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「5万円の特別レク」は高い?敬老会イベントの費用対効果を考える

連載⑪

レクが変わると、施設が変わる。

「外部レクに5万円か...。ちょっと高いかな?」

敬老会などの特別イベントを検討しているとき、こう感じる施設長や管理者の方もいらっしゃるのではないでしょうか?
 

普段、職員の皆さまが施設内で行っているレクリエーションと比較すれば、「1回5万円」という金額は決して小さくありません。

だからこそ大切なのは、「5万円は高いか、安いか」だけで判断しないこと。」ではないでしょうか?
 

その5万円によって、

  • 利用者様にどんな体験を届けられるのか?

  • 職員の企画・準備負担はどう変わるのか?

  • 何人の方が楽しめるのか?

  • 敬老会らしい特別な時間になるのか?

  • 当日の画像を採用などのHPなどに活用できないか?

  • SNSによる情報発信に活用できないか?

まで含めて考えることが必要だと思います。

今回は、敬老会などの特別レクリエーションの「費用対効果」について考えてみます。
 


普段のレクと「特別レク」は、同じ物差しで比べない

まず整理しておきたいのは、毎日のレクリエーションと敬老会のような特別イベントは、役割が少し違うということです。

普段のレクには、

  • 身体を動かす

  • 人との交流を楽しむ

  • 日々の生活にメリハリをつくる

  • 安心できる習慣をつくる

といった大切な役割があります。

一方、敬老会や周年行事、クリスマス会などは、「今日は特別な日」と感じていただくための機会でもあります。

ですから、「毎週のレクなら5万円は高い。」という判断と、「年に一度の敬老会として5万円をどう考えるか?」は、分けて考えることも必要なのではないかと思います。
 


「1回5万円」ではなく「何人に届けられるか?」で考えてみる

たとえば、50名の利用者様が参加するイベントであれば、5万円は単純計算で1人あたり約1,000円です。

30名なら、1人あたり約1,700円です。
 

もちろん、人数だけで費用対効果が決まるわけではありません。

しかし、「1回5万円」という数字だけを見るのと、「利用者様一人ひとりに、どんな体験を届けられるのか?」「他の活用方法があるのではないか?」という視点で見るのとでは、印象が変わります。
 

特に、見るだけでも楽しめて、希望する方は少し参加もできるようなプログラムであれば、身体状況の異なる多くの利用者様が同じ空間で楽しめる可能性があります。
 


見落とされやすいのが「職員の準備時間」というコスト

施設内でイベントを行う場合、表面的な費用はあまりかからないことがあります。
 

しかし、その裏側では、「今年は何をしよう。」と企画を考え、
 

必要な物を探し、

買い出しをし、

飾り付けをつくり、

出し物を練習し、

当日の進行を確認する。
 

こうした時間がかかっています。
 

もちろん、職員の皆さまが工夫してつくるイベントには、外部サービスにはない素晴らしさがあります。
 

だから、すべて外部に任せればよいということではありません。
 

ただ、「施設内で行えば無料」ではないという視点は持っておきたいところです。

職員の準備時間も、施設にとって大切な経営資源だからです。
 


外部レクの価値は「職員も一緒に楽しめること」にある

外部レクを活用する大きなメリットの一つは、職員の皆さまの役割を変えられることだと思います。
 

施設内だけでイベントを運営すると、
 

司会をする。
音楽を流す。
道具を配る。
進行する。
盛り上げる。
 

職員の皆さまはどうしても「運営する側」になります。
 

一方、外部の専門家に進行を任せられれば、
 

利用者様の隣に座る。
一緒に拍手する。
声をかける。
普段とは違う表情に気づく。
 

そんな関わりがしやすくなります。

私は、これも特別レクに費用をかける価値の一つだと思っています。
 


「楽しかった」で終わらない価値も考えてみる

敬老会の価値は、その場で利用者様が楽しむことだけではありません。
 

イベントのあとに、
 

「昨日は楽しかったですね。」

と利用者様と職員の会話が生まれる。

写真を見ながら思い出を振り返る。

ご家族に、その日の様子を伝える。

施設だよりや広報で、施設の取り組みとして紹介する。
 

そうした形で、イベント後にも体験を活かすことができます。

特別イベントは、「その1時間だけの出来事ではなく、その後の会話や交流につながる可能性がある。」という視点も、費用対効果を考えるうえでは大切だと思います。
 


では「5万円ならやるべき」なのか?

ここは、はっきりお伝えしておきたいと思います。
 

5万円だから価値があるわけでも、特別レクなら必ず導入した方がよいわけでもありません。
 

たとえば、

  • 何のために実施するのか明確でない。

  • 利用者様の状況に内容が合っていない。

  • 会場条件が合わない。

  • 施設の予算に無理がある。

  • 職員側の準備が想定以上に必要。

という場合には、別の方法を考えた方がよいこともあります。
 

大切なのは、「5万円を使うこと」ではなく、その施設にとって「5万円を使う意味があるか?」を判断することです。
 


費用対効果を考える5つの質問

敬老会などの外部レクを検討するときは、次の5つを考えてみてください。

① このイベントの目的は何ですか?

長寿をお祝いしたいのか?
特別な体験を届けたいのか?
ご家族も含めて楽しみたいのか?

目的が違えば、選ぶ内容も変わります。

② 何人くらいの利用者様が楽しめますか?

一部の方だけでなく、見るだけでも楽しめる方を含めて考えてみます。

③ 職員の企画・準備時間はどのくらい減らせますか?

外部に依頼することで、どこまで施設側の負担を軽くできるのか確認します。

④ 普段のレクにはない「特別感」がありますか?

年に一度の敬老会なら、「今日はいつもと違う」と感じられる価値も大切です。

⑤ イベント後にも活かせますか?

利用者様との会話、ご家族への報告、施設内広報など、その後につながる体験になっているかを考えます。

この5つに照らして考えると、単純な価格比較ではなく、「自施設にとっての価値」で判断しやすくなります。
 


室内サーカスの場合はどう考える?

私がご紹介している高齢者施設向けの室内サーカス型レクリエーションも、基本料金は5万円からです。

その特徴は、単にショーを見るだけではなく、「見る楽しさと、参加する楽しさを組み合わせられること」にあります。
 

利用者様全員が同じことをする必要はありません。
 

見る。
拍手する。
笑う。
少し体験してみる。

それぞれの形で一緒の時間を楽しむ。
 

敬老会のように、身体状況の異なる多くの方が集まるイベントでは、こうした参加の幅は一つのメリットになると考えています。
 

とはいえ、施設によって条件は違います。

だからこそ、「サーカスをやるかどうか?」から考えるのではなく、「今年の敬老会で、どんな時間を利用者様に届けたいのか?」から考えることをおすすめしています。
 


5万円を見る前に、まず「目的」を見る

「5万円は高いですか?」と聞かれたら、私は、「何を実現したいかによります。」と答えます。
 

普段のレクとして考えれば、高く感じるかもしれません。
 

一方、
 

年に一度の敬老会で、
多くの利用者様が一緒に楽しみ、
職員の準備負担を抑え、
いつもとは違う特別な時間を届けたい。
 

という目的であれば、検討する価値はあると思います。
 

大切なのは、「金額からイベントを選ぶのではなく、目的から予算を考えること。」

これが、敬老会の費用対効果を考える一つのポイントではないでしょうか?
 


施設長向け「5万円の特別レク」判断チェック

候補となる外部レクが見つかったら、次の項目を確認してみてください。

  • 敬老会で実現したいことが明確になっている。

  • 多くの利用者様がそれぞれの形で楽しめそう。

  • 職員の企画・準備負担を抑えられる。

  • 日常レクとは違う特別感がある。

  • 金額だけでなく、得られる体験まで含めて比較している。

  • 他の施設との差別化が図りたい。

3つ以上チェックがつくなら、一度具体的に内容と見積もりを比較してみてもよいと思います。
 


「秋の施設イベント30分無料相談」のご案内

「5万円をかける価値があるのか判断できない。」

「うちの規模なら、どんなイベントが合うのだろう。」

「敬老会に何か特別なことをしたいけれど、予算とのバランスで迷っている。」


そんな施設様を対象に、

秋の施設イベント30分無料相談

を行っています。
 

利用者様の人数、身体状況、会場、ご予算、職員体制などを伺いながら、「その施設では、何にお金をかけると最も価値が生まれるのか?」

を一緒に整理します。
 

室内サーカスありきのご相談ではありません。
 

まずは、今年の敬老会や秋イベントで何を実現したいのかから、一緒に考えます。
 

キャリア&ライフプラントータルサポート
代表 山岸 博幸
TEL:090-3903-8408
HP:https://career-life.org/

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2026年08月14日 17:54

第6回 「見えているのに、見つけられない」ってどういうこと?

第6回

「あれ、メガネがない」
 

そう言いながら、テーブルの上を何度も探している。

でも、メガネは目の前に置いてある。
 

家族からすれば、
 

「そこにあるじゃない」

「目の前にあるよ」
 

と思うような場面です。
 

あるいは、「鍵がない」と言って家の中を何度も探している。
 

でも、鍵はいつもの場所に置いてある。
 

こうした場面に出会うと、周囲の人はつい、
 

「ちゃんと見て」

「さっきからそこにあるよ」

「どうして分からないの?」
 

と言いたくなるかもしれません。
 

でも、ここで少しだけ立ち止まって考えてみたいのです。
 

本人には、本当に私たちと同じように見えているのでしょうか?
 


「目に入っている」と「見つけられる」は同じではない

私たちは普段、「見えているのだから、分かるはず」と思っています。
 

けれども、物を見るという行為は、単に目に映すだけではありません。
 

たくさんの情報の中から必要なものに気づき、
 

「これはメガネだ」

「これは自分の鍵だ」
 

と認識し、目的のものとして見つける。
 

私たちは、こうしたことをほとんど意識せずに行っています。
 

認知症のある方の場合、このような情報の整理や認識が難しくなることがあります。
 

つまり、「目には入っているのに、探しているものとして気づけない。」
 

そんなことが起こる場合があるのです。
 


もし、自分だったらどう感じるでしょうか?

想像してみてください。
 

あなたは確かにここに置いたはずの鍵を探しています。
 

テーブルを見る。

棚を見る。

バッグの中を見る。
 

でも見つからない。
 

家族からは、「目の前にあるじゃない」と言われます。
 

もう一度見る。

それでも分からない。
 

さらに、「どうして分からないの?」と言われる。
 

もし自分だったら、どんな気持ちになるでしょうか?
 

「自分がおかしくなってしまったのだろうか?」

「どうして見つけられないんだろう...。」

「ちゃんと探しているのに...。」
 

そんな不安や焦りを感じるかもしれません。
 

場合によっては、恥ずかしさや苛立ちにつながることもあるでしょう。
 

周囲から見れば、「探し方が悪い人」に見える。
 

でも本人側から見れば、「見つけられずに困っている人」なのかもしれません。
 

これは、これまでこの連載で繰り返し考えてきた視点でもあります。
 


「もっとよく見て」では解決しないこともある

家族としては、「ほら、ここ」と教えてあげたくなります。
 

もちろん、それで本人が気づけることもあります。
 

でも、「ちゃんと見れば分かるでしょう」と繰り返すだけでは、うまくいかない場合もあります。
 

なぜなら、本人は「見ようとしていないのではなく、見つけにくい状態にある」可能性があるからです。
 

例えば、
 

テーブルの上にたくさんの物が置いてある。

模様の多いクロスの上に鍵が置いてある。

周囲にいろいろな色や形がある。
 

そんな状況では、探している物が周囲の情報に紛れてしまうことがあります。
 

私たちにとっては簡単な状況でも、本人にとっては、「どれを見ればいいのか分からない世界」になっているのかもしれません。
 


「探す力」を試すより、「見つけやすくする」

そこで、発想を少し変えてみます。
 

「本人が見つけられるかどうか?」を試すのではなく、「どうすれば見つけやすくなるだろう?」と考えてみるのです。


例えば、
 

いつも使う物の置き場所を決める。

テーブルの上をできるだけ整理する。

周囲とはっきり区別できる場所に置く。
 

一度にたくさんのことを伝えず、「ここにありますよ」とゆっくり示す。
 

本人と一緒に探す。
 

ほんの少し環境や伝え方を変えるだけで、本人自身が見つけられることもあります。
 

大切なのは、
 

「できないから代わりに全部やってしまう」ことでも、「できるまで何度もやらせる」ことでもありません。
 

本人ができる形を一緒に探していくことではないでしょうか?
 


私たちの「当たり前」が、本人にも当たり前とは限らない

今回のテーマは、「見えているのに、見つけられない」でした。
 

これは少し不思議に感じるかもしれません。
 

でも、「認知症世界の歩き方」を考えていくときに、とても大切なのは、

「私たちの当たり前を、そのまま本人の当たり前だと思わないこと」だと私は感じています。
 

「見えているんだから分かるはず」

「ここにあるんだから見つかるはず」

「さっき説明したんだから覚えているはず」
 

私たちは無意識のうちに、自分の世界を基準にして相手を見ています。
 

でも、本人が生きている世界から考えてみると、「なるほど、だから困っていたのか」と見え方が変わることがあります。
 


「どうして分からないの?」から「どう見えているんだろう?」へ

認知症のある方への関わりには、一つの正解があるわけではありません。
 

認知症の症状や困りごとの現れ方も、人によって違います。
 

だからこそ、「認知症だからこうだ」と決めつけるのではなく、「この人には、今この場面がどう見えているんだろう?」と想像してみる。
 

その問いを持つだけでも、私たちの言葉や関わり方は少し変わってくるのではないでしょうか?
 

「どうして見つけられないの?」ではなく、「どうすれば見つけやすくなるだろう?」へ。
 

相手を変えようとする前に、私たちの見方を少し変えてみる。

それも、認知症のある方とともに暮らしていくための大切な一歩なのだと思います。
 


次回は「時間が分からない世界」を旅してみます

私たちは毎日、
 

「あとで」

「さっき」

「明日」

「10時になったら」
 

と、時間を当たり前のように使っています。
 

でも、もしその「時間の感覚」が分かりにくくなったとしたら?
 

次回は、「時間が分からない世界」で暮らすということを一緒に考えてみたいと思います。

認知症世界の旅は、まだ続きます。
 


9月27日「認知症世界の歩き方」実践ワークショップを開催します

このブログ記事では文章を通して、「本人にはどんな世界が見えているのだろう?」ということを一緒に考えています。
 

9月27日には、「認知症世界の歩き方」公認ファシリテーター(旅のガイド)として、実践ワークショップを開催します。
 

認知症について「教えてもらう」だけではなく、参加者のみなさんと一緒に、本人が生きている世界を想像し、考え、対話していく時間です。
 

ご家族に認知症のある方はもちろん、医療・介護・福祉に関わる方、地域で認知症について考えてみたい方、そして「まだ自分には関係ない」と思っている方にも参加していただければと思っています。
 

※認知症の症状や困りごとの現れ方には個人差があります。本記事は、特定の方の状態を一律に説明するものではありません。

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2026年08月12日 14:46

【第5回】親が元気なうちに準備することは、親を急かすことではない

第5回

さいたま市で親の介護が心配になったら読む話

急な入院・介護で家族が慌てないためのやさしい準備

「親が元気なのに、介護や終活の話をするのは早すぎるのではないか?」
 

そう感じる方は少なくないと思います。
 

まだ自分で買い物に行ける。
病院にも一人で通えている。
友人とも出かけている。
趣味も楽しんでいる。
 

そんな親を前にして、
 

「もし介護が必要になったらどうする?」
「どこの病院に通っているの?」
「何かあった時、誰に連絡すればいい?」
「終活のことも少し考えない?」
 

とは、なかなか言い出しにくいものです。
 

もしかすると、
 

「縁起でもない」
「まだそんな年じゃない」
「早く死ねと言われているみたいで嫌だ」
 

と受け取られてしまうかもしれない。

そんな不安もあるでしょう。
 

でも、親が元気なうちに準備することは、親を急かすことではありません。
 

むしろ私は、親が元気だからこそできる準備があると思っています。

元気な今だからこそ、本人の希望を聞ける

介護が必要になってからでは、家族が本人の希望を十分に聞けないことがあります。
 

急な入院で話す余裕がない。

認知症が進み、自分の希望をうまく言葉にできない。

体力が落ち、考えること自体が負担になる。
 

そうなってから、
 

「お母さんはどうしたい?」
「家で暮らしたい?施設がいい?」
「もしもの時は誰に連絡してほしい?」
「どこまで治療を望んでいる?」
 

と聞いても、十分な答えが得られないことがあります。
 

だからこそ、元気な今のうちに、
 

「これからどんな暮らしをしたいのか?」
「何を大切にしているのか?」
「誰に頼りたいのか?」
 

を少しずつ聞いておくことが大切です。
 

これは親の人生を決めるためではありません。
 

親自身の希望を、家族が知っておくための会話です。

いきなり「終活しよう」と言わなくても大丈夫

終活という言葉は、まだまだ重く感じる方が多い言葉です。
 

ですから、無理に「終活」という言葉を使わなくてもかまいません。
 

たとえば、
 

「最近、病院はどこに通ってるの?」

「何かあった時に連絡するなら、誰がいい?」

「お薬手帳って、どこに置いてあるの?」

「これからもこの家で暮らしたい?」

「もし入院した時に必要なものって、どこにある?」
 

そんな日常会話からで十分です。
 

大切なのは、終活という名前をつけることではありません。
 

家族が少しずつ親のことを知っていくこと。
 

それ自体が、立派な介護準備です。

親に聞く前に、自分のことを話してみる

親に介護や終活の話を切り出すのが難しい時には、まず自分の話から始める方法もあります。
 

たとえば、
 

「最近、自分も何かあった時の連絡先を整理してるんだ」

「スマホの中に大事な情報がいっぱい入っているから、家族が困らないようにしておこうと思って」

「私も保険証とか大事な書類の場所をまとめようと思ってる」
 

と、自分の準備について話してみる。
 

そのうえで、「お母さんはどうしてる?」と聞けば、会話が自然になります。
 

親だけに準備を求めると、親は「年寄り扱いされた」と感じるかもしれません。
 

でも、「家族みんなで備える」という姿勢なら、受け止め方も変わります。

準備とは「決めること」ではなく「知っておくこと」

介護準備というと、
 

「介護施設を決めなければ」
「財産のことを全部確認しなければ」
「遺言を書いてもらわなければ」
 

と考える方もいます。
 

でも、最初からそこまで決める必要はありません。
 

まずは、
 

・どこの病院に通っているか?
・どんな薬を飲んでいるか?
・保険証や大切な書類はどこにあるか?
・緊急時に誰に連絡してほしいか?
・今の暮らしで困っていることはないか?
・これからも大切にしたいことは何か?
 

を知っておくだけでも十分です。
 

介護準備の最初の一歩は、決めることではなく、知ること。
 

そこから始めてみてください。

「何かあってから」では、話す余裕がなくなる

親の介護について考える時、多くの家族が「何かあったら、その時考えればいい」と思います。
 

もちろん、それも一つの考え方です。
 

ただ、何かが起きた時には、想像以上に余裕がありません。
 

急な入院。
仕事の調整。
病院とのやり取り。
きょうだいへの連絡。
介護保険の手続き。
退院後の生活の検討。
 

次から次へと判断を求められます。
 

そんな時に、
 

「親はどうしたかったんだろう」
「誰に相談すればいいんだろう」
「書類はどこにあるんだろう」
 

というところから始めるのは、とても大変です。
 

だからこそ、何も起きていない今に、少しだけ話しておく。
 

それだけでも、家族の負担は変わります。

今だから話せることがある

親が元気な今は、一緒に笑いながら話せます。
 

「そんなことまだ考えてないよ」と言われても、「じゃあ、また今度ね」と笑って終えることができます。
 

一度で全部聞く必要はありません。
 

少し話す。
また別の日に話す。
何かのきっかけで思い出したら聞いてみる。
 

そんな形でよいのです。
 

介護や終活の準備は、一度の家族会議で完成させるものではありません。
 

日常の会話の中で少しずつ作っていくものだと思います。

地域の相談先も、元気なうちに知っておく

親のことについて、家族だけでは分からないこともあります。
 

そんな時に、早めに知っておきたいのが、地域の相談窓口です。
 

さいたま市では、シニアサポートセンターが、高齢者やその家族の相談窓口になっています。
 

介護が始まってからだけではなく、
 

「最近、親の様子が少し気になる」
「どんな準備をしておけばいい?」
「まだ元気だけど、一人暮らしが少し心配」
 

という段階でも、相談先を知っておくことは大切です。
 

困ってから探すのではなく、困る前に知っておく。
 

これも立派な介護準備です。

親を急かすのではなく、親の人生を尊重するために

介護準備や終活は、親の人生を急がせるものではありません。
 

むしろ逆です。
 

親が自分らしく暮らせる時間をできるだけ長くするために。

本人の希望を大切にするために。

家族が勝手に決めなくて済むようにするために。
 

必要な準備を、元気なうちから少しずつ始めておく。
 

それが本来の介護準備や終活なのだと思います。

今日からできる小さな一歩

今日は、親に何かを決めてもらう必要はありません。
 

まずは、こんな一言から始めてみてはいかがでしょうか。
 

「最近、困っていることない?」

「病院って今どこに通ってるの?」

「何かあった時、誰に連絡してほしい?」
 

それだけで十分です。
 

そして、もし親が話したくなさそうなら、その日はそこで終わりにする。
 

また話せそうな時に話せばよいのです。
 

親が元気なうちに準備することは、親を急かすことではありません。
 

今だから話せる。
今だから聞ける。
今だから一緒に考えられる。

 

その小さな会話が、将来、親と家族の両方を助けてくれるかもしれません。
 

介護準備は、親を急かすためではなく、親の希望を大切にするために。
 

終活は、人生の終わりを考えるだけではなく、これからを安心して暮らすために。
 

まずは、家族のやさしい会話から始めてみませんか?

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2026年08月11日 17:35

第5回本人の世界を想像すると、対応が変わる

第5回

見えている景色は同じではない

私たちは普段、
 

「ここは自宅」
「この人は家族」
「これはトイレのドア」
「今からお風呂に入る」
「今日は病院へ行く日」
 

といったことを、ごく自然に理解しながら生活しています。
 

ところが、認知症のある方にとっては、同じ場所にいて、同じものを見ていても、その意味が私たちと同じようにはつながらないことがあります。
 

家族から見れば、いつもの自宅。

でも本人には、「ここはどこだろう?」と感じられているかもしれません。
 

家族から見れば、いつもの娘。

でも本人には、「この人は誰だろう?」と戸惑う瞬間があるかもしれません。
 

そこで大切にしたいのが、「本人には、今この世界がどのように見えているのだろう?」と想像してみることです。
 

本人の世界を少し想像できるようになると、「どうして分からないの?」という気持ちから、「それなら不安になるよね」という理解へと、私たちの対応も変わっていきます。
 


私たちには「いつもの場所」でも、本人には違って見えることがある

たとえば、長年暮らしてきた自宅。

家族にとっては、どこに何があるか分かりきった場所です。
 

しかし認知症のある方は、場所や状況を把握することが難しくなり、
 

「ここはどこ?」「私の家に帰りたい」と言うことがあります。
 

家族からすると、「何十年も住んできた自分の家なのに...」と驚くでしょう。
 

そして、「ここがあなたの家でしょ!」と説明したくなります。
 

それでも本人が納得しないと、「どうして分からないの?」という苛立ちが生まれるかもしれません。
 

でも、少し視点を変えてみます。
 

もし自分が目を覚ました時、見覚えがあるような、ないような場所にいて、周囲の人から、「ここがあなたの家ですよ!」と言われたらどうでしょう。
 

頭ではそう言われても、自分の感覚として「ここが家だ!」と感じられなければ、不安になるのではないでしょうか?
 

本人も同じなのかもしれません。
 

大切なのは、「ここが家だと分からせること」だけではなく、「ここが安心できる場所だと感じてもらうこと」なのだと思います。
 


「分からない」ことは、想像以上に怖い

私たちは日常生活の中で、多くのことを予測しながら行動しています。
 

このドアを開ければトイレがある。
この人について行けば診察室に行ける。
服を脱ぐのは、これからお風呂に入るから。
 

先の出来事がある程度分かるから、安心して行動できます。
 

ところが、認知症のある方にとって、こうした「意味のつながり」が分かりにくくなることがあります。
 

たとえば、お風呂に入ってもらおうとした時。
 

家族には、「いつもの入浴」です。
 

でも本人には、
 

突然服を脱ぐように言われた。
知らない場所へ連れていかれる。
何をされるのか分からない。
 

そんな状況に感じられているかもしれません。
 

もしそうなら、「お風呂くらい入ればいいのに」という家族の見方とは、まったく違う世界です。

本人が拒否するのは、「わがままだから」ではなく、「何が起こるか分からず怖いから」なのかもしれません。
 


同じ言葉でも、伝わり方は同じとは限らない

家族が、「早くして」と言ったとします。
家族としては、「あと10分で出掛けるから少し急いでほしい」という意味です。
 

でも本人には、
 

なぜ急がなければならないのか?
どこへ行くのか?
今、何をすればよいのか?
 

それらが十分につながっていないことがあります。
 

すると、「急いで」という言葉だけが強く感じられ、不安や混乱につながることがあります。
 

そんな時は、「早くして」ではなく、
 

「10時になったら病院へ行きます。」

「まず、この上着を着きましょう!」

「そのあと一緒に玄関へ行きましょう!」
 

というように、今必要なことを一つずつ伝える方が分かりやすい場合があります。
 

本人が理解できないのではなく、「私たちの伝え方が、本人の世界に合っていない」可能性も考えてみたいところです。
 


「何もないのに怖がっている」と決めつけない

認知症のある方が、
 

「怖い」
「誰かいる」
「ここにはいたくない」
 

と訴えることもあります。
 

周囲には、その理由が分からないことがあります。
 

すると、
 

「何もないよ」
「誰もいないよ」
「怖がることなんてないでしょう」
 

と言ってしまいがちです。
 

しかし本人が感じている不安は、本物です。
 

本人に見えているもの、聞こえているもの、思い出していること、その場の雰囲気などによって、私たちとは違う意味づけがされていることがあります。
 

その時、「何もないから大丈夫」と否定するより、
 

「怖かったんですね。」

「一緒にいますよ。」

「少しこちらへ移動しましょうか?」
 

と、まず安心につなげる。
 

原因を探すのは、そのあとでも構いません。
 

事実を訂正することより、今感じている不安を受け止める。
 

これも、本人の世界を想像した対応の一つです。
 


「できない」のではなく、「分かりにくい」のかもしれない

たとえば、トイレに行けなくなった時。

家族は、「トイレの場所まで分からなくなった。」と思うかもしれません。
 

しかし、
 

ドアが他の部屋と同じで見つけにくい。
表示が小さい。
夜になると廊下が暗い。
途中に物が多く、目的地が分かりにくい。
 

といった環境の影響も考えられます。
 

「本人ができなくなった」と考えるだけでなく、「本人にとって分かりにくい環境になっていないか?」を見直してみる。
 

トイレの表示を大きくする。
入口を分かりやすくする。
通路を整理する。
必要な場所に目印を付ける。
 

本人を変えようとするのではなく、環境の方を本人に合わせる。
 

そうすることで、まだ自分でできることが増える可能性があります。
 


本人の「昔の世界」が、今につながっていることもある

「会社に行かなくちゃ。」

「子どもを迎えに行かなくちゃ。」

「ご飯を作らないと主人が帰ってくる。」
 

今の状況とは合わないことを話す認知症の方もいます。
 

家族は、
 

「もう仕事は辞めたでしょう。」

「子どもはもう50歳だよ。」

「お父さんはもう亡くなったでしょう。」
 

と事実を伝えたくなります。
 

しかし、その言葉の背景には、
 

長年働いてきた責任感。
子どもを守ってきた母親としての役割。
家族の食事を作ってきた生活習慣。
 

その人が長い人生の中で大切にしてきたものがあるのかもしれません。
 

そう考えると、「間違ったことを言っている」だけではなく、「その人にとって大切だった世界を、今も生きているのかもしれない。」と見ることができます。
 

正すことよりも、「ずっと家族のために頑張ってきたんですね!」と、その人の人生そのものを受け止める。
 

そこから生まれる安心もあります。
 


想像することは、決めつけることではない

ここで一つ、大切にしたいことがあります。
 

「本人の世界を想像する。」といっても、「きっとこう思っているはずだ。」と決めつけることではありません。
 

本当の気持ちは、本人にしか分かりません。
 

だからこそ、
 

「もしかしたら不安なのかな?」

「何か分かりにくいことがあるのかな?」

「どうすれば安心できるかな?」
 

と考えてみる。
 

そして、本人の表情や言葉、行動を見ながら確かめていく。
 

想像することは、答えを決めることではなく、本人を理解するための仮説を持つこと。
 

この姿勢が大切なのだと思います。
 


家族と本人では「見えている景色」が違う

家族から見れば、「また同じことをしている。」かもしれません。
 

本人から見れば、「今、初めて困っている。」のかもしれません。
 

家族から見れば、「何も怖いことはない」場所でも、本人には、「何が起こるか分からない場所」なのかもしれません。
 

家族から見れば、「簡単なこと」でも、本人には、「手順が見えない難しいこと」になっているかもしれません。
 

同じ場所にいるからといって、同じ世界を見ているとは限らない。
 

このことに気づくと、「どうしてできないの?」という問いが、「どうすれば分かりやすくなるだろう?」に変わります。
 

「どうしてこんなことを言うの?」という問いが、「本人には、今どう見えているのだろう?」に変わります。
 

そして、その問いの変化が、私たちの対応を変えてくれます。
 


本人の世界を知ろうとすることから、寄り添いは始まる

認知症の方への対応には、すべての人に当てはまる一つの正解があるわけではありません。
 

同じ認知症でも、その人の人生、性格、環境、体調、家族関係によって感じ方は違います。
 

だからこそ大切なのは、「認知症だからこうだ!」と決めつけるのではなく、「この人の場合は、どうなのだろう?」と考え続けることです。
 

何が好きだったのか?
どんな仕事をしてきたのか?
どんな生活を大切にしてきたのか?
何を怖がるのか?
何をすると安心するのか?
 

その人を知ることが、本人の世界を理解する手掛かりになります。
 

認知症を見るのではなく、認知症とともに暮らしている「その人」を見る。
 

それが、本当の意味で寄り添うことにつながるのではないでしょうか?
 


今日の小さな一歩

認知症のある方の言動を見て、「どうして?」と思った時。
 

すぐに注意したり、正したりする前に、ほんの少しだけ想像してみてください。
 

「本人には、今この場面がどう見えているのだろう?」
 

場所が分からないのかもしれない。
次に何が起きるか分からず怖いのかもしれない。
言葉の意味がつながっていないのかもしれない。
昔の大切な記憶の中にいるのかもしれない。
 

答えが分からなくても構いません。
 

本人の世界を想像してみようとすること。
 

その一歩だけでも、「困った人への対応」から、「困っている人への寄り添い」へと、私たちの関わり方は少し変わっていくのだと思います。
 

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2026年08月10日 19:45

【第2回】あなたの老後資金計画に「親の介護費用」は入っていますか?

第2回

全20回連載 
「老後資金を増やす前に 介護で失わない家計のつくり方」

親の介護、自分たちの介護、仕事とお金―50代・60代が今から考えたい20の現実

■老後資金は考えていても、「親の介護費用」は考えていない?

50代、60代になると、自分たちの老後について考える機会が増えてきます。
 

「年金はいくらもらえるのだろう?」

「退職金はいくら残るだろう?」

「老後の生活費はいくら必要だろう?」

「NISAなどでもう少し資産を増やした方がよいだろうか?」
 

こうしたことを考えたり、老後資金のシミュレーションをしたりしたことがある方も多いと思います。
 

ところが、ここで一つ質問があります。
 

その老後資金計画に、「親の介護費用」は入っているでしょうか?


さらに言えば、自分の両親だけではありません。
 

結婚している方であれば、
 

・自分の父親
・自分の母親
・配偶者の父親
・配偶者の母親
 

最大4人の親について、介護が必要になる可能性があります。
 

もちろん、4人全員に介護が必要になるとは限りません。
 

また、親の介護費用をすべて子どもが負担するという意味でもありません。
 

しかし、50代、60代のライフプランを考えるのであれば、「親の介護によって、自分たち夫婦のお金と働き方に何が起こる可能性があるのか?」という視点は、最初から入れておく必要があると私は考えています。

■介護は、決して一部の家庭だけの問題ではありません

総務省の「令和4年就業構造基本調査」によると、2022年時点で介護をしている人は約629万人。

そのうち、仕事を持っている人は約365万人です。
 

つまり、多くの人が、「仕事をしながら家族の介護をする。」という状況に置かれています。
 

私たちが老後資金について考える50代・60代は、同時に親の高齢化が進む時期でもあります。
 

自分たちの老後を準備しなければならない。

でも、親の介護にも対応しなければならない。
 

ここに、ミドルシニア世代特有の難しさがあります。
 

【引用・参考】
総務省統計局「令和4年就業構造基本調査 結果の概要」
https://www.stat.go.jp/data/shugyou/2022/pdf/kgaiyou.pdf


■「親のお金だから大丈夫」とは限らない

本来、親の介護に必要なお金は、まず親自身の年金や預貯金などから支払うことを基本に考えることが大切です。
 

しかし、実際に介護が始まったとき、
 

「親の年金額を知らない。」

「預貯金がどのくらいあるのか分からない。」

「どこの銀行に口座があるのか知らない。」

「生命保険に入っているのか分からない。」

「施設に入ることになったら、いくらまでなら払えるのか分からない。」
 

という家庭は珍しくありません。
 

親が元気なうちは、お金のことを聞くのに抵抗を感じる方も多いでしょう。
 

しかし、何も分からない状態で突然介護が始まると、目の前の支払いを子どもが一時的に立て替えることも起こり得ます。

交通費、入院用品、介護用品、施設探し、実家との往復...。
 

一つ一つはそれほど大きな金額ではなくても、長期間続くことで自分たちの家計に影響していきます。

■介護費用は「月々のサービス利用料」だけではありません

生命保険文化センターの2024年度調査によると、介護経験者が負担した介護の一時的な費用は平均47.2万円、月々の費用は平均9.0万円でした。

介護期間は平均4年7カ月となっています。
 

また、介護を行った場所によっても費用は異なり、月々の平均費用は、
 

在宅 5.3万円
施設 13.8万円
 

となっています。
 

ただし、この数字を見て、
 

「9万円×55カ月だから約500万円」

「それが親4人だから約2,000万円」
 

などと単純に計算することは適切ではありません。
 

介護期間、要介護度、在宅か施設か、親本人の年金や資産、公的制度の利用状況などによって、実際の負担は大きく異なるからです。
 

重要なのは、「平均でいくらかかるか?」だけではありません。
 

自分の家庭では、「誰に介護が必要になったとき、誰のお金を使い、どのように対応するのか?」を考えておくことです。


【引用・参考】
公益財団法人 生命保険文化センター
「介護にはどれくらいの費用・期間がかかる?」
https://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/1116.html

■問題は「介護費用」だけではなく「自分の収入」です

ここが、私が特にお伝えしたいところです。
 

親の介護による家計への影響を考えるとき、「介護にいくら払うのか?」ばかりを考えてはいけません。
 

もう一つ考えなければならないのが、「介護によって、自分の収入がどう変化するか?」です。
 

例えば、50代の会社員が親の介護に直面したとします。
 

親の通院同行のために有給休暇を取る。

ケアマネジャーとの打ち合わせのために早退する。

急な入院で仕事を休む。

遠距離介護で週末ごとに実家へ帰る。

残業や出張が難しくなる。

転勤を断る。

管理職を続けることが難しくなる。
 

そして最悪の場合、「もう仕事と介護を両立できない。」と会社を辞めてしまう。
 

すると、介護費用という「支出の増加」と、給与という「収入の減少」が、同時に起こることになります。


これが、親の介護を老後資金計画に入れておかなければならない最大の理由の一つです。

■自分の老後資金を準備する時期と、親の介護が重なる

50代は、本来であれば老後資金を最後に積み上げていきたい大切な時期です。
 

住宅ローンを終わらせる。

子どもの教育費が一段落する。

退職までの10年ほどで預貯金を増やす。

NISAなどを活用して資産形成を続ける。

定年後の働き方について考える。
 

ところが、その大切な時期に親の介護が始まり、「お金を積み立てる時期」から、「お金を取り崩す時期」へ突然変わってしまう可能性があります。
 

さらに、働き方まで変われば、老後資金計画そのものを見直さなければならなくなります。
 

だから私は、親の介護を「親だけの問題」として考えるのではなく、「自分たち夫婦のライフプランの一部」として考える必要があると思っています。

■介護する側も高齢化しています

2025年の厚生労働省「国民生活基礎調査」では、要介護者等と同居する主な介護者について、「要介護者と介護者がともに60歳以上」という組み合わせが79.0%でした。

「ともに65歳以上」も61.9%です。
 

介護する側自身も高齢化しているということです。

親の介護が長期化すれば、「親の介護をしていたら、自分自身も高齢者になっていた」ということも十分に考えられます。
 

そして親の介護が終わった後には、今度は、
 

自分自身の介護。

配偶者の介護。
 

という問題が待っているかもしれません。
 

だからこそ、老後資金計画を考えるときには、「自分たち夫婦の生活費」だけではなく、親の介護から自分たちの介護までを、一つの時間軸で考えていく必要があります。
 

【引用・参考】
厚生労働省
「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況 介護の状況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa25/dl/14.pdf

■大切なのは「親4人分のお金を準備すること」ではありません

ここまで読むと、「親4人の介護費用まで自分たちで準備しなければいけないのか?」と不安になる方もいるかもしれません。
 

そうではありません。
 

私がお伝えしたいのは、「子どもが親4人分の介護費用を貯めましょう。」という話ではありません。

むしろ逆です。
 

親の介護によって自分たちの老後資金を失わないために、親が元気なうちに、
 

・親自身の年金や資産を確認する
・どこで暮らしたいのかを聞く
・介護が必要になったときの希望を聞く
・兄弟姉妹の役割を話し合う
・費用を誰がどこまで負担するのか考える
・自分の勤務先の介護支援制度を確認する
 

こうした準備をしておくことが重要なのです。
 

つまり、「介護費用を準備する」だけではなく、「介護で自分たちの家計を壊さない仕組みを準備する」ということです。

■私自身、両親の介護に直面して感じたこと

私自身、両親の介護に直面して、改めて感じたことがあります。
 

親が元気なときには、「そのときになったら考えればいい」と思ってしまいがちです。

しかし、実際に入院や介護が始まると、短期間にさまざまな判断を求められます。
 

病院への対応。

介護認定。

介護サービス。

住まい。

お金。

仕事の調整。

家族との役割分担。
 

こうしたことが一度にやってきます。
 

その状態になってから、
 

「お父さん、預金はいくらあるの?」

「お母さん、施設に入りたい?」

「兄弟で誰がいくら負担する?」
 

と話し合うのは、簡単ではありません。
 

だからこそ、「まだ介護なんて必要ない」と思える時期に話を始めることが、とても大切なのだと感じています。

■今日からできること――「4人の親」を書き出してみる

今日、ぜひ一度やっていただきたいことがあります。
 

紙を1枚用意して、
 

自分の父
自分の母
配偶者の父
配偶者の母
 

を書き出してみてください。
 

そして、それぞれについて、
 

① 年齢

② 現在の健康状態

③ 一人暮らしか、夫婦暮らしか?

④ 年金や預貯金について家族が把握しているか?

⑤ 介護が必要になった場合、誰が最初に対応しそうか?

⑥ 在宅・施設など、本人の希望を聞いたことがあるか?
 

を確認してみてください。
 

すべて「分からない」でも構いません。
 

大切なのは、「自分が何を知らないのか?」に気づくことです。
 

それが、介護準備のスタートになります。

■老後資金を増やす前に、介護で失わない仕組みをつくる

老後資金計画というと、
 

「いくら貯めるか?」

「何%で運用するか?」
 

という話になりがちです。
 

もちろん、それも大切です。
 

しかしその前に、
 

親の介護による支出。

介護による自分の収入減少。

そして、その後に訪れる自分と配偶者の介護。
 

ここまで含めて考えて初めて、本当の意味での老後資金計画になるのではないでしょうか?
 

老後資金を増やす前に、介護で失わない仕組みをつくる。

この視点を、50代・60代の方にぜひ持っていただきたいと思っています。

■次回予告

第3回は、「親4人、自分たち夫婦2人――最大6人の介護をどう考えるか?」をテーマにお伝えします。

「親の介護が終われば安心」というわけではありません。

その先にある自分自身と配偶者の介護まで含めて、人生後半の介護をどのように捉えればよいのかを考えていきます。
 

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2026年08月09日 17:38

想定外の介護|第5回退院が見えてきた父に、朝・昼・晩3回のインスリン注射が必要になった

第5回

病気は落ち着いたのに、自宅に戻れなくなった想定外

※この記事は、私自身の父の介護経験をもとに、本人の尊厳と個人情報に配慮しながら構成しています。
 治療内容や経過はあくまで父の場合であり、病状や治療方法は一人ひとり異なります。
 


「ようやく退院できる」——そう思った矢先でした

父が間質性肺炎で入院した時のことです。

入院当初は、もちろん父の病状が一番の心配でした。
 

このまま良くなるのだろうか?
どのくらい入院するのだろうか?
また以前のような生活に戻れるのだろうか?
 

そんなことを考えながら、病状の経過を見守っていました。
 

そして治療が進み、間質性肺炎の状態が落ち着いてきました。
 

やがて、退院の話も出始めました。
 

私は、「良かった!これで父はようやく家に帰れる。」と、正直ほっとしました。
 

ところが、その安心は長く続きませんでした。

退院後の生活について話を進めていく中で、思ってもいなかった問題が出てきたのです。
 


入院前は、糖尿病を内服薬で管理していた

父には糖尿病の持病がありました。

ただ、間質性肺炎で入院する前までは、糖尿病については内服薬で管理していました。
 

ですから私の中では、「糖尿病は以前からある持病」という認識はあっても、それが父の退院先を左右するような問題になるとは考えていませんでした。
 

ところが、間質性肺炎の治療ではステロイド系の薬が使われました。

父の場合、その治療を経て、血糖管理の方法が大きく変わりました。
 

退院後は、朝・昼・晩、1日3回のインスリン注射が必要になったのです。
 

私は、その話を聞いて戸惑いました。
 

間質性肺炎は落ち着いた。
退院も見えてきた。
 

なのに今度は、別の問題が出てきた。
 

しかも、それまでとはまったく違う生活上の問題でした。
 


「1日3回の注射」が、自宅に帰ることを難しくした

朝。

昼。

晩。
 

毎日3回のインスリン注射。
 

この「3回」という言葉を聞いた時、私は初めて現実を考えました。
 

自宅に戻った場合、誰が対応するのか?
朝だけなら、何とかなるかもしれない。
夜だけなら、家族が帰宅してから対応できるかもしれない。
 

しかし、昼があります。
 

私も含め、家族には仕事があります。
 

毎日、朝・昼・晩と父のそばにいて、必要な対応を続けることは、私たち家族にとって現実的ではありませんでした。
 

それまで私は、「病気が治まれば退院して、自宅に戻る。」という流れを、どこか当たり前のように考えていました。
 

でも、その当たり前が崩れました。
 

父は退院できる状態に近づいている。

なのに、自宅には戻せない。
 

この矛盾したような状況が、私には大きな想定外でした。
 


病気が良くなったのに、元の生活には戻れなかった

ここは、今振り返っても強く印象に残っています。
 

「病状が落ち着きました」
 

本来なら、家族にとって嬉しい言葉です。
私もそうでした。
 

でも、病気が良くなることと、以前の生活に戻れることは、同じではありませんでした。
 

父の場合、間質性肺炎そのものは落ち着いてきた。
 

けれど、その治療を経たことで糖尿病の管理方法が変わった。

そして、その新しい医療上の条件によって、自宅での生活が難しくなった。
 

一つの病気を治療する。

その結果、別の持病への対応が変わる。

その変化が、退院後の暮らし方まで変えてしまう。
 

そんなことが起きるとは、私は想像していませんでした。
 


病院のケースワーカーに相談することになった

では、父は退院後、どこで暮らすのか?

ここから、また新しい問題が始まりました。
 

自宅には戻れない。

しかし、病院にはずっと入院していられるわけではない。
 

私は病院のケースワーカーの方に相談しました。
 

父の状態。
糖尿病の管理。
インスリン注射。
家族の生活。
退院後に必要になる支援。
 

そうしたことを一つずつ整理していきました。
 

最終的に、私たち家族にとって現実的な選択肢となったのが、介護付き有料老人ホームへの入居でした。

これも、まったく想像していなかった展開です。
 

入院する前の父は、自宅で生活していました。
 

私も、「病院で治療して、良くなれば家に帰る」と思っていました。
 

それが、入院 → 治療 → 退院 → 自宅ではなく、

入院 → 治療 → 退院 → 介護施設

になったのです。
 

介護施設を探すことになるとは、入院した時には想像すらしていませんでした。
 


「退院」は、必ずしも「家に帰ること」ではない

この経験から、私は「退院」という言葉の受け止め方が変わりました。
 

以前の私は、
 

退院=良くなった
退院=家に帰る
退院=元の生活に戻る
 

というイメージを持っていました。
 

でも、高齢の親の場合、必ずしもそうではありません。
 

病気そのものは治療できても、
 

歩く力が落ちているかもしれない。

排せつに支援が必要になっているかもしれない。

服薬管理ができなくなっているかもしれない。

医療的な対応が増えているかもしれない。

認知面が変化しているかもしれない。
 

そして父のように、持病の管理方法そのものが変わることもある。
 

「退院できます」と言われて初めて、「では、退院した後はどこで、どう暮らすのか?」という、もう一つの現実が始まることがあります。
 


持病があることで、想定外が重なっていく

父には、間質性肺炎になる以前から、糖尿病という持病がありました。
 

今回私が強く感じたのは、高齢の親に複数の病気や持病がある場合、一つだけを見ていてはいけないということです。
 

間質性肺炎がどうなるか?
一命を落とすことはないのか?
 

当初、私の頭の中にあったのは主にそこでした。
 

でも実際には、
 

間質性肺炎を治療する。

治療によって血糖管理が変わる。

インスリン注射が必要になる。

本人(私)だけでは対応が難しい。

家族が在宅で支えることも難しい。

自宅への退院が難しくなる。

退院先として介護施設を探す。
 

と、次の問題がつながっていきました。
 

一つ解決すると、次の問題が出てくる。

それまで想定していなかったことが、次々と現実になる。
 

まさに、この連載のタイトルである「想定外の介護」そのものでした。
 


介護は、病気そのものだけを見ていても分からない

親が入院すると、どうしても病名に目が向きます。
 

肺炎なら肺炎。

骨折なら骨折。

心臓病なら心臓病。

がんならがん。
 

家族は、「その病気が治るか?」を心配します。

もちろん、それは当然です。
 

でも、高齢者の場合には、元々持っている病気、身体機能、認知機能、服薬、生活環境などが複雑に関係していることがあります。
 

そのため、主な病気が落ち着いたからといって、介護の問題まで元に戻るとは限らない。
 

私は父の経験から、そのことを知りました。
 


「良かった」と安心した直後に、次の想定外が来る

介護では、この感覚が何度もあります。
 

病状が落ち着いた。

良かった。
 

施設が決まった。

良かった。
 

状態が安定した。

良かった。
 

そのたびに、家族は少し安心します。
 

ところが、その直後に別の問題が出てくることがあります。
 

父の場合は、「間質性肺炎が落ち着いた」という安心の直後に、「朝・昼・晩3回のインスリン注射が必要」という現実が現れました。
 

そして、その一つの変化が、「自宅へ帰れるかどうか?」という大きな問題につながりました。
 

介護の想定外は、一つの大きな事件として起こるだけではありません。
 

治療の変化。

薬の変化。

できることの変化。

生活場所の変化。
 

それらが連鎖することがあります。
 


もし、あなたの親だったら...

少しだけ、自分の親に置き換えて考えてみてください。
 

親に何か持病はありますか?

どんな薬を飲んでいるでしょうか?

その病気の管理方法が変わったら、自宅で今までと同じように暮らせるでしょうか?

医療的な対応が1日数回必要になったら、誰が対応するでしょうか?

本人が対応できなくなったら、家族だけで支えられるでしょうか?
 

私は父が入院する前、そこまで考えたことはありませんでした。
 

だからこそ、「そんなことまで起こるのか?」と、読者の皆さんには知っておいていただきたいと思っています。
 


病気が落ち着けば元通り——ではなかった

今回の出来事で、私にとって一番の想定外は、インスリン注射そのものではありませんでした。
 

間質性肺炎が落ち着き、ようやく父が自宅に帰れると思った時に、別の持病への対応が変わったことで、自宅に戻れなくなったこと。
 

ここでした。

病気が一つ良くなっても、生活全体が元通りになるとは限らない。
 

一つの治療が、その人の別の病気や暮らし方に影響することがある。
 

そして、その結果として、住む場所まで変わることがある。
 

私は父の介護を経験するまで、その現実を知りませんでした。
 

介護は、一つの出来事ではなく、想定外が次々と起こるものです。
 

しかもその想定外は、本人だけではなく、家族の仕事や生活、そしてこれからの暮らし方まで変えていくことがあります。
 

この連載では、その現実をこれからもお伝えしていきたいと思います。
 

「うちの親は、まだ大丈夫」そう思っている方にこそ、「こんなことも起こるのか?」と、一度知っていただけたらと思っています。
 

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2026年08月08日 19:51

敬老会の外部レクを選ぶとき、施設長が確認したい5つのポイント

連載⑩

レクが変わると、施設が変わる。

「今年の敬老会は、外部の方にお願いしてみようか?」
 

そんな話が出たとき、次に悩むのが、「では、何を基準に選べばいいのか?」ということではないでしょうか?
 

演奏会、マジック、体操、ダンス、地域ボランティア、さまざまなパフォーマンス...。
 

高齢者施設で活用できる外部レクリエーションには、いろいろな選択肢があります。
 

もちろん、
 

「楽しそうだから」
「料金が予算内だから」
 

という理由も大切です。
 

しかし、敬老会のような特別イベントでは、それだけではなく、
 

利用者様に無理なく楽しんでいただけるか?
職員の皆さまに過度な負担がかからないか?
その施設らしい特別な時間になるか?
 

といった視点も必要です。
 

今回は、敬老会の外部レクを検討するときに、施設長や管理者の方に確認していただきたい5つのポイントを整理します。
 


ポイント① 利用者様にとって「安全に楽しめるか」

最初に確認したいのは、やはり安全性です。
 

外部レクの場合、普段施設にいない人が入り、いつもとは違う道具や音、動きが加わります。
 

だからこそ、

  • 会場に必要な広さはどのくらいか?

  • 車椅子の方でも参加できるか?

  • 座ったまま楽しめるか?

  • 使用する道具に危険性はないか?

  • 大きな音や急な動きはないか?

  • 利用者様の状態に合わせて内容を調整できるか?

といったことを、事前に確認しておくことが大切です。
 

「盛り上がる企画」であること以上に、安心して楽しめる企画であること。
 

これは高齢者施設の外部レク選びでは欠かせない条件だと思います。
 


ポイント② いろいろな方が「それぞれの形で参加できるか?」

次に大切なのが、参加しやすさです。
 

介護施設では、利用者様の身体状況や認知機能、その日の体調や気分も一人ひとり違います。
 

そのため、「全員で同じ動きをする」ことだけを前提にしてしまうと、参加しにくい方が出てくる場合があります。
 

私は、
 

見るだけでもいい。
拍手だけでもいい。
笑顔でその場にいるだけでもいい。
興味があれば少し体験してみてもいい。
 

そんな、参加方法に幅のあるレクが、高齢者施設には向いていると思います。
 

外部レクを選ぶ際には、「積極的に参加できない方でも、その場を楽しめるでしょうか?」

と確認してみてください。
 

これは、とても大切な質問です。
 


ポイント③ 職員の「準備と当日の負担」はどのくらいか?

外部レクを依頼したのに、「結局、準備はほとんど施設側だった。」
 

という状態になってしまっては、本来期待したメリットが小さくなってしまいます。
 

事前に確認しておきたいのは、

  • 会場設営はどこまで必要か?

  • 音響設備は施設側で準備するのか?

  • 道具は持参してもらえるのか?

  • 職員は何人程度サポートする必要があるのか?

  • 司会進行は誰が行うのか?

  • 終了後の片付けはどの程度必要か?

などです。
 

外部レクを活用する大きな意味の一つは、職員の皆さまが「運営する人」だけではなく、利用者様と一緒にその時間を過ごしやすくなることだと思います。
 

利用者様の隣で笑う。
普段とは違う表情に気づく。
楽しそうな様子をご家族に伝える。
 

そうした関わりに時間を使えるかどうかも、外部レク選びの大切な視点です。
 


ポイント④ 料金ではなく「費用と得られる価値」を見る

外部レクを比較するとき、当然ながら費用は重要です。
 

しかし、「一番安いところを選ぶ」だけではなく、「その費用で、どんな時間をつくれるのか?」
 

まで考えてみることをおすすめします。
 

たとえば、

  • 何分間のプログラムなのか?

  • 見るだけなのか、参加型なのか?

  • 何人まで参加できるのか?

  • 道具や音響は料金に含まれているのか?

  • 職員の準備時間をどの程度減らせるのか?

  • 敬老会らしい特別感があるか?

によって、同じ金額でも価値は変わります。
 

特に敬老会は、毎週行う通常レクとは少し性格が違います。
 

年に一度の大切な機会として、「いくらかかるか?」と同時に「どんな体験を届けられるか?」で考えることが大切ではないでしょうか?
 


ポイント⑤ 「今年は特別だったね」と思える時間になるか

最後に確認したいのが、特別感です。
 

敬老会は、日常のレクリエーションとは違う特別な行事です。
 

もちろん、豪華でなければならないわけではありません。
 

大切なのは、
 

「今日はいつもと少し違うね」

「楽しかったね」

「こんなの初めて見たね」
 

そんな会話が自然に生まれることです。
 

非日常の体験が加わることで、敬老会が利用者様にとって印象に残る一日になる可能性があります。
 

そして、その様子を職員やご家族が一緒に楽しめれば、施設全体にとっても良い時間になります。
 


外部レクは「何を呼ぶか?」より「何を届けたいか?」

ここまで5つのポイントをご紹介してきました。
 

改めて整理すると、

① 安全性

② 参加しやすさ

③ 職員の負担

④ 費用

⑤ 特別感

です。
 

ただ、最も大切なのは、この5項目をすべて満たす業者を探すことだけではありません。
 

その前に、「今年の敬老会で、利用者様にどんな時間を届けたいのか?」を施設内で共有することだと思います。
 

そこが決まれば、
 

演奏会がよいのか?
マジックがよいのか?
体操がよいのか?
サーカスがよいのか?
 

選択肢を比較しやすくなります。
 


室内サーカスという選択肢

私が現在、介護施設の特別イベントの一つとしてご紹介しているのが、室内で楽しめる参加型サーカスレクリエーションです。
 

ゴールドサーカスの高齢者施設向けプログラムでは、椅子に座ったまま行える準備運動や、スカーフジャグリング・お手玉などを使った参加型レク、そしてミニサーカスショーを組み合わせています。
 

車椅子や足腰に不安のある方も参加しやすいよう、安全面に配慮した柔らかく軽量な道具を使用し、利用者様の体調などに合わせた進行を基本としています。
 

「見る楽しさ」と「参加する楽しさ」の両方があることは、敬老会のような特別イベントとの相性が良いと感じています。
 

ただし、すべての施設にサーカスが合うわけではありません。
 

だからこそ、施設の状況や利用者様に合わせて、まず選択肢を整理することを大切にしています。
 


施設長向け「外部レク選び5項目チェック」

外部レクの候補が見つかったら、次の5項目を確認してみてください。
 

□ 安全性
利用者様の身体状況に合わせて実施できるか?
 

□ 参加しやすさ
見るだけ・拍手だけなど、複数の参加方法があるか?
 

□ 職員負担
事前準備・当日の運営にどの程度の職員対応が必要か?
 

□ 費用
料金だけでなく、内容・時間・準備負担などを含めて納得できるか?
 

□ 特別感
「今年の敬老会は楽しかった」と感じてもらえる体験になりそうか?
 

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2026年08月07日 20:00

【第4回】家族が困るのは「気持ち」より先に「情報がないこと」

第4回

さいたま市で親の介護が心配になったら読む話

急な入院・介護で家族が慌てないためのやさしい準備

親が急に入院した。
転倒して救急搬送された。
認知症の疑いが出てきた。
一人暮らしを続けるのが難しくなってきた。
 

こうした出来事が起きた時、家族はもちろん気持ちの面でも大きく揺れます。
 

「大丈夫だろうか?」
「これからどうなるのだろう?」
「自分に何ができるだろう?」
「もっと早く気づいていればよかった...。」
 

そんな不安や戸惑いで頭がいっぱいになるのは、ごく自然なことです。
 

けれど、実際には、家族は気持ちを整理する間もなく、すぐに現実的な対応を求められることが少なくありません。
 

病院から連絡が来る。
必要な持ち物を準備する。
通院歴や持病を確認する。
飲んでいる薬を伝える。
保険証や診察券を探す。
今後の支援や退院後の生活を考える。
 

この時、家族が本当に困るのは、気持ちの問題そのものよりも、「必要な情報が手元にないこと」である場合がとても多いのです。

家族は「悲しむ前に動かなければならない」

親に何かあった時、家族はまず心配します。

それと同時に、すぐに動かなければなりません。

急な入院なら、病院からこんなことを聞かれるかもしれません。
 

・かかりつけ医はどこですか?
・持病はありますか?
・飲んでいる薬は分かりますか?
・アレルギーはありますか?
・保険証は持っていますか?
・普段はどのような生活をしていますか?
・ひとり暮らしですか?
・退院後に支援してくれる家族はいますか?
 

でも、その時に
 

「よく分かりません。」
「保険証がどこにあるか知りません。」
「薬の名前は分かりません。」
「どこの病院に通っていたか曖昧です。」
「誰に連絡したらいいのか分かりません。」
 

ということが起きると、家族は一気に慌てます。
 

つまり、家族が最初にぶつかる壁は、「どう気持ちを整理するか?」より前に、「必要な情報が見つからない」という現実なのです。

情報がないと、家族の負担は何倍にもなる

たとえば、親が入院した時に、必要な情報が整理されていないと、家族は次のような負担を抱えます。

1. 手続きに時間がかかる

保険証、診察券、お薬手帳、介護保険証、病院の書類など、必要なものがどこにあるか分からないと、それだけで大きな負担になります。

2. 医療者や支援者に正確に伝えられない

持病や服薬内容、これまでの通院先が分からないと、医師や看護師、ケアマネジャー、地域包括支援センターの職員にも、必要な情報を十分に伝えられません。

3. 家族間で認識のズレが起こる

きょうだい、配偶者、親族の間で、誰が何を知っているかがバラバラだと、連携が取りにくくなります。

4. 不安がさらに大きくなる

本来なら親の体調や今後を考えたいのに、「まず書類を探さなければ」「誰に聞けばいいのか分からない」という状態になると、不安や疲れが何倍にも膨らみます。

「情報を整理すること」は冷たいことではない

ここで誤解してほしくないのは、情報を整理することは、親を「管理すること」ではない、ということです。
 

中には、こう感じる方もいらっしゃるかもしれません。
 

「親の保険証の場所を聞くなんて、気が引ける。」
「薬のことを確認すると、監視しているみたいで嫌がられそう。」
「お金や書類の話をすると、親を追い詰めるような気がする。」
 

たしかに、言い方やタイミングには配慮が必要です。

でも、本来これは、親を縛るためではなく、親に何かあった時に、親をきちんと支えるための準備です。
 

たとえば、
 

「急な入院の時に困らないように、保険証の場所だけ確認しておきたい。」
「何かあった時にお母さんの希望を大切にしたいから、病院のことを少し教えてほしい。」
「家族が慌てないように、必要なものを一緒に整理しておきたい。」
 

このように伝えれば、目的は「支配」ではなく「安心」だということが伝わりやすくなります。

最初に整理しておきたい情報

では、何を整理しておくとよいのでしょうか?
 

全部を一度にやる必要はありません。
まずは、次のような基本情報からで十分です。

1. 通院先・かかりつけ医

  • どこの病院、クリニックに通っているか

  • 何科に通っているか

  • 主治医の名前

  • 次回の受診予定

2. 薬の情報

  • 飲んでいる薬

  • お薬手帳の有無

  • 薬の保管場所

  • 飲み忘れの有無や管理方法

3. 保険証・診察券などの場所

  • 健康保険証

  • 診察券

  • 介護保険証

  • 限度額認定証など必要な書類

4. 緊急連絡先

  • 家族の連絡先

  • 近くに住む親族

  • 親が頼っている人

  • 緊急時に連絡してほしい順番

5. 親の基本情報

  • 生年月日

  • 住所

  • 既往歴

  • アレルギー

  • これまでの入院歴や大きな病気

6. 本人の希望

  • 具合が悪くなった時、誰に頼りたいか

  • どこで暮らしたいと思っているか

  • どのような支援なら受け入れやすいか

7. 相談先

  • 親の住んでいる地域のシニアサポートセンター

  • 自分の住んでいる地域の相談先

  • 必要に応じた専門機関

「連絡ノート」を1冊作るだけでも違う

情報整理というと、大げさに感じるかもしれません。

でも、まずはノート1冊でも十分です。

たとえば、「連絡ノート」として、

  • 通院先

  • かかりつけ医

  • 緊急連絡先

  • 保険証の場所

  • 大切な書類の置き場所

  • 親が気にしていること

  • 何かあった時に家族で共有したいこと

などを書いておくだけでも、いざという時の安心感は大きく変わります。
 

手書きでもかまいません。
完璧でなくても大丈夫です。

「分かる人しか分からない状態」から、「家族が見て分かる状態」に近づけることが大切です。

家族だけで抱え込まないために

情報が整理されていないと、家族は「自分が何とかしなければ」と背負い込みやすくなります。
 

でも、すべてを家族だけで解決しようとしなくて大丈夫です。

介護や高齢者支援には、相談できる窓口があります。

さいたま市では、シニアサポートセンターが、地域の高齢者や家族の相談窓口になっています。
 

「まだ介護ではない」
「まだ元気だから相談するのは早い」

と思うような段階でも、
 

・最近、親の物忘れが気になる
・一人暮らしが心配
・何から整理すればよいか分からない
・家族で話し合うきっかけがほしい
 

そんな時に、早めに相談先を知っておくことは大きな安心につながります。

情報があるだけで、家族は落ち着いて動ける

親に何かあった時、家族の不安をゼロにすることはできません。

大切な親のことですから、心配になるのは当たり前です。

でも、必要な情報が分かっているだけで、家族はずいぶん落ち着いて動けるようになります。
 

保険証の場所が分かる。
かかりつけ医が分かる。
飲んでいる薬が分かる。
緊急連絡先が分かる。

どこに相談すればよいか分かる。
 

たったそれだけでも、「どうしよう」と立ち尽くす時間は減らせます。
 

介護準備や終活は、難しい制度の勉強から始める必要はありません。

まずは、情報を分かる形にしておくこと
それが、家族を助け、親を支える大きな一歩になります。

今日からできる小さな一歩

今日からできることとして、まずおすすめしたいのは次の3つです。
 

1つ目。
親の通院先、かかりつけ医を確認すること。
 

2つ目。
保険証、診察券、お薬手帳の場所を確認すること。
 

3つ目。
家族の連絡先を、親にも家族にも分かる形で整理すること。
 

そして、できればノートやメモに書き出してみてください。
 

家族が困るのは、気持ちが弱いからではありません。
情報がない中で、急に判断や対応を求められるからです。
 

だからこそ、今のうちに少しだけ整理しておく。
その小さな準備が、いざという時に親も家族も支えてくれます。
 

介護準備は、やさしい確認から。
終活は、安心して暮らし続けるための整理から。

まずは、今日できる一歩から始めてみませんか?

 

親の介護が心配。でも、何から始めればよいか分からない方へ

 

親が倒れる前の介護準備チェックシートはこちらから

 

2026年08月04日 17:02

第4回「忘れる人」ではなく、「困っている人」として見てみる

第4回

「忘れた」のではなく、今いる世界で迷っている

「さっき説明したばかりなのに、もう忘れている。」
「同じことを何度も聞かれると、ついイライラしてしまう。」
「どうして自分の家なのに、分からなくなるのだろう?」
 

認知症のある方と接していると、家族はこのような戸惑いを感じることがあります。
 

今日の予定を何度も確認する。
大切な物をどこに置いたか分からなくなる。
今いる場所が自宅だと分からず、「家に帰りたい」と訴える。
途中までできていたことの、次の手順が分からなくなる。
 

周囲から見れば、どれも「忘れてしまった」と見える出来事です。
 

もちろん、認知症によって記憶することや、時間・場所を正しく捉えることが難しくなる場合があります。
 

しかし、本人の立場に立ってみると、単に記憶が抜け落ちているだけではなく、
 

「今、何が起きているのか分からない?」
「次に何をすればよいのか分からない?」
「自分だけが状況を理解できていない?」
 

という不安や戸惑いの中にいるのかもしれません。
 

認知症のある方を「忘れる人」としてだけ捉えるのではなく、分からない世界の中で迷い、困っている人として見てみる。
 

今回は、その視点について考えてみたいと思います。
 


本人にとっては、毎回が「初めての質問」かもしれない

たとえば、朝、家族が伝えます。
 

「今日は午後3時に病院へ行くよ。」
 

その30分後、本人から聞かれます。
 

「今日はどこかへ行くの?」
 

家族はもう一度、「午後3時に病院へ行くよ」と答えます。
 

ところが少しすると、また、「病院はいつ行くの?」と尋ねられます。
 

何度も同じ質問を受ける家族は、
 

「さっきも言ったでしょう!」
「何回同じことを聞くの?」
 

と言いたくなるかもしれません。
 

しかし本人は、質問したことや、説明を受けたこと自体を覚えていない可能性があります。
 

本人にとっては、同じ質問を繰り返しているのではなく、毎回初めて確認している感覚なのかもしれません。
 

さらに、
 

「予定を間違えたらどうしよう?」
「自分だけ置いていかれるのではないか?」
「何か大切なことを忘れている気がする...。」
 

といった不安を抱えていることもあります。
 

そう考えると、「また同じことを聞いている」ではなく、

「予定が分からなくなり、また不安になったのかもしれない」

と見てみることができます。
 


「分からない」と言えないつらさもある

私たちは、説明が分からなければ、
 

「もう一度教えてください。」
「少しゆっくり話してください。」
「今の部分が理解できませんでした。」
 

と伝えることができます。
 

しかし、認知症のある方は、自分が何を分かっていないのかを整理できなかったり、うまく言葉にできなかったりすることがあります。
 

周囲から何度も、
 

「また忘れたの?」
「それも分からないの?」
「さっき説明したでしょう...。」
 

と言われるうちに、質問すること自体が怖くなる方もいるかもしれません。
 

分からないと言えば叱られる。
間違えれば家族が困った顔をする。
自分は迷惑をかけているのではないか?
 

そのように感じると、本当は困っていても、黙り込んだり、話を合わせたり、別の話題に変えたりすることがあります。
 

一見すると、本人が何も気にしていないように見えても、心の中では、
 

「何かがおかしい。」
「自分だけ分かっていない。」
「失敗したくない。」
 

と感じているかもしれません。
 

本人の言葉だけではなく、表情やしぐさ、落ち着かなさにも目を向けることが大切です。
 


「覚えている?」が、毎日の試験になっていないか?

家族は本人の状態が心配だからこそ、つい確認したくなります。
 

「今日が何日か分かる?」
「昨日、誰が来たか覚えている?」
「この人が誰か分かる?」
「さっき何を食べたか言える?」
 

もちろん、変化に早く気づくことは大切です。
 

ただ、日常の中で何度も記憶を試されると、本人にとっては、生活そのものが試験のように感じられることがあります。
 

答えられなければ、家族の表情が曇る。
間違えれば、訂正される。
何度も考えても思い出せない。
 

それでは、安心して会話を楽しむことが難しくなります。
 

日常会話では、本人に答えを求めるのではなく、こちらから自然に情報を添える方法もあります。
 

「今日は8月1日だね。暑い一日になりそうだね。」

「昨日は孫の〇〇ちゃんが来てくれて、楽しかったね。」

「こちらは近所の田中さんだよ。いつも声をかけてくださる方だよ。」
 

思い出せるかどうかを確かめるより、必要な情報をそっと渡す。
それは、本人の自尊心を守りながら、安心して会話に参加してもらうための工夫でもあります。
 


大切な物が見つからない時、本人には何が起きているのか?

財布や通帳、印鑑、鍵などを大切に思うあまり、本人がいつもとは違う場所にしまうことがあります。
 

ところが、しまったこと自体を忘れてしまう。

本人の感覚では、「ここに置いたはずなのに、なくなっている」ということになります。
 

探しても見つからない。
家族は「自分でどこかに置いたのでしょう」と言う。

しかし、本人には移動させた記憶がありません。

本人の世界では、本当に、「あったはずの物が突然なくなった」と感じられているのかもしれません。
 

それならば、
 

「誰かが持っていったのではないか?」
「盗られたのではないか?」
 

と考えることも、本人なりの理由があるように見えてきます。
 

そんな時に、

「またなくしたの?」
「自分で隠したのでしょう...。」
「誰も盗るわけがないでしょう?!」
 

と正しさだけを伝えても、不安はなかなか消えません。
 

まずは、

「見つからなくて心配なんですね。」
「一緒に探してみましょう。」
 

と、困っている気持ちを受け止める。
 

そのうえで、よくしまう場所を一緒に確認したり、保管場所をできるだけ固定したり、箱や引き出しに分かりやすい目印を付けたりすることができます。
 

本人に「忘れないように頑張ってもらう。」だけではなく、「忘れても困りすぎない環境を整える。」という考え方が大切です。
 


途中で分からなくなっているのかもしれない

認知症のある方は、何もかもできなくなるわけではありません。
 

料理を始めることはできる。
洗濯物を洗濯機に入れることもできる。
着替えようと服を取り出すこともできる。
 

ところが、途中で次に何をすればよいか分からなくなることがあります。
 

料理では、材料を出したものの、どの順番で調理するのか分からなくなる。

着替えでは、服を手に取ったものの、どちらから着ればよいのか分からなくなる。

外出では、玄関を出たものの、目的地までの道順が分からなくなる。
 

周囲から見ると、

「途中でやめてしまった。」
「やる気がない。」
「何をしているのか分からない?」
 

ように見えるかもしれません。
 

しかし本人は、慣れた道を歩いていたはずなのに、突然、道しるべを見失ったような状態なのかもしれません。
 

そんな時は、一度に多くのことを伝えるより、
 

「まず、この服を着ましょう。」
「次に、このお皿をテーブルへ運んでもらえますか。」
「ここを一緒に曲がりましょう。」
 

と、今必要なことを一つずつ伝える方が分かりやすくなります。
 

途中までできたことにも目を向け、
 

「ここまでできましたね。」
「手伝ってくれてありがとう。」
 

と声をかけることも、本人の安心や自信につながります。
 


すべての間違いを訂正しなくてもよい

すでに退職している父親が、朝になると、「会社へ行かなければ」と出勤の準備を始める。
 

そんな時、家族は、
 

「もう会社は辞めたでしょう?!」
「何年前の話をしているの?」
 

と事実を説明したくなるかもしれません。
 

もちろん、安全に関わる場合や、外出を防ぐ必要がある場合には、現実的な対応が必要です。
 

ただ、いつでも強く訂正すればよいとは限りません。
 

本人にとって仕事は、長年続けてきた大切な役割だったのかもしれません。
 

「会社へ行かなければ」という言葉の奥には、

「自分にはやるべきことがある。」
「誰かに必要とされている。」
「責任を果たさなければならない。」
 

という思いが残っている可能性もあります。
 

そんな時は、
 

「長い間、お仕事を頑張ってきたんだね。」
「今日は少しお茶を飲んでからにしようか?」
 

と、言葉の奥にある気持ちを受け止めることもできます。
 

大切なのは、本人を言い負かすことではありません。
 

今、何を心配しているのか?
どのような役割を求めているのか?
何があれば安心できるのか?
 

本人の歩んできた人生を知ることが、関わり方を考える手掛かりになります。
 


「本人のため」の先回りが、本人の機会を奪うこともある

家族は、本人が困らないように先回りします。
 

予定をすべて管理する。
持ち物をすべて準備する。
本人に尋ねず、家族だけで予定を決める。
危ないからと、外出や家事をやめてもらう。
 

家族としては、失敗を防ぎたいのです。

その気持ちは自然なものです。
 

しかし、先回りしすぎると、本人が自分で選んだり、考えたり、希望を伝えたりする機会まで少なくなることがあります。
 

認知症があっても、本人の意思や好みがすべてなくなるわけではありません。
 

たとえば、
 

「今日は青い服と白い服の、どちらにしますか?」
「散歩は午前と午後、どちらがよいですか?」
「お茶とコーヒーなら、どちらを飲みたいですか?」
 

と、選択肢を少なくして尋ねれば、本人が選べる場合があります。
 

「どうせ分からないから」と決めつけるのではなく、本人が参加しやすい形を整える。
 

それも、「困っている人として見てみる」から生まれる支援です。
 


本人の気持ちを理解することと、家族が我慢し続けることは違う

ここまで、本人の立場を想像することの大切さをお伝えしてきました。
 

ただし、家族がどのような時も穏やかに対応できるわけではありません。
 

同じ質問が一日に何十回も続く。
物探しに長い時間付き合う。
夜中に何度も起こされる。
外へ出ないよう、常に見守る。
 

仕事や家事を抱えながら対応していれば、疲れるのは当然です。
 

「本人も困っているのだから、我慢しなければ...。」と考えすぎないでください。
 

本人を理解しようとすることと、家族が一人ですべてを背負うことは同じではありません。
 

イライラしてしまう。
強い口調になってしまう。
もう限界だと感じる。
 

そのような時は、介護者として失格なのではなく、支援が必要になっているサインかもしれません。
 

地域包括支援センター、かかりつけ医、ケアマネジャーなどに、
 

「同じ質問が何度も続き、対応がつらい。」
「物を盗ったと疑われ、精神的に苦しい。」
「昼夜を問わず見守りが必要になっている。」
 

と、具体的に相談してください。
 

本人だけでなく、支える家族にも支援が必要です。
 


「忘れる人」から「迷い、困っている人」へ

同じ質問を繰り返す。
大切な物をなくす。
予定が分からなくなる。
途中で何をしていたのか分からなくなる。
 

その姿だけを見れば、「また忘れた」と思うでしょう。
 

しかし本人は、記憶という道しるべを見失い、今いる場所で迷っているのかもしれません。
 

そんな時、周囲の人ができることは、間違いを指摘し続けることではなく、安心できる道しるべになることです。
 

「大丈夫ですよ。」
「一緒に確認しましょう。」
「ここに書いてありますよ。」
「次は、これをしましょう。」
 

忘れないように強く求めるのではなく、忘れても困りすぎない暮らしを一緒につくる。
 

認知症のある方への支援とは、本人を以前の状態に戻そうとすることだけではありません。
 

今の本人が少しでも安心して歩けるように、道を分かりやすく整えることでもあるのだと思います。
 


今日の小さな一歩

身近な方が同じことを尋ねた時、「さっきも言ったでしょう!」と答える前に、ほんの少しだけ間を置いてみてください。
 

そして、「この人は今、何が分からなくて困っているのだろう?」と考えてみます。
 

予定が見えず、不安なのかもしれない。
自分だけ取り残されたと感じているのかもしれない。
失敗することを怖がっているのかもしれない。
 

すぐに答えが見つからなくても構いません。
 

「忘れる人」として決めつけるのではなく、

「分からない世界で迷い、困っている人」として見てみる。
 

その小さな視点の変化が、本人に届ける言葉を少しやさしく変えてくれるかもしれません。
 

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2026年08月01日 19:26

【第1回】老後資金を増やす前に、考えておかなければならないこと

第1回

全20回連載:「老後資金を増やす前に 介護で失わない家計のつくり方」

親の介護、自分たちの介護、仕事とお金
50代・60代が今から考えたい20の現実

■老後資金の話が、資産運用の話だけになっていませんか?

50代、60代になり、老後のお金について考え始める方が増えています。
 

年金はいくら受け取れるのか?
退職金はいくら残るのか?
NISAやiDeCoを活用した方がよいのか?
預貯金だけでは、物価上昇に対応できないのではないか?
 

どれも大切な問題です。
 

私もファイナンシャルプランナーとして、老後に向けた資産形成や家計管理は必要だと考えています。
 

しかし、老後資金を考えるときに、見落とされやすい大きな問題があります。

それが「介護」です。
 

あなたの老後資金計画には、次のことまで組み込まれているでしょうか?
 

・自分の両親の介護
・配偶者の両親の介護
・自分自身の介護
・配偶者の介護
・介護によって働き方が変わる可能性

 

老後資金を考える際には、年金や生活費だけでなく、家族の介護についても考える必要があります。

■介護は「お金が出ていく問題」だけではありません

親の介護について考えるとき、多くの方は、介護サービスや施設に支払う費用を思い浮かべるのではないでしょうか?
 

生命保険文化センターの2024年度調査によると、介護にかかった一時的な費用は平均47.2万円、毎月の費用は平均9万円、介護期間は平均4年7カ月です。

介護期間が4年を超えた人も約4割います。

もちろん、これはあくまで平均です。
 

在宅介護か施設介護か、要介護度、介護期間、親の年金や預貯金などによって、実際の負担は大きく異なります。

また、介護保険サービスの自己負担以外にも、次のような支出が発生する可能性があります。
 

・実家までの交通費や宿泊費
・通院や入退院への付き添い
・紙おむつや配食などの保険外費用
・住宅改修や介護用品の購入費
・空き家となった実家の維持費
・親の費用の一時的な立て替え

 

しかし、家計にとってさらに大きな問題となる可能性があるのが、介護による「収入の減少リスク」です。

参考:公益財団法人 生命保険文化センター
https://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/1116.html

■支出の増加と収入の減少が同時に起こる可能性が...

親の通院同行やケアマネジャーとの打ち合わせ、入退院の手続き、緊急時の対応が必要になると、これまでどおりに働くことが難しくなる場合があります。

会社を辞めなかったとしても、次のような変化が起こるかもしれません。
 

・残業や休日出勤を減らす
・短時間勤務を選ぶ
・管理職や責任の重い役割を辞退する
・転勤や昇進を断る
・賞与や手当が減る

・学び直しや複業に使う時間を失う

厚生労働省の資料によると、2022年には家族の介護や看護を理由として約10万6千人が離職しています。

また、家族を介護しながら働いている人は、364万6千人に達しています。
 

介護離職をすると、給与がなくなるだけではありません。

厚生年金への加入期間、将来受け取る年金、退職金、再就職後の収入などにも影響する可能性があります。
 

つまり、親の介護が始まると、
 

「介護に関する支出が増える」ことに加えて、「働き方が変わり、収入が減る」という二つの問題が、同時に発生する可能性があるのです。
 

参考:厚生労働省「仕事と介護の両立支援」
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001435348.pdf

■中流家庭でも家計が急速に弱る可能性がある

一定の収入と預貯金があり、これまで安定して暮らしてきた家庭でも、準備のないまま親の介護が始まると、家計が次のように変化することがあります。
 

親の介護費用を、子どもが立て替える。
通院や見守りのために仕事を休み、収入が減る。
家族の中の一人に負担が集中し、心身ともに疲弊する。
「仕事と介護の両立は無理だ」と考え、会社を辞める。
生活費や住宅ローンを支払うため、預貯金を取り崩す。
NISAなどの積立を中止し、保有している金融商品も売却する。
再就職しても、以前と同じ収入には戻れない。

 

その結果、自分と配偶者の老後資金や介護資金まで不足していく。

こうした連鎖が続けば、中流家庭でも老後資金を急速に失い、将来的には公的支援が必要になるほど家計が弱る可能性があります。
 

経済産業省は、仕事をしながら家族を介護する人が2030年に約318万人となり、介護離職や労働生産性の低下などによる経済損失が、約9兆円に上ると試算しています。
 

介護は、家庭だけの問題ではありません。

本人のキャリア、企業経営、そして社会全体にも影響する問題なのです。
 

参考:経済産業省「仕事と介護の両立支援」
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kaigo/kaigo_guideline.html

■NISAなどによる資産運用の検討を否定しているわけではありません

ここで、誤解していただきたくないことがあります。

私は、NISAやiDeCoなどの資産形成の検討を否定しているわけではありません。
 

長期的な資産形成は、人生100年時代を生きるうえで重要な選択肢です。

ただし、資産運用は、人生の目的や将来必要となる資金を整理したうえで行う「手段」です。
 

何のためのお金なのか?
いつ使う可能性があるのか?
急に現金が必要になったとき、取り崩しても問題がないのか?
 

親の介護、自分たちの介護、これからの働き方を確認しないまま資産運用を始めると、本来は近い将来に必要となるお金まで運用に回してしまう可能性があります。

だからこそ、順番が大切です。
 

「老後資金を増やす前に、介護で失わない仕組みをつくる。」

これが、この連載を通して私がお伝えしたい中心的なメッセージです。

■私自身、両親の介護に直面して感じたこと

私は2023年3月から、私自身の両親の介護に直面しています。

介護や社会保障の制度を知っていても、ある程度の知識があっても、自分の家族の介護の問題になると、簡単にはことは運びません。
 

親にどのように話を切り出すのか?
病院や介護関係者とのやり取りを誰が行うのか?
仕事の予定をどう調整するのか?
家族の中で、誰がどこまで対応するのか?
親のお金について、どこまで確認してよいのか?

 

知識があることと、実際に家族として動けることは、別の問題だと痛感しました。
 

だからこそ私は、介護が始まってから慌てて対処するのではなく、親が元気なうちに、仕事・お金・家族関係を整理しておくことが必要だと考えています。

終活は、親に死の準備を迫ることではありません。
 

親がこれからも、どこで、誰と、どのように暮らしたいのかを聞き、もしものときに家族が困らないように、少しずつ確認していくことです。

■今日からできる最初の一歩

まずは、次の人たちの名前を紙に書き出してみてください。
 

・自分の父親、母親
・配偶者の父親、母親
・自分自身
・配偶者
 

すべての方が介護を必要とするとは限りません。
 

しかし、自分と配偶者の両親、自分たち夫婦まで含めれば、介護について考える対象は最大6人になり得ます。
 

そして、それぞれについて、次の三つを確認してみてください。
 

1.介護が必要になった場合、誰が最初に動くのか?
2.費用は、誰の年金や資産から支払うのか?
3.どこで、どのように暮らしたいと考えているのか?

 

答えが分からなくても問題ありません。
 

「分からないことに気づくこと」が、準備の第一歩です。

■これから全20回でお伝えすること

この連載では、次のようなテーマについて、全20回にわたってお伝えします。
 

・親の介護には実際にいくらかかるのか?
・介護離職が家計と将来の年金に与える影響は?
・親の介護費用を誰が負担するのか?
・兄弟姉妹で役割をどう分担するのか?
・親が元気なうちに確認したいことは?
・介護休業制度をどのように活用するのか?
・自分と配偶者の介護費用をどう準備するのか?
・介護資金と資産運用に回すお金をどう分けるのか?

 

老後資金を増やす方法を考える前に、介護によって人生と家計を壊さない準備を始めていきましょう。

■次回予告

第2回は、「あなたの老後資金計画に『親の介護』は入っていますか?」をテーマにお伝えします。

自分の両親と配偶者の両親の介護が、50代・60代の家計と働き方にどのような影響を与えるのかを、一緒に考えていきましょう。
 

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「介護と老後資金」を一度整理してみませんか?

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老後資金を考えるとき、年金やNISAなどの資産運用だけでなく、親の介護に伴う支出や収入減少、自分自身と配偶者の介護費用まで考えることが大切です。

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親が元気な今のうちに、家族の介護方針、費用負担、仕事との両立、自分たちの老後資金について整理するためのセミナーです。
 

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「自分の家庭では、何から準備すればよいのか分からない」
「親のお金や介護について、どう話を切り出せばよいのか悩んでいる」
「介護と仕事、老後資金をまとめて整理したい」
 

そのような方を対象に、60分の無料個別相談を行っています。
 

ご家庭の状況を伺いながら、
 

・今すぐ始めること
・まだ急がなくてよいこと
・最初に取り組むべき行動
 

を一緒に整理します。
 

▼無料個別相談の詳細・お申込み

※無料相談は、お一人様1回です。
※対面・オンラインの両方に対応しています。(対面は埼玉県と東京都)
※金融商品の販売や強引な勧誘を目的とした相談ではありません。
※継続支援が必要な場合も、内容と料金をご説明し、ご本人が納得された場合のみご利用いただきます。
※ご安心してお申込み頂ければ幸いです。

2026年07月28日 17:57

キャリア&ライフプラントータルサポート

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