【第5回】親が元気なうちに準備することは、親を急かすことではない
さいたま市で親の介護が心配になったら読む話
急な入院・介護で家族が慌てないためのやさしい準備
「親が元気なのに、介護や終活の話をするのは早すぎるのではないか?」
そう感じる方は少なくないと思います。
まだ自分で買い物に行ける。
病院にも一人で通えている。
友人とも出かけている。
趣味も楽しんでいる。
そんな親を前にして、
「もし介護が必要になったらどうする?」
「どこの病院に通っているの?」
「何かあった時、誰に連絡すればいい?」
「終活のことも少し考えない?」
とは、なかなか言い出しにくいものです。
もしかすると、
「縁起でもない」
「まだそんな年じゃない」
「早く死ねと言われているみたいで嫌だ」
と受け取られてしまうかもしれない。
そんな不安もあるでしょう。
でも、親が元気なうちに準備することは、親を急かすことではありません。
むしろ私は、親が元気だからこそできる準備があると思っています。
元気な今だからこそ、本人の希望を聞ける
介護が必要になってからでは、家族が本人の希望を十分に聞けないことがあります。
急な入院で話す余裕がない。
認知症が進み、自分の希望をうまく言葉にできない。
体力が落ち、考えること自体が負担になる。
そうなってから、
「お母さんはどうしたい?」
「家で暮らしたい?施設がいい?」
「もしもの時は誰に連絡してほしい?」
「どこまで治療を望んでいる?」
と聞いても、十分な答えが得られないことがあります。
だからこそ、元気な今のうちに、
「これからどんな暮らしをしたいのか?」
「何を大切にしているのか?」
「誰に頼りたいのか?」
を少しずつ聞いておくことが大切です。
これは親の人生を決めるためではありません。
親自身の希望を、家族が知っておくための会話です。
いきなり「終活しよう」と言わなくても大丈夫
終活という言葉は、まだまだ重く感じる方が多い言葉です。
ですから、無理に「終活」という言葉を使わなくてもかまいません。
たとえば、
「最近、病院はどこに通ってるの?」
「何かあった時に連絡するなら、誰がいい?」
「お薬手帳って、どこに置いてあるの?」
「これからもこの家で暮らしたい?」
「もし入院した時に必要なものって、どこにある?」
そんな日常会話からで十分です。
大切なのは、終活という名前をつけることではありません。
家族が少しずつ親のことを知っていくこと。
それ自体が、立派な介護準備です。
親に聞く前に、自分のことを話してみる
親に介護や終活の話を切り出すのが難しい時には、まず自分の話から始める方法もあります。
たとえば、
「最近、自分も何かあった時の連絡先を整理してるんだ」
「スマホの中に大事な情報がいっぱい入っているから、家族が困らないようにしておこうと思って」
「私も保険証とか大事な書類の場所をまとめようと思ってる」
と、自分の準備について話してみる。
そのうえで、「お母さんはどうしてる?」と聞けば、会話が自然になります。
親だけに準備を求めると、親は「年寄り扱いされた」と感じるかもしれません。
でも、「家族みんなで備える」という姿勢なら、受け止め方も変わります。
準備とは「決めること」ではなく「知っておくこと」
介護準備というと、
「介護施設を決めなければ」
「財産のことを全部確認しなければ」
「遺言を書いてもらわなければ」
と考える方もいます。
でも、最初からそこまで決める必要はありません。
まずは、
・どこの病院に通っているか?
・どんな薬を飲んでいるか?
・保険証や大切な書類はどこにあるか?
・緊急時に誰に連絡してほしいか?
・今の暮らしで困っていることはないか?
・これからも大切にしたいことは何か?
を知っておくだけでも十分です。
介護準備の最初の一歩は、決めることではなく、知ること。
そこから始めてみてください。
「何かあってから」では、話す余裕がなくなる
親の介護について考える時、多くの家族が「何かあったら、その時考えればいい」と思います。
もちろん、それも一つの考え方です。
ただ、何かが起きた時には、想像以上に余裕がありません。
急な入院。
仕事の調整。
病院とのやり取り。
きょうだいへの連絡。
介護保険の手続き。
退院後の生活の検討。
次から次へと判断を求められます。
そんな時に、
「親はどうしたかったんだろう」
「誰に相談すればいいんだろう」
「書類はどこにあるんだろう」
というところから始めるのは、とても大変です。
だからこそ、何も起きていない今に、少しだけ話しておく。
それだけでも、家族の負担は変わります。
今だから話せることがある
親が元気な今は、一緒に笑いながら話せます。
「そんなことまだ考えてないよ」と言われても、「じゃあ、また今度ね」と笑って終えることができます。
一度で全部聞く必要はありません。
少し話す。
また別の日に話す。
何かのきっかけで思い出したら聞いてみる。
そんな形でよいのです。
介護や終活の準備は、一度の家族会議で完成させるものではありません。
日常の会話の中で少しずつ作っていくものだと思います。
地域の相談先も、元気なうちに知っておく
親のことについて、家族だけでは分からないこともあります。
そんな時に、早めに知っておきたいのが、地域の相談窓口です。
さいたま市では、シニアサポートセンターが、高齢者やその家族の相談窓口になっています。
介護が始まってからだけではなく、
「最近、親の様子が少し気になる」
「どんな準備をしておけばいい?」
「まだ元気だけど、一人暮らしが少し心配」
という段階でも、相談先を知っておくことは大切です。
困ってから探すのではなく、困る前に知っておく。
これも立派な介護準備です。
親を急かすのではなく、親の人生を尊重するために
介護準備や終活は、親の人生を急がせるものではありません。
むしろ逆です。
親が自分らしく暮らせる時間をできるだけ長くするために。
本人の希望を大切にするために。
家族が勝手に決めなくて済むようにするために。
必要な準備を、元気なうちから少しずつ始めておく。
それが本来の介護準備や終活なのだと思います。
今日からできる小さな一歩
今日は、親に何かを決めてもらう必要はありません。
まずは、こんな一言から始めてみてはいかがでしょうか。
「最近、困っていることない?」
「病院って今どこに通ってるの?」
「何かあった時、誰に連絡してほしい?」
それだけで十分です。
そして、もし親が話したくなさそうなら、その日はそこで終わりにする。
また話せそうな時に話せばよいのです。
親が元気なうちに準備することは、親を急かすことではありません。
今だから話せる。
今だから聞ける。
今だから一緒に考えられる。
その小さな会話が、将来、親と家族の両方を助けてくれるかもしれません。
介護準備は、親を急かすためではなく、親の希望を大切にするために。
終活は、人生の終わりを考えるだけではなく、これからを安心して暮らすために。
まずは、家族のやさしい会話から始めてみませんか?
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