【第4回】家族が困るのは「気持ち」より先に「情報がないこと」
さいたま市で親の介護が心配になったら読む話
急な入院・介護で家族が慌てないためのやさしい準備
親が急に入院した。
転倒して救急搬送された。
認知症の疑いが出てきた。
一人暮らしを続けるのが難しくなってきた。
こうした出来事が起きた時、家族はもちろん気持ちの面でも大きく揺れます。
「大丈夫だろうか?」
「これからどうなるのだろう?」
「自分に何ができるだろう?」
「もっと早く気づいていればよかった...。」
そんな不安や戸惑いで頭がいっぱいになるのは、ごく自然なことです。
けれど、実際には、家族は気持ちを整理する間もなく、すぐに現実的な対応を求められることが少なくありません。
病院から連絡が来る。
必要な持ち物を準備する。
通院歴や持病を確認する。
飲んでいる薬を伝える。
保険証や診察券を探す。
今後の支援や退院後の生活を考える。
この時、家族が本当に困るのは、気持ちの問題そのものよりも、「必要な情報が手元にないこと」である場合がとても多いのです。
家族は「悲しむ前に動かなければならない」
親に何かあった時、家族はまず心配します。
それと同時に、すぐに動かなければなりません。
急な入院なら、病院からこんなことを聞かれるかもしれません。
・かかりつけ医はどこですか?
・持病はありますか?
・飲んでいる薬は分かりますか?
・アレルギーはありますか?
・保険証は持っていますか?
・普段はどのような生活をしていますか?
・ひとり暮らしですか?
・退院後に支援してくれる家族はいますか?
でも、その時に
「よく分かりません。」
「保険証がどこにあるか知りません。」
「薬の名前は分かりません。」
「どこの病院に通っていたか曖昧です。」
「誰に連絡したらいいのか分かりません。」
ということが起きると、家族は一気に慌てます。
つまり、家族が最初にぶつかる壁は、「どう気持ちを整理するか?」より前に、「必要な情報が見つからない」という現実なのです。
情報がないと、家族の負担は何倍にもなる
たとえば、親が入院した時に、必要な情報が整理されていないと、家族は次のような負担を抱えます。
1. 手続きに時間がかかる
保険証、診察券、お薬手帳、介護保険証、病院の書類など、必要なものがどこにあるか分からないと、それだけで大きな負担になります。
2. 医療者や支援者に正確に伝えられない
持病や服薬内容、これまでの通院先が分からないと、医師や看護師、ケアマネジャー、地域包括支援センターの職員にも、必要な情報を十分に伝えられません。
3. 家族間で認識のズレが起こる
きょうだい、配偶者、親族の間で、誰が何を知っているかがバラバラだと、連携が取りにくくなります。
4. 不安がさらに大きくなる
本来なら親の体調や今後を考えたいのに、「まず書類を探さなければ」「誰に聞けばいいのか分からない」という状態になると、不安や疲れが何倍にも膨らみます。
「情報を整理すること」は冷たいことではない
ここで誤解してほしくないのは、情報を整理することは、親を「管理すること」ではない、ということです。
中には、こう感じる方もいらっしゃるかもしれません。
「親の保険証の場所を聞くなんて、気が引ける。」
「薬のことを確認すると、監視しているみたいで嫌がられそう。」
「お金や書類の話をすると、親を追い詰めるような気がする。」
たしかに、言い方やタイミングには配慮が必要です。
でも、本来これは、親を縛るためではなく、親に何かあった時に、親をきちんと支えるための準備です。
たとえば、
「急な入院の時に困らないように、保険証の場所だけ確認しておきたい。」
「何かあった時にお母さんの希望を大切にしたいから、病院のことを少し教えてほしい。」
「家族が慌てないように、必要なものを一緒に整理しておきたい。」
このように伝えれば、目的は「支配」ではなく「安心」だということが伝わりやすくなります。
最初に整理しておきたい情報
では、何を整理しておくとよいのでしょうか?
全部を一度にやる必要はありません。
まずは、次のような基本情報からで十分です。
1. 通院先・かかりつけ医
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どこの病院、クリニックに通っているか
-
何科に通っているか
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主治医の名前
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次回の受診予定
2. 薬の情報
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飲んでいる薬
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お薬手帳の有無
-
薬の保管場所
-
飲み忘れの有無や管理方法
3. 保険証・診察券などの場所
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健康保険証
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診察券
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介護保険証
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限度額認定証など必要な書類
4. 緊急連絡先
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家族の連絡先
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近くに住む親族
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親が頼っている人
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緊急時に連絡してほしい順番
5. 親の基本情報
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生年月日
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住所
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既往歴
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アレルギー
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これまでの入院歴や大きな病気
6. 本人の希望
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具合が悪くなった時、誰に頼りたいか
-
どこで暮らしたいと思っているか
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どのような支援なら受け入れやすいか
7. 相談先
-
親の住んでいる地域のシニアサポートセンター
-
自分の住んでいる地域の相談先
-
必要に応じた専門機関
「連絡ノート」を1冊作るだけでも違う
情報整理というと、大げさに感じるかもしれません。
でも、まずはノート1冊でも十分です。
たとえば、「連絡ノート」として、
-
通院先
-
かかりつけ医
-
薬
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緊急連絡先
-
保険証の場所
-
大切な書類の置き場所
-
親が気にしていること
-
何かあった時に家族で共有したいこと
などを書いておくだけでも、いざという時の安心感は大きく変わります。
手書きでもかまいません。
完璧でなくても大丈夫です。
「分かる人しか分からない状態」から、「家族が見て分かる状態」に近づけることが大切です。
家族だけで抱え込まないために
情報が整理されていないと、家族は「自分が何とかしなければ」と背負い込みやすくなります。
でも、すべてを家族だけで解決しようとしなくて大丈夫です。
介護や高齢者支援には、相談できる窓口があります。
さいたま市では、シニアサポートセンターが、地域の高齢者や家族の相談窓口になっています。
「まだ介護ではない」
「まだ元気だから相談するのは早い」
と思うような段階でも、
・最近、親の物忘れが気になる
・一人暮らしが心配
・何から整理すればよいか分からない
・家族で話し合うきっかけがほしい
そんな時に、早めに相談先を知っておくことは大きな安心につながります。
情報があるだけで、家族は落ち着いて動ける
親に何かあった時、家族の不安をゼロにすることはできません。
大切な親のことですから、心配になるのは当たり前です。
でも、必要な情報が分かっているだけで、家族はずいぶん落ち着いて動けるようになります。
保険証の場所が分かる。
かかりつけ医が分かる。
飲んでいる薬が分かる。
緊急連絡先が分かる。
どこに相談すればよいか分かる。
たったそれだけでも、「どうしよう」と立ち尽くす時間は減らせます。
介護準備や終活は、難しい制度の勉強から始める必要はありません。
まずは、情報を分かる形にしておくこと。
それが、家族を助け、親を支える大きな一歩になります。
今日からできる小さな一歩
今日からできることとして、まずおすすめしたいのは次の3つです。
1つ目。
親の通院先、かかりつけ医を確認すること。
2つ目。
保険証、診察券、お薬手帳の場所を確認すること。
3つ目。
家族の連絡先を、親にも家族にも分かる形で整理すること。
そして、できればノートやメモに書き出してみてください。
家族が困るのは、気持ちが弱いからではありません。
情報がない中で、急に判断や対応を求められるからです。
だからこそ、今のうちに少しだけ整理しておく。
その小さな準備が、いざという時に親も家族も支えてくれます。
介護準備は、やさしい確認から。
終活は、安心して暮らし続けるための整理から。
まずは、今日できる一歩から始めてみませんか?

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