を受ける前から、制度と相談先を伝える

介護が始まってから初めて制度を調べるのではなく、平常時から社内で情報を共有しておくことが重要です。

介護休業・介護休暇などの制度。

相談先となる担当者。

介護に直面したときの申出方法。
 

こうした情報を従業員が知っていれば、困ったときに相談しやすくなります。

2025年4月施行の法改正に対応した周知・意向確認や雇用環境整備を行うことは、当然の前提です。

さらに、経営者が「介護が始まっても、すぐに退職を決める必要はありません」と伝えられる職場を目指したいものです。
 

経営者の皆様へ―まず、次の4つを確認してください

今回の記事をお読みいただいた機会に、ぜひ次の点を確認してみてください。
 

1. 主要な業務が、特定のベテラン社員に集中していないでしょうか。

2. その社員が急に休む場合、仕事を引き継げる体制があるでしょうか。

3. 介護に直面した社員へ、利用できる制度を適切に説明できるでしょうか。

4. 従業員が、退職を考える前に安心して相談できる環境が整っているでしょうか。
 

一つでも気になる項目があれば、今後の改善を考えるきっかけにしていただければと思います。

これらは経営上の自己点検項目であり、法令への適合性を判定するものではありません。
 

キャリアコンサルタントとして、そして家族介護を経験した立場から

私は、生命保険業界で約20年間、営業管理職を経験した後、キャリアコンサルタントに転身しました。

これまで12年以上にわたり、5,200名以上の就職・キャリア支援に携わってきました。

また、2023年からは私自身も父母の介護を経験し、2026年9月には父の看取りも経験しました。
 

企業の組織運営や人材育成に関わってきた経験。

キャリアコンサルタントとして、働く人の悩みに向き合ってきた経験。

そして、家族として介護に向き合ってきた経験。
 

こうした経験を通じて、私は、仕事と介護の両立を考えるときに大切なことがあると感じています。

それは、社員本人の人生と、会社が大切にしてきた人材の価値を、どちらも尊重することです。
 

介護が始まった社員には、家族との時間も、仕事への思いもあります。

会社にも、事業を続け、他の社員の雇用を守る責任があります。
 

その双方の事情を理解し、何ができるのかを一緒に考えていくことが重要ではないでしょうか。
 

私は、介護離職防止の取り組みは、社員を無理に引き留めるためのものではないと考えています。

本人の意思を尊重しながら、働き続けたい人が、その希望を簡単に諦めなくて済む選択肢を整えること。

それが、企業にとっても従業員にとっても大切な取り組みだと思います。
 

おわりに―守るべきものは、社員の数だけではありません

ベテラン社員の離職によって、会社が失う可能性があるもの。

それは、人手だけではありません。
 

顧客との信頼関係。

長年培ってきた技術やノウハウ。

若手社員を育てる力。

そして、職場全体の働く余裕。
 

こうしたものを守るためにも、社員が介護に直面する前から備えておくことが大切です。

介護離職防止は、社員のキャリアを守る取り組みであると同時に、会社の未来を守る取り組みでもあります。
 

まずは、会社の中で重要な役割を担っている社員の業務を整理し、仕事と介護の両立について安心して相談できる職場づくりを始めてみませんか。
 

次回、第3回は、「『うちの社員は大丈夫』は本当か? 経営者が気づきにくい介護の問題」をテーマにお届けします。
 


【経営者・幹部社員・人事担当者の皆様へ】御社の介護離職への備えを確認してみませんか?

「ベテラン社員の介護が始まったら、会社として何ができるだろうか?」

「仕事と介護の両立支援について、自社では十分に対応できているだろうか?」

そんな疑問をお持ちの企業の皆様に向けて、「介護離職危険度チェック(無料)」をご用意しています。

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「認知症世界の歩き方」は、認知症のある方への理解を深め、家族介護への備えや、仕事と介護の両立について考えるきっかけとなる体験型のプログラムです。

企業の実情に合わせて、無理なく取り組める方法を一緒に考えていきます。
 

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参考資料・出典

1.中小企業庁「2026年版中小企業白書」
2026年4月24日公表。中小企業を取り巻く人手不足や労働供給制約、人材確保・活用に関する状況を参照。
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2026/PDF/chusho.html
 

2.総務省統計局「令和4年就業構造基本調査 結果の要約及び概要」
2022年調査。介護・看護を理由に過去1年間に前職を離職した人数を参照。
https://www.stat.go.jp/data/shugyou/2022/pdf/kall.pdf


3.経済産業省「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」
2026年3月改訂。仕事と介護の両立支援を経営課題として捉える考え方を参照。
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kaigo/kaigo_guideline.html


4.厚生労働省「介護休業制度特設サイト/法改正のポイント」
2025年4月施行の介護離職防止に関する事業主の義務を確認。
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/kaigo/law-amendment/


5.厚生労働省「仕事と介護の両立ポイント」
介護保険サービスの利用、職場への相談、企業による両立支援の取り組みなどを参照。https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/kaigo/balance/
 


※本記事は2026年10月23日時点で確認できる公的資料をもとに作成しています。経営への影響や具体的な対応方法については、一般的に考えられるリスクと実務上の提案を示したものであり、すべての企業で同じ結果が生じることを意味するものではありません。

法律上の具体的な適用や就業規則等の整備については、厚生労働省・都道府県労働局などの最新情報をご確認いただき、必要に応じて社会保険労務士等にご相談ください。

2026年10月23日 07:36

【第1回】社員50人以下の会社こそ、介護離職に備えるべき理由

第1回 介護離職を防ぐ会社の備え

社員50人以下の会社を守る!介護離職防止の実践講座

~小さな会社だからこそできる、人材を守る30の取り組み~

 

はじめに――大切な社員から突然、退職の相談を受けたら

「社長、少しお時間をいただけますか?」
 

長年会社を支えてきたベテラン社員から、突然このような相談を受けたら、どうされるでしょうか。
 

「親の介護が始まりました。今までどおりに仕事を続けられるか分かりません。退職も考えています」
 

これは実際の相談事例ではなく、想定した場面です。
 

例えば、従業員30人の会社で、主要顧客を担当している社員や、現場の技術・ノウハウを熟知した社員が退職することになったら...。
 

その影響は、単純に30人のうち1人が減るということではありません。
 

顧客との信頼関係、長年培われてきた技術、後輩への指導、社内の調整役としての働きなど、その社員が担っている役割によっては、会社の事業運営に大きな影響を与える可能性があります。
 

もちろん、親の介護が始まったからといって、必ず退職するわけではありません。
 

しかし、利用できる制度を知らず、職場にも相談できないまま、仕事を辞めることしか選択肢がないと思ってしまったら、どうでしょうか。
 

介護離職防止は、社員個人の生活を守るだけでなく、企業の大切な人材を守るための経営課題でもあるのです。
 

今回から全30回にわたり、従業員50名以下の中小企業の経営者、経営幹部、人事・総務担当者の皆様に向けて、仕事と介護の両立支援と介護離職防止のための具体策をお伝えしていきます。

仕事をしながら介護をしている人は、全国で約365万人

まず、公的な統計から状況を確認してみましょう。
 

総務省統計局の「令和4年就業構造基本調査」によると、2022年の調査時点で、家族などの介護をしている人は約628万8,000人でした。

そのうち、仕事をしている人は約364万6,000人です。

また、介護・看護を理由として、調査年の直近1年間に前職を離職した人は約10万6,000人でした。
 

つまり、全国では多くの人が仕事と介護の両立に向き合っており、介護・看護を理由に仕事を離れる人も存在していることが分かります。
 

ここで注意していただきたいのは、これらは2022年の全国調査に基づく数値であり、2026年現在の人数や、従業員50名以下の企業に限った数字ではないという点です。

統計を正しく理解することも、経営判断には欠かせません。
 

【出典】
総務省統計局「令和4年就業構造基本調査 結果の概要」

https://www.stat.go.jp/data/shugyou/2022/pdf/kgaiyou.pdf


介護は、必ずしも事前に予定を立てられるものではありません。

親の転倒や突然の入院、認知症の症状の進行などをきっかけに、家族の生活が大きく変わることがあります。
 

社員がこれまでどおりの働き方を続けたいと思っていても、通院への付き添い、介護サービスの調整、行政手続き、家族間の話し合いなどに時間を取られるかもしれません。

そのとき、会社としてどのような支援ができるのでしょうか。
 

なぜ社員50人以下の会社こそ備えが必要なのか?

私は、小規模企業が介護離職防止に取り組む重要性を、特に3つの視点から考えています。

① 一人の離職が経営に与える影響が大きい場合がある

小規模企業では、一人の社員が複数の役割を担っていることがあります。
 

例えば、営業担当者が顧客対応だけでなく、新人教育や業務改善まで担当している。

現場責任者が技術指導、品質管理、取引先との調整を一人で担っている。
 

このような会社では、経験豊かな社員が離職すると、業務の引き継ぎや後任者の育成に時間がかかる可能性があります。

さらに、残された社員の負担増加や顧客対応への影響も考えられます。
 

企業の規模や業種によって状況は異なりますが、特定の社員に多くの仕事が集中していないか、平常時から確認しておきたいところです。

② 介護の悩みが表面化しにくい

「親の介護について会社に話してもよいのだろうか」

「忙しい職場なので、周囲に迷惑をかけたくない」

「介護していると分かったら、重要な仕事を任せてもらえなくなるのではないか」
 

従業員がこのような不安を抱えることも考えられます。

経営者が「うちには介護で困っている社員はいない」と思っていても、実際には、社員が相談をためらっているだけかもしれません。
 

相談がないことと、介護の問題がないことは同じではありません。


ただし、企業が社員の家庭事情を無理に聞き出すべきではありません。

大切なのは、必要なときに本人が安心して相談できる環境をつくることです。

③ 制度があっても、利用できるとは限らない

介護休業や介護休暇など、仕事と介護を両立するための制度は用意されています。

しかし、就業規則に記載されているだけでは、社員が制度の内容を理解しているとは限りません。
 

「どのような場合に利用できるのか」

「誰に申し出ればよいのか」

「介護のために働き方を変えたいとき、何を相談できるのか」
 

こうしたことを、社員自身が確認できる状態にしておく必要があります。

制度が存在することと、実際に安心して利用できることは別です。

【2026年10月現在】介護離職防止対策は、既に企業の義務となっています

ここで、経営者・人事担当者の皆様に、ぜひ確認していただきたいことがあります。

2025年4月1日に施行された改正育児・介護休業法では、介護離職防止に関する企業の対応義務が強化されました。
 

2026年10月現在、これらは既に施行されている義務です。
 

「今後の法改正に備えよう」という段階ではなく、現在の対応状況を確認し、必要な措置を実施・運用する段階にあります。

主な義務は次の3つです。

① 介護休業等を利用しやすい雇用環境の整備

事業主は、以下の4つの措置のうち、少なくとも1つを実施する必要があります。

  • 介護休業・介護両立支援制度等に関する研修の実施

  • 相談窓口の設置など、相談体制の整備

  • 自社の労働者による介護休業等の利用事例の収集・提供

  • 介護休業等の利用促進に関する方針の周知

複数の措置を実施することが望ましいとされています。

② 介護に直面した社員への個別周知・意向確認

従業員から家族の介護に直面した旨の申し出があった場合、企業は介護休業制度等について個別に周知し、制度利用の意向を確認する必要があります。

制度の説明だけでなく、申出先や介護休業給付金に関する情報など、法令で定められた事項を伝えることが求められます。

また、制度の利用を控えさせるような対応は認められません。

③ 40歳前後の社員への早期情報提供

企業は、従業員が介護に直面する前の段階で、介護休業制度等について情報提供を行う必要があります。

情報提供の時期は、法律で定められた40歳に達する年度、または40歳の誕生日から1年間のいずれかです。

さらに、介護休暇の対象要件の見直しや、介護のためのテレワーク等の導入に関する努力義務も、2025年4月から適用されています。

これらの義務は、従業員50名以下という企業規模だけを理由に免除されるものではありません。
 

【出典】
厚生労働省「介護休業制度特設サイト/法改正のポイント」

https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/kaigo/law-amendment/

2026年3月、経済産業省の経営者向けガイドラインも改訂

介護離職防止対策は、法律上の義務に対応するだけで完結するものではありません。

2026年3月30日、経済産業省は「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」を改訂しました。
 

このガイドラインでは、従業員の仕事と介護の両立支援を、人材不足に対するリスクマネジメントや人的資本経営の観点から捉えています。

今回の改訂では、2025年4月施行の法改正を踏まえた支援の全体像の更新、図表のデータ更新、企業事例の追加などが行われています。

つまり、仕事と介護の両立支援は、単なる福利厚生の充実ではなく、企業の人材定着や事業継続を考えるうえでも重要なテーマとして位置づけられています。
 

【出典】
経済産業省「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」(2026年3月改訂)

https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kaigo/kaigo_guideline.html

小さな会社が、今から始められる3つの取り組み

「必要性は分かったけれど、専任の人事担当者もいない」

「費用や時間を考えると、何から手をつければよいか分からない」


そんな経営者の方もいらっしゃると思います。

そこで、私から、まず取り組んでいただきたい3つの実践策をご提案します。

① 自社の制度と対応状況を点検する

まずは、自社が必要な法令対応を実施できているかを確認してみましょう。

例えば、次のような点です。

  • 介護休業・介護休暇等の制度を従業員に周知しているか

  • 介護に直面した従業員への個別周知・意向確認の方法を決めているか

  • 40歳前後の従業員への情報提供を実施しているか

  • 法律で求められる雇用環境整備の措置を実施しているか

  • 社員が相談できる担当者や窓口が明確になっているか

こうした項目を確認することが、最初の一歩になります。

厚生労働省では、企業が活用できる研修資料、周知資料、面談シートなどの支援ツールも公開しています。
 

【参考】
厚生労働省「仕事と介護の両立支援 ~両立に向けての具体的ツール~」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/model.html

② 経営者自身が、安心して相談できる職場だと伝える

社員が介護に直面したとき、会社に相談してもよいと思える環境づくりは重要です。

例えば、朝礼や社内ミーティングで次のように伝えてはいかがでしょうか。
 

「ご家族の介護が必要になったときは、一人で抱え込まず、退職を決める前に相談してください。利用できる制度や働き方について、一緒に考えましょう」


言葉にすることは、小さな取り組みかもしれません。

しかし、経営者自身が仕事と介護の両立を大切に考えている姿勢を示すことには意味があります。
 

もちろん、声をかけるだけで法律上の義務をすべて果たせるわけではありません。

制度や相談体制を整えたうえで、実際に相談を受けられる環境をつくることが必要です。

③ 一人の社員に業務が集中しすぎないようにする

介護が始まると、通院への付き添いや介護サービスの調整などによって、急な休暇や勤務時間の変更が必要になる場合があります。

その際、一人の社員しか対応できない業務が多いと、本人だけでなく周囲の社員にも負担がかかります。
 

主要業務の手順を共有する。

複数の社員が対応できる仕事を増やす。

急な欠勤時の引き継ぎ方法を決めておく。
 

こうした取り組みは、介護離職防止だけでなく、病気や育児などによる急な欠勤にも備えることにつながります。

介護離職防止は、社員一人の問題ではなく、会社全体の働き方を見直す機会でもあるのです。

キャリアコンサルタントとして、そして父母の介護と父の看取りを経験した家族として

私は、生命保険業界で約20年間、営業管理職を経験した後、キャリアコンサルタントに転身しました。

これまで12年以上にわたり、5,200名以上の就職・キャリア支援に携わってきました。
 

そして、2023年からは私自身も父母の介護を経験し、2026年9月には父の看取りも経験しました。
 

専門家として支援する立場と、実際に家族介護に向き合う立場。

この両方の経験を通じて、私が大切だと感じていることがあります。
 

それは、介護は、制度や知識だけで割り切れるものではないということです。
 

介護には、家族への思い、仕事への責任、生活の問題、そして将来への不安など、さまざまな事情が関わります。

また、家族と過ごせる時間が、いつまでも続くとは限りません。
 

だからこそ、親が元気なうちから備えること、家族で話し合うこと、そして仕事と介護を両立するための選択肢を早めに知っておくことには、大きな意味があると感じています。


企業としても、介護に直面した社員に対して、制度を説明するだけでなく、本人の気持ちや今後の働き方について一緒に考える姿勢が大切ではないでしょうか。


もちろん、すべての社員が同じように仕事と介護を両立できるわけではありません。
 

それでも、社員が退職という選択を急がずに済むように、会社としてできることを考えていく。

私は、それが介護離職防止の重要な考え方の一つだと思っています。

おわりに――2026年の今、求められるのは「制度を知ること」から「実際に運用すること」へ

2025年4月に施行された改正育児・介護休業法から、約1年半が経過しました。

2026年10月現在、企業に必要なのは、既に施行されている義務への対応状況を確認し、実際に従業員が仕事と介護を両立できる環境を整えていくことです。
 

従業員50人以下の会社だからといって、大企業と同じ規模の人事部門を設ける必要があるわけではありません。

しかし、自社に適用される法律上の義務を果たし、社員が安心して働き続けられるように備えることは重要です。
 

経営者が制度を理解する。

社員が安心して相談できる環境を整える。

仕事を続けるための選択肢を一緒に考える。
 

こうした一つひとつの取り組みが、企業の大切な人材と社員のキャリアを守ることにつながります。
 

「介護が始まっても、この会社で働き続けたい」
 

そう思える職場づくりについて、これから一緒に考えていきませんか。
 

次回は、「ベテラン社員が突然退職したら? 小さな会社が失う本当のもの」をテーマにお届けします。
 


【経営者・人事担当者の皆様へ】御社の介護離職防止対策を確認してみませんか?

「法律上、必要な対応はできているだろうか?」

「介護の相談を受けたら、どのように対応すればよいのだろうか?」
 

そのような疑問をお持ちの経営者・人事担当者の皆様に向けて、「介護離職危険度チェック(無料)」をご用意しています。

自社の制度や相談体制などを振り返るきっかけとして、ぜひご活用ください。
 

▼介護離職危険度チェック(無料)

https://fwjmj.hp.peraichi.com/

※無料チェックは企業の現状把握を支援するものであり、法令への適合性を公的に証明するものではありません。
 

また、キャリア&ライフプラントータルサポートでは、従業員50名以下の中小企業を中心に、企業の規模や課題に応じた支援を提供しています。

主なサービスは、介護離職防止研修、従業員向け個別相談、経営者・人事担当者向けコンサルティングです。

さらに、認知症のある方の視点を体験的に学ぶ「認知症世界の歩き方」実践ワークショップもご案内しています。

認知症への理解を深め、家族介護への備えや、仕事と介護の両立を考えるきっかけとしてご活用いただけます。
 

▼法人向けサービスのご案内

https://career-life.org/corporate_services.html

 

参考資料・出典

1.総務省統計局「令和4年就業構造基本調査 結果の概要」

介護をしている人の数、仕事をしながら介護をしている人の数、介護・看護を理由とする離職者数を参照。

https://www.stat.go.jp/data/shugyou/2022/pdf/kgaiyou.pdf


2.厚生労働省「介護休業制度特設サイト/法改正のポイント」

2025年4月1日施行の事業主の義務、個別周知・意向確認、早期情報提供などを確認。

https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/kaigo/law-amendment/


3.経済産業省「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」

2026年3月30日改訂。企業経営における仕事と介護の両立支援の意義・進め方を参照。

https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kaigo/kaigo_guideline.html


4.厚生労働省「仕事と介護の両立支援 ~両立に向けての具体的ツール~」

企業向けの研修資料、周知資料、面談シート、支援プラン関連資料を参照。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/model.html


5.issue+design「認知症世界の歩き方 実践ワークショップ」

認知症のある方が体験している世界を、対話を通じて理解するワークショップの内容を参照。

https://issueplusdesign.jp/dementia_world/workshop/


※本記事は2026年10月16日時点で確認できる公的資料をもとに作成しています。法律上の具体的な適用、就業規則等の整備、個別の労務判断については、厚生労働省・都道府県労働局等の最新情報をご確認いただき、必要に応じて社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

2026年10月16日 19:47

9兆円ショック!あなたの会社を静かに蝕む「見えないコスト」の正体とは? - 介護離職は人事問題ではなく、「経営リスク」である

介護クライシスの衝撃

中小企業の経営者である、あなたに質問です。

「介護離職」と聞いて、何を思い浮かべますか?
 

「従業員個人の、大変な家庭の事情」「会社としてはどうしようもない、不可抗力な退職」——もし、そう考えているとしたら、その認識が、静かに、しかし確実に、あなたの会社の経営基盤を蝕んでいるかもしれません。
 

毎年、約10万人が介護を理由に職場を去っています 。しかし、この衝撃的な数字は、問題の氷山の一角に過ぎません。本当の脅威は、その水面下に隠された、さらに巨大なコスト構造にあるのです。  

■ 9.2兆円という不都合な真実。本当の脅威は「辞める人」ではない

近年、経済産業省は、仕事と介護の両立が困難になることによる経済損失額が、日本全体で年間約9.2兆円にものぼると試算しました 。  

この数字だけでも十分に衝撃的ですが、経営者として本当に注目すべきは、その「内訳」です。
 

9.2兆円のうち、社員が実際に離職することによる直接的な労働損失額は、約1兆円。では、残りの約8兆円は一体どこから生まれているのでしょうか?

答えは、「会社に残り、働きながら介護を続けている従業員」、すなわち「ビジネスケアラー」が抱える、労働生産性の低下にあります 。  

ある調査では、介護を担う従業員の仕事のパフォーマンスは、平均で約27.5%低下するというデータが示されています 。  


これを、あなたの会社に置き換えて想像してみてください。

もし、4人の精鋭で構成されるチームに、ビジネスケアラーが一人いるとします。その社員のパフォーマンスが27.5%低下するということは、チーム全体としては、実質的に3.25人分の働きしかできていないということです。

しかし、会社が支払う給与は、当然4人分。この差額こそが、目には見えにくいにもかかわらず、日々確実に利益を圧迫していく「見えないコスト」の正体なのです。

介護に関する心配事、睡眠不足、突発的な呼び出しへの対応...。
これらが積み重なり、これまで100%の力を発揮してくれていた社員の集中力や創造性を、静かに奪っていきます。
 

■ なぜ、これは「中小企業」にとってこそ致命的なのか

「それは大企業の話だろう」と思われるかもしれません。しかし、この問題は、リソースの限られる中小企業にこそ、より深刻なダメージを与えます。

大企業であれば、一人の社員が抜けても、代替要員の確保や業務の再配分が比較的容易かもしれません。しかし、中小企業ではどうでしょうか。

一人のベテラン社員が担う役割は多岐にわたり、その人が長年かけて築き上げてきた技術、ノウハウ、そして何より顧客との信頼関係は、簡単に代替できるものではありません。

それは単なる「労働力」の損失ではなく、会社の歴史そのものである「知的資本」の流出を意味します。たった一人の離職が、事業の継続性を揺るがす引き金になりかねないのです。

■ これは「人事問題」ではなく、紛れもない「経営リスク」である

この記事をお読みの経営者の皆様に、改めてお伺いします。

『この1年以内に、役員が出席する会議で、介護による人材流出を会社の「経営リスク」として真剣に話し合ったことがありますか?』  

『もし今、一番頼りにしているベテラン社員から「親の介護で辞めたい」と告げられたら、会社が被る損失額を、具体的に計算できますか?』  

もし、これらの問いに即答できないのであれば、あなたの会社は、まだこの問題の深刻さに気づけていないのかもしれません。

介護離職は、もはや福利厚生の充実度を測る一指標ではありません。これは、会社の未来を左右する、事業継続計画(BCP)の観点から取り組むべき、最重要の経営リスクなのです。


次回は、このリスクが具体的に「誰」を直撃するのか、そしてなぜそれが会社にとって最も手痛い損失となるのか——介護離職で会社を去る「人材の不都合な真実」に迫ります。


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2025年08月19日 14:55

中核・中堅社員の介護離職防止に向けて、そのサイン見逃していませんか?

介護クライシスの衝撃

「半休が増えた」「出張を断るようになった」「会議中に着信が多い」

それは、単なる「やる気低下」ではなく 親の介護が始まったサイン かもしれません。
 

少人数の会社ほど、一人が抜ける影響は大きい。
だからこそ、早めに気づき、最初の一歩を素早く打つことが離職防止のカギです。
むずかしい言葉は使わず、今日から使えるやり方だけをまとめました。


1) こういう変化、出ていませんか?(当てはまるほど要注意)

  • 半休・時間休が増える(役所・病院対応で細切れになりがち)

  • 遅刻・早退・突発休が続く

  • 出張NG/残業回避の申し出が増える

  • 会議中の着信・中座(「ケア」「病院」の表示が増える)

  • 集中力の低下・ミス増(寝不足・不安)

  • 表情が硬い・疲れて見える

  • 在宅勤務や時差出勤の相談

  • 親の話題(転倒・物忘れ・通院)が増える

  • 評価・異動への不安を口にする

  • 年休を前半で使い切り気味


2) なぜ見逃してしまうのか

  • 本人が言い出しにくい:「迷惑をかけたくない」「評価が下がるかも」

  • 上司が先送り:「繁忙期が終われば戻るだろう」

  • 会社の空気:制度はあるが使いづらい、前例が少ない

→ 限界まで抱え、ある朝いきなり退職願...を招きがち。少人数の会社ほど、初動が命です。


3) 声のかけ方は「3行」で十分

1行目:事実
「ここ2か月、半休が増えてるのに気づきました。」

2行目:配慮
「業務はチームで調整します。生活面で困っていること、ありませんか?」

3行目:選べる提案
「もし介護のことなら、在宅や時差も使えます。手続きは一緒に進めましょう。」

言ってはいけない例(5つ)

  • 「家庭のこと?今は繁忙期だよ」

  • 「制度はあるから自分で読んで申請して」

  • 「仕事に支障が出ると困る」

  • 「いつから普通に来れるの?」

  • 「とりあえず有給でなんとかして」
    ※コツ:問い詰めない/守秘を約束/一緒にやる姿勢。
    これだけで相談のハードルが下がります。


4) はじめの3日対応(むずかしい手順は不要)

【初日:状況把握と“仮の働き方”をつくる】

  • 話を聴き、メモ(通院日、役所手続き、同居/別居、家族の分担、通勤距離など)

  • 2週間の“仮運用”を決める
    例:在宅週2/時差出勤/会議は録画+要点メモで追いつく

  • 社内制度を1枚で案内(時間休/短時間/在宅/費用補助/申請先・連絡先)

【2日目:業務を「回る形」へ】

  • 属人タスクを小分け(3分割を目安)→割り振り

  • 承認ルートを短く(上長→人事で即日。証明は後追いOK)

【3日目:会社の外の力も使う準備】

  • 地域包括支援センター(介護の総合窓口)の連絡先を一緒に確認

  • 要介護認定〜ケアマネ相談の流れを説明(社内ガイド1枚でOK)

  • 毎週15分の定点確認”**を予約(予定・負担・調整が必要な点)
    ※目的は「休ませること」ではなく、“働ける形に整えること”。
    従業員が少ない会社でも実行可能です。


5) 少人数でも回るための小ワザ

  • 要点メモ:会議は録画+「決定事項・期限・担当」だけの要点メモを必ず残す

  • 代理セット:不在時の代理承認・代理連絡を事前に設定

  • チャットの“要点スレ”:緊急/期限/決定だけを一か所に

  • “帰る時間を宣言”:毎日17:00は家族対応など、先に言う文化を歓迎

  • 取引先への一言テンプレ:「家族対応のため、当面は○曜△時以降は返信が翌営業日になります。至急は○○宛てにご連絡ください。」


6) 1週間〜1か月の見直しポイント

  • 困った時間帯はどこ? →在宅・時差の曜日/時間は合っている?

  • 代替アサインは適切? →誰に回すのが一番スムーズ?

  • 次の通院・役所はいつ? →カレンダー共有

  • 本人の疲れ具合は?(睡眠/食事/メンタル)

  • 取引先との段取りは問題ない?(テンプレ運用できている?)
    ※余裕が出たら段階的に通常へ。焦りや無理に戻しは禁物。


7) ミニ事例(従業員60名・卸売)

  • 兆候:半休の連続と軽微なミス増

  • 初動:在宅週2+時差出勤、会議は録画+要点メモ

  • 業務:属人タスクを3分割、引き継ぎメモを共同編集

  • 相談:上長が家族同席で地域包括へ。訪問介護+通所が稼働

  • 結果:退職回避、3か月で元の水準へ。以降、早期相談が3件生まれた


8) すぐ使える「1on1質問メモ」

  • 最近、時間のやりくりで困っていることは?

  • 通院や役所など、決まっている予定は?

  • この2週間で、在宅or時差が役立ちそうな日・時間は?

  • 業務で誰かに任せたいことは?

  • 連絡は電話/チャット/メールのどれが早い?

  • 次の見直しはいつ・何を確認する?


まとめ:一番コストが低い対策は「早めに気づくこと」

  • サインは小さな変化として必ず出ます。

  • 声かけは3行で十分。

  • はじめの3日で“働ける形”をつくれば、退職は高い確率で防げます。

  • 従業員200名以下の会社こそ、スピードと現場力で勝てます。


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2025年08月12日 18:07

「制度はあるのに、誰も使わない 会社の正体 〜使われない制度が意味するもの〜」

介護クライシスの衝撃

あなたの会社には、介護休業制度や両立支援制度がありますか?

多くの中堅・中小企業が、法律に従い一定の制度を整えています。
実際に「うちは制度を導入してあるから大丈夫」とおっしゃる経営者の方も少なくありません。
 

でも――

● 過去3年間で制度を利用した社員は何人いますか?
● 制度の利用方法を、社員はどこまで理解していますか?
● そもそも「使いやすい雰囲気」が職場にありますか?

この問いに即答できなければ、制度は「あるだけ」で機能していない可能性があります。


■ 制度があっても使われない理由
実は、介護を抱える社員が制度を利用しない理由は、
法律やルールではなく、「職場の空気」にあることが多いのです。

社員の本音(実際の声):
「上司が忙しそうで言い出せなかった」

「制度を使ったら逃げたと思われそう」

「制度があると知っていても、使い方がわからない」

「キャリアに影響しそうで怖い」

このような「心理的ハードル」が、制度の利用を妨げています。

つまり、制度があることと使われることはまったく別問題

使える制度設計と使える文化の両方がそろって初めて、離職は防げるのです。

■ データが示す制度未活用の実態

🔹 介護離職経験者の約60%が、介護休業制度を「利用していない」
🔹 制度の存在を「知らなかった」または「内容をよく知らなかった」:約45%
(出典:厚生労働省「仕事と介護の両立に関する実態調査」)

これは驚くべきことです。
制度があっても、多くの社員がそれを活かせないまま職場を去っているのです。


■ なぜ中堅・中小企業で特に使われにくいのか?
中小企業では、以下のような事情が制度の活用を難しくしています:

少人数体制で誰かが抜けると業務が回らない

管理職も制度の詳細を理解していない

「仕事を休む=責任放棄」という雰囲気が根強い

人事制度や相談窓口が整っていない

しかし、このまま放置すれば、大事な人材が静かに辞めていくリスクが高まります。


■ 今こそ「使われる制度」に変えるとき
では、制度を活きた支援策に変えるにはどうすれば良いのでしょうか?

🔸 制度の内容を定期的に社内で周知する(メール/研修など)
🔸 管理職に「相談されたときの対応フロー」を教育する
🔸 利用者が後ろめたさを感じない雰囲気づくりを進める
🔸 実際に制度を使った社員の声を社内共有する


これらの積み重ねが、制度を活用されるものに育て、離職を未然に防ぐ礎となります。


💬まとめ
介護離職は「制度がないから」ではなく、「制度を使えない空気」の中で起きている――この事実に気づいていただきたいのです。

経営者として「制度は用意した」だけで安心していませんか?
社員が声を上げやすく、制度が“本当に使える”職場に変えていくことこそ、人的資本経営の第一歩です。
 

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「自社の制度は活かせているのか?」
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2025年08月05日 21:04

「“見えない離職予備軍”に気づいていますか? 〜介護離職の本当の怖さ〜」

介護クライシスの衝撃

「うちの社員は誰も親の介護なんてしていないと思う」
「介護が始まったら、相談に来るはずだ」

そのように考えている企業こそ、もっとも介護離職のリスクが高いと言えるかもしれません。


■ 介護離職の“本当の姿”は、表に出ない

介護離職の問題が厄介なのは、社員が声を上げにくいことにあります。

🧠その理由は?

  • 「介護していることを職場に知られたくない」

  • 「上司に迷惑をかけたくない」

  • 「大事なプロジェクトに穴を開けられない」

  • 「評価に響くのではないかと不安」

そのため、当事者本人が“なんとかなる”と思い込んで黙ってしまうのです。

そのまま業務と介護の両立に疲弊し、
気力・体力の限界を迎えたときに――

「これ以上続けられません…」
そうして静かに、辞表が出されるのです。


■ 「介護離職予備軍」はすでにあなたの会社にも存在する

厚生労働省の調査によれば、
40代後半〜50代の就業者の約4人に1人が、今後“家族の介護”を担う可能性があるとされています。

中小企業の人事担当者向けアンケートでは、
🔹「介護に直面しているが、会社には話していない」と回答した社員:37.6%
🔹「仕事を続ける自信がない」と答えた人:52.3%

という衝撃的な結果も出ています(東京都福祉保健局・三菱UFJリサーチ調査)。

つまり、表に出ていない「離職予備軍」が、すでに職場に存在しているということです。


■ 「制度導入済み=安心」ではない

多くの企業は、介護休業制度や両立支援制度をすでに導入済みです。
しかし、制度があっても使われていない、あるいは**「使える雰囲気がない」**という問題があります。

実際、ある中堅製造業の事例では、制度を導入してから5年間で利用実績ゼロ

理由を探ると、

・介護を始めたことを上司に言えなかった
・誰かに迷惑をかけるのが申し訳なかった 知ってはいたが、申請のハードルが高かった

など、心理的な壁が明らかになりました。


■ では、どうすれば良いのか?

まずやるべきことは、「沈黙している予備軍」に気づく仕組みをつくることです。

✔ 匿名アンケートで介護実態を把握
✔ 管理職向けに“介護の兆候”を察知する研修を実施
✔ 日頃の1on1面談で「介護」についても話題に出す
✔ 制度を“使いやすくする”文化づくり

これらはすぐに始められる取り組みです。


💬まとめ

介護離職は、「制度がない」から起こるのではありません。
“使われない制度”と“話せない職場”こそが、最大の原因です。

経営者の目に映らないところで、静かに疲弊し、やがて去っていく社員たち――
それを防ぐためには、「今は問題ないから大丈夫」ではなく、
「今のうちに備える」ことが経営リスク管理となるのです。


📩 無料個別相談はこちらから

「うちの社員にも、もしかして…」と思った方は、
まずはお気軽にご相談ください。
今ある制度や文化の見直しポイントがきっと見えてきます。

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2025年07月14日 18:12

第1回 「“うちは大丈夫”は危険!?経営者の思い込みが招く介護離職リスク」

介護クライシスの衝撃
「うちは社員同士の距離が近いから、誰かが困っていれば分かるはず」
「幹部社員が突然辞めるなんて、うちには関係ない」


――そんなふうに考えている経営者の方、いらっしゃいませんか?

しかし実際には、社員が「親の介護」で静かに職場を去っている現実があります。
それも、事前に会社へ相談することなく。

■ なぜ、経営者は「うちは大丈夫」と思い込んでしまうのか?
その背景には、いくつかの“思い込み”が潜んでいます。

幹部社員は責任感が強く、辞めないはず

介護は家族で何とかするもので、会社に持ち込まないだろう

制度は整備してあるから使えるはず

介護離職は大企業の話。中小企業ではまだ少ない


これらはいずれも、データによって否定されています。

■ 介護離職は「静かに」「急に」起こる
ある調査では、介護離職をした人の半数以上が、制度(介護休暇・介護休業)を一切利用せずに辞めていることが分かっています。
社員が何も言わず、有給休暇で何とかしながら限界まで我慢し、
「これ以上は無理」となったときに、突然退職届を出す――それが典型的な介護離職の形です。

そしてそれは、規模にかかわらず、どの企業でも起こり得る問題です。

🔹 過去1年間に「介護離職があった」と答えた企業:7.3%
🔹「今後、介護離職が増える」と考える企業:71.2%
※経済産業省「仕事と介護の両立支援に関する実態調査」より

この数字を見て、「自分の会社も例外ではないかも…」と感じられた方も多いのではないでしょうか。

■ 思い込みからの脱却が第一歩
介護離職防止の第一歩は、「自社には関係ない」という思い込みを捨て、実態を把握することです。
なぜなら、社員本人が「会社に迷惑をかけたくない」と隠していることが多いからです。
ヒアリングや匿名アンケートなどで、社員の実情を丁寧に拾っていくことが必要です。

💡まとめ
介護離職は、予兆なく“静かに”訪れます。
そしてそれは、経営者の見えないところで進行しているのです。

「うちは大丈夫」という“感覚”ではなく、データと対話で向き合うこと。
それが、会社の未来と大切な社員を守る第一歩になります。

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2025年06月19日 18:59

3冊目の電子書籍 50代・60代社員が突然辞める日:介護クライシスの衝撃 本日出版しました。

介護クライシスの衝撃
このたび、新たな電子書籍を出版いたしました。

タイトルは、
 『50代・60代社員が突然辞める日:介護クライシスの衝撃』

【こんな問題、起きていませんか?】
「ベテラン社員が突然、辞めたいと言ってきた」

「理由は“一身上の都合”。でも本当は、親の介護だった」

「制度は整っていたはずなのに、なぜ…?」

本書は、企業の現場で静かに、そして確実に広がっている“介護離職”というリスクに焦点を当てた1冊です。

【私だからこそ書けた視点があります】
私はキャリアコンサルタントであり、社会保険労務士ではありません。
制度設計の専門家ではなく、人と人生に向き合う専門家としてこの本を書きました。

その背景には、次のような経験があります:

✅ 二度の勤務先破綻と一度の吸収合併という、人生の激動を経験
──転機の中で何を選び、どう立ち上がるか?その問いに何度も向き合ってきました。

✅ 5,000名以上の相談実績を持つキャリアコンサルタント
──さまざまな人生背景・価値観・家族構成の方と面談し、「話を聴く」「本音を引き出す」「安心感を届ける」力を磨いてきました。

✅ 介護離職防止・再就職支援・心理的ケアの知見を持つ
──仕事と介護の両立、退職後の再スタートまでトータルで支援できる立場にあります。

✅ 現在も父母の介護を担う“当事者”です
──制度や理屈だけでは語れない、介護者の気持ち、迷い、苦しみに日々直面しています。

【本書のキーワードは「見えないリスク」】
制度はあるのに、使われない

本音は語られず、「一身上の都合」で辞めていく

管理職・キーパーソンほど突然辞める

中小企業は特に代替がきかない

会社に残るのは、“静かな空白”と“引き継げなかった現場”

介護離職は、制度だけでは防げません。
「職場の空気」「相談できる文化」「伝え方」など、複雑な要素が絡み合っています。

【こんな方におすすめです】
・中堅・中小企業の経営者や人事の方
・50代・60代の社員を多く抱える現場責任者
・制度を整えたのに、なぜか機能していないと感じている方
・介護と仕事の両立支援に、本気で向き合いたい方

【介護離職は、防げます】
介護離職は「突然の事件」ではありません。
多くの場合、“言えなかった葛藤”と“沈黙の積み重ね”の末に起きます。

だからこそ、早く気づくこと、そして話せる職場をつくることが最大の予防策なのです。

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セミナー開催、書籍をもとにした企業向け研修なども随時承っております。
お気軽にご相談ください。
 
2025年04月21日 21:58