【第1回】その退職、本当に今決めなければいけませんか?
介護離職が頭をよぎったら...。
介護離職を決断する前にやるべきこと
「親の介護が始まった。これから仕事を続けられるのだろうか...」
「職場に迷惑をかけるくらいなら、自分が退職した方がよいのではないか」
「親のことも心配。でも、自分の生活や将来も不安...」
そんな思いが頭をよぎったことはありませんか?
親の介護は、ある日突然始まることがあります。
昨日まで元気だった親が転倒して入院する。
認知症の症状が進み、一人暮らしが難しくなる。
退院できることになっても、以前と同じ生活には戻れない。
こうした出来事をきっかけに、仕事と介護の両立に悩む方は少なくありません。
しかし、ここで一つ、お伝えしたいことがあります。
「仕事を辞めるしかない」と思ったときこそ、退職以外の選択肢を確認していただきたいのです。
今回から全30回にわたり、仕事と介護の両立について、制度や実践的な対応方法、家族との話し合い、介護費用、将来の生活設計などをお伝えしていきます。
介護離職は、決して他人事ではありません
総務省の「令和4年就業構造基本調査」によると、2022年の調査で、家族の介護・看護を理由に過去1年間に離職した人は約10万6,000人に上ります。
そのうち女性は約8万人、男性は約2万6,000人でした。
介護離職は女性だけの問題ではありません。
働き盛りの40代・50代、そして定年や再雇用を考える60代にとっても、人生を大きく左右する問題です。
特に50代は、仕事で重要な役割を担っている一方、親の介護が現実的な問題になる時期でもあります。
自分のキャリア、親の生活、子どもの教育費、住宅ローン、そして自分自身の老後資金。
いくつもの責任が重なる時期に、突然「介護」という課題が加わるのです。
だからこそ、介護離職について考えることは、単に仕事を続けるか辞めるかという問題ではありません。
これからの人生をどう守るか、という問題でもあるのです。
「仕事を辞めれば介護に専念できる」は本当でしょうか?
親の介護が大変になったとき、
「仕事を辞めれば時間ができる」
「自分が毎日面倒を見れば、何とかなる」
そう考えるのは自然なことかもしれません。
しかし、退職したからといって、介護の問題がすべて解決するとは限りません。
例えば、次のようなことが起こる可能性があります。
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介護の負担が自分一人に集中する
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収入が減り、家計や老後資金に影響が出る
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再就職を希望しても、条件に合う仕事が見つからない
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介護が長期化し、心身の疲労が蓄積する
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社会とのつながりが減り、孤立感が強くなる
親の介護が何年続くかは、誰にも正確には分かりません。
そして、親の介護が終わった後も、ご自身の人生は続いていきます。
もちろん、健康状態や家庭の事情などによって、退職が必要な場合もあるでしょう。
退職という選択そのものが悪いわけではありません。
大切なのは、十分な情報を得て、ほかの選択肢と比較したうえで決断することです。
退職を決める前に、まず3つのことを整理してみませんか?
私は、仕事と介護の両立に悩んでいる方に、まず次の3つを確認していただきたいと考えています。
① 今、何に困っているのかを具体的にする
「介護が大変」という言葉だけでは、解決方法が見つかりにくいものです。
例えば、
「平日の通院付き添いで、毎月何度も仕事を休まなければならない」
「親が一人で入浴できず、毎日の介助が必要になっている」
「認知症の親が外出してしまうため、仕事中も心配で落ち着かない」
このように困りごとを具体的にすると、必要な支援も見えてきます。
通院への付き添いが問題なら、家族間の分担や通院支援サービスを検討できるかもしれません。
日常的な身体介護が必要なら、介護保険サービスを利用できる可能性があります。
まずは、「何が大変なのか」「誰の支援があれば負担を軽くできるのか」を整理してみましょう。
② 会社の制度を確認する
介護が始まったからといって、すぐに退職を考える必要はありません。
育児・介護休業法には、仕事と介護を両立するための制度があります。
代表的なものが介護休業です。
一定の要件を満たす場合、対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限として分割取得できます。
ここで重要なのは、介護休業が単に自分で介護を続けるための休みではなく、仕事と介護を両立する体制を整えるために活用できる制度だということです。
また、介護休暇、短時間勤務等の措置、所定外労働の制限などもあります。
2025年4月からは、介護に直面したことを申し出た従業員に対し、企業が介護休業等の制度について個別に周知し、利用意向を確認することなどが義務化されました。
ただし、制度によって対象条件や利用できる期間が異なります。
まずは勤務先の人事担当者や上司に相談し、利用できる制度を確認してみてください。
③ 家族だけで介護を抱え込もうとしていないか確認する
「親の介護は子どもがするもの」
「長男だから、長女だから、自分がやらなければ」
そうした責任感から、介護を一人で抱え込んでしまう方もいます。
しかし、家族がすべての介護を担う必要はありません。
地域包括支援センターやケアマネジャー、介護保険サービスなど、相談・支援の仕組みがあります。
親がまだ介護保険サービスを利用していない場合は、まず親の住む地域の地域包括支援センターや市区町村の介護保険担当窓口に相談してみましょう。
すでにケアマネジャーがいる場合は、「自分は仕事を続けたい」という希望をはっきり伝えることも大切です。
また、兄弟や親族と、通院付き添い、買い物、見守り、費用負担、緊急連絡などについて話し合っておきたいものです。
介護は一人で頑張ることよりも、支える仕組みをつくることが大切です。
私が大切にしている「親も子も笑顔の終活」という考え方
私は、国家資格キャリアコンサルタントとして、また家族の介護を経験した立場から、仕事と介護の両立を支援しています。
そして、父の看取りも経験しました。
介護の現場では、事前に想定していたとおりに物事が進むとは限りません。
親の状態が急に変化することもあれば、入退院や施設選びなど、短期間で重要な判断を迫られることもあります。
私自身、家族の介護を通じて、こうした「想定外」の現実を経験してきました。
その中で大切だと感じているのは、親のことだけでなく、介護をする子ども自身の生活や将来も大切にするという視点です。
親を大切にすることと、自分の人生を大切にすることは、決して矛盾するものではありません。
親の安心と子どもの安心。
その両方を考えることが、私の目指す「親も子も笑顔の終活」につながると考えています。
今日からできる、小さな3つの行動
この記事を読んでくださった方に、ぜひ取り組んでいただきたいことがあります。
1つ目:今困っていることを紙に書き出す
通院、食事、排せつ、見守り、家事、費用など、何が負担になっているのか整理してみてください。
2つ目:相談できる相手を一人見つける
職場の人事担当者、地域包括支援センター、ケアマネジャー、きょうだいなど、まずは誰か一人に相談してみましょう。
3つ目:退職以外の選択肢を一つ調べる
介護休業、介護保険サービス、働き方の調整など、利用できそうな制度や支援を確認してみてください。
すべてを一度に解決しようとする必要はありません。
まずは、一歩だけ行動してみることが大切です。
最後に―あなた自身の人生も大切にしてください
親の介護は、家族にとって大切な問題です。
しかし、介護をする方にも、仕事があり、生活があり、これからの人生があります。
仕事を続けることだけが正解ではありません。
退職することだけが解決策でもありません。
大切なのは、焦って一つの選択肢に絞り込むのではなく、利用できる制度や支援を知り、自分と家族に合った方法を考えることです。
「介護離職が頭をよぎったら、まず相談する。そして、選択肢を整理する。」
このことを、ぜひ覚えておいていただきたいと思います。
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次回予告
第2回「親が突然倒れた!最初の数日間にやるべきこと」
親が突然倒れたとき、何から手をつければよいのか。
医療機関との連絡、職場への報告、家族間の役割分担、介護サービスの相談など、最初に確認しておきたいことを具体的に解説します。
参考資料・公的情報
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総務省統計局「令和4年就業構造基本調査」
https://www.stat.go.jp/data/shugyou/2022/
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厚生労働省「仕事と介護の両立ポイント」
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/kaigo/balance/
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厚生労働省「法改正のポイント」
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/kaigo/law-amendment/
キャリア&ライフプラントータルサポート
代表 山岸 博幸
https://career-life.org/
