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埼玉県さいたま市を拠点に、企業の介護離職防止・仕事と介護の両立支援、個人の介護準備・終活相談を提供。

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【第3回】「うちの社員は大丈夫」は本当か? 経営者が気づきにくい介護の問題

第3回 うちの社員は大丈夫」は本当か?

社員50人以下の会社を守る!介護離職防止の実践講座
~小さな会社だからこそできる、人材を守る30の取り組み~

はじめに―「うちの会社では介護の相談なんて聞いたことがない」

「うちの会社では、介護で困っている社員はいないと思います」

経営者の方から、そんな言葉を聞くことがあります。
 

確かに、これまで介護を理由とした退職がなく、社員から相談を受けた経験もなければ、特別な対策は必要ないと感じるかもしれません。

しかし、ここで一つ考えていただきたいことがあります。
 

「介護の相談がないこと」と「介護で困っている社員がいないこと」は、本当に同じでしょうか。
 

社員が家族の介護をしていても、会社には伝えていない場合があります。
 

「家庭のことを会社に話す必要はない」

「上司や同僚に迷惑をかけたくない」

「相談したことで、仕事上の評価に影響したら困る」
 

そう考える社員がいても不思議ではありません。
 

もちろん、介護をしている社員が全員、仕事との両立に悩んでいるわけではありません。

会社の支援を必要としていない方もいるでしょう。
 

しかし、相談が寄せられていないという理由だけで、「問題は存在しない」と判断するのは早計です。

今回の第3回では、社員の介護問題が経営者から見えにくくなる背景と、社員50人以下の会社が今から取り組める対策を考えていきます。
 

厚生労働省委託調査が示す「職場に相談しにくい」という現実

まず、客観的な調査結果を確認しましょう。
 

厚生労働省の委託により実施された「令和6年度仕事と介護の両立等に関する実態把握のための調査研究事業」では、家族の介護・手助けを行っている労働者などを対象に、職場環境や相談状況について調査しています。
 

調査は2024年12月にインターネット調査として行われ、2025年3月に報告書がまとめられました。
 

このうち、介護をしている正規労働者1,100人に対する調査では、「介護のことについて、上司や同僚に話したり、相談したりできる雰囲気が職場にあると思うか」

という質問に対して、

  • 「あまりそう思わない」25.4%

  • 「そう思わない」17.8%

という結果が示されています。
 

合わせると、43.2%が、介護について職場で相談できる雰囲気があるとは思っていないことになります。

つまり、この調査では、介護をしている正規労働者の約4割が、職場の相談しやすさに否定的な認識を持っていたのです。
 

ただし、これは従業員50人以下の企業だけの調査結果ではなく、インターネット調査の回答者についての数値です。

全国のすべての社員や、小規模企業の社員の43.2%が同じ状況にあると断定できるものではありません。
 

また、この数字は「実際に会社に相談しなかった人の割合」ではなく、「相談できる雰囲気があるとは思わない人の割合」です。

それでも、経営者が知っておきたい重要な調査結果だと考えます。
 

【出典】
厚生労働省「令和6年度仕事と介護の両立等に関する実態把握のための調査研究事業」労働者調査結果の概要・32ページ、図表33「介護に関する職場への相談しやすさ」
https://www.mhlw.go.jp/content/11911000/001535332.pdf
 

なぜ、社員の介護問題は経営者から見えにくいのか

私は、企業の組織運営とキャリア支援の視点から、特に3つの点に注意が必要だと考えています。

① 介護は家庭内の問題だと考えている

親の介護は、もともと家庭の中で対応するものだと考えている社員もいるでしょう。

実際、家族介護には、親の健康状態、認知症の症状、金銭面、兄弟姉妹との役割分担など、非常に個人的な事情が関わります。

そのため、社員が会社に詳しい事情を伝えたくないと思うことは自然です。

企業として大切なのは、家庭の事情を必要以上に聞き出すことではありません。

本人のプライバシーを尊重しながら、仕事への影響が生じた場合には相談できる環境を整えることです。
 

② 仕事に責任感を持つ社員ほど、相談をためらう場合がある

例えば、長年会社を支えてきたベテラン社員が、
 

「今、自分が休めば仕事が回らなくなる」

「同僚に負担をかけたくない」
 

と考える可能性があります。
 

これは実務上想定される一例であり、責任感の強い社員ほど必ず相談をためらうという統計的事実を示すものではありません。

しかし、経営者としては、日頃から重要な役割を担っている社員ほど、必要なときに業務を調整できる仕組みがあるか確認しておくべきでしょう。

相談しにくい原因を、社員個人の性格や考え方だけに求めないことが重要です。
 

③ 社内制度や相談先を知らない

介護休業や介護休暇などの制度があっても、社員が利用方法を知らなければ、必要なときに活用できません。
 

会社の制度について、どこに書いてあるのか。

誰に相談すればよいのか。

仕事を続けるために、どのような選択肢があるのか。
 

こうした情報が伝わっていなければ、社員は「介護が始まったら仕事を辞めるしかない」と考えてしまう可能性があります。

制度の存在だけでなく、社員が制度を理解し、安心して申し出られる状態になっているかが重要です。
 

【2026年10月現在】企業には既に介護離職防止に関する義務があります

ここで、法律上の対応についても確認しておきましょう。
 

2025年4月1日に施行された改正育児・介護休業法により、企業には介護離職防止のための新たな措置が義務づけられています。

2026年10月現在、これらは施行済みの義務です。
 

主な内容は次のとおりです。
 

① 介護休業等を利用しやすい雇用環境の整備
企業は、研修の実施、相談体制の整備、利用事例の収集・提供、制度利用促進方針の周知という4つの措置から、少なくとも1つを実施する必要があります。


② 介護に直面した社員への個別周知・意向確認
社員から介護に直面した旨の申し出があった場合には、制度や申出先などを個別に周知し、利用意向を確認しなければなりません。


③ 40歳前後の社員への早期情報提供
介護が始まる前の段階で、介護休業制度等について情報提供することも義務となっています。


これらは、従業員50人以下という会社規模だけで免除されるものではありません。

なお、研修の実施と相談窓口の設置の両方が、すべての企業に一律で義務づけられているわけではありません。

法律上の義務と、企業が自主的に行うことが望ましい対策は区別して理解する必要があります。


【出典】
厚生労働省「介護休業制度特設サイト/法改正のポイント」
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/kaigo/law-amendment/
 

経営者に必要なのは、社員の介護事情を探ることではない

ここは、私が特に強調したい点です。
 

社員の介護問題が見えにくいからといって、経営者が社員全員に家庭の事情を詳しく尋ねればよいわけではありません。
 

例えば、
 

「あなたの親は元気ですか?」

「認知症の家族はいませんか?」

「これから誰が介護をする予定ですか?」
 

といった個人的な質問を、社員に一律に行うことは慎重に考える必要があります。
 

特に小規模企業では、少ない情報から本人や家族の事情が周囲に伝わってしまう可能性もあります。

企業が最初に確認すべきなのは、社員個人の家庭事情ではなく、会社として必要な支援体制が整っているかどうかです。
 

「介護が始まったとき、どこへ相談すればよいか」

「利用できる制度を知っているか」

「制度利用を申し出た社員に対して、適切に対応できるか」
 

こうしたことを確認する方が、実務上の改善につながると考えます。
 

社員50人以下の会社が始めたい5つの取り組み

では、小規模企業では具体的に何から始めればよいのでしょうか。
 

ここからは、私がお勧めする実務上の取り組みをご紹介します。

なお、これらは法律上の義務をすべて網羅したものではなく、職場環境を改善するための提案です。

① 経営者から仕事と介護の両立を支援する姿勢を伝える

例えば、朝礼や社内ミーティングで、「家族の介護が必要になったときは、一人で抱え込まず、退職を決める前に相談してください」と伝えることが考えられます。

ただし、言葉だけでは十分ではありません。
 

相談できる担当者や利用できる制度を示すことが重要です。
 

② 介護に関する制度と相談先を分かりやすく周知する

介護休業・介護休暇等の制度、申出先、相談方法などを一覧にして、従業員が確認できるようにします。

厚生労働省の資料を活用すれば、社内向けの案内を一から作成する負担を抑えられます。
 

【参考】
厚生労働省「仕事と介護の両立支援 ~両立に向けての具体的ツール~」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/model.html
 

③ 社員の意向を尊重した相談対応を行う

介護について相談があったときは、会社が一方的に働き方を決めるのではなく、本人の希望を確認します。

また、相談内容の共有範囲は必要最小限とし、誰が情報を管理するのかを決めておくことが大切です。
 

④ 業務が特定の社員だけに集中しない体制をつくる

介護のために休暇が必要になったとき、他の社員が業務を引き継げるようにしておくことも重要です。

これは介護に限らず、病気や育児などによる急な欠勤への備えにもつながります。
 

⑤ 自社の支援体制を定期的に点検する

一度制度を周知したら終わりではありません。

担当者が変わった場合にも適切に対応できるか、必要な情報が最新の状態になっているかなどを確認します。

制度があることに安心するのではなく、必要なときに機能する状態を維持することが大切です。
 

「相談がない会社」から「必要なときに相談できる会社」へ

経済産業省は、2026年3月に「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」を改訂しました。

このガイドラインでは、仕事と介護の両立支援を、人材不足に対するリスクマネジメントや人的資本経営の観点から重要な経営課題として位置づけています。
 

【出典】
経済産業省「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」(2026年3月改訂)
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kaigo/kaigo_guideline.html


私は、社員50人以下の会社にとって重要なのは、社員全員の介護事情を把握することではないと考えています。

むしろ、「介護に直面した社員が、必要なときに安心して相談できる会社になっているか」という視点が重要です。
 

従業員が少ないからこそ、経営者の考え方や日頃のコミュニケーションが、職場に伝わりやすい面があります。

その特徴を、社員の働きやすさにつなげていきたいものです。
 

キャリアコンサルタントとして、そして父母の介護と父の看取りを経験した家族として

私は、生命保険業界で約20年間、営業管理職を経験した後、キャリアコンサルタントに転身しました。

これまで12年以上にわたり、5,200名以上の就職・キャリア支援に携わってきました。
 

また、2023年からは私自身も父母の介護を経験し、2026年9月には父の看取りも経験しました。

専門家として働く人の悩みに向き合ってきた経験と、実際に家族の介護を担った経験。
 

その両方を通じて、私が大切だと感じていることがあります。
 

それは、仕事と介護の両立について、誰もが同じ考え方や事情を持っているわけではないということです。
 

介護の状況を会社に詳しく伝えたい方もいれば、必要な範囲にとどめたい方もいるでしょう。

今の仕事をできる限り続けたい方もいれば、家族との時間や今後の働き方について悩んでいる方もいるかもしれません。
 

だからこそ、企業が一方的に答えを出すのではなく、社員本人の思いや希望を尊重することが大切だと考えています。

介護離職防止は、社員を無理に会社へ引き留めるための取り組みではありません。
 

本人が働き続けたいと考えているときに、退職以外の選択肢も検討できる環境を整えること。

そのために、会社として何ができるかを考えていくことが重要です。
 

おわりに――「相談がないから安心」という思い込みを見直す

今回の記事で、経営者の皆様にお伝えしたかったのは、次のことです。
 

介護の相談がないことは、会社に介護の問題が存在しないという証拠にはなりません。
 

一方で、社員の家庭事情を詳しく把握することが、介護離職防止の目的でもありません。

必要なのは、法令上の義務を適切に果たし、利用できる制度を周知し、社員が安心して相談できる環境を整えることです。
 

まずは、次の問いを自社に投げかけてみてください。
「うちの会社では、社員が介護に直面したとき、安心して相談できるだろうか?」


その問いが、介護離職防止に向けた大切な一歩になると考えています。

次回、第4回は、「なぜ社員は会社に介護の悩みを相談できないのか?」をテーマに、社員が相談をためらう背景や、管理職に求められる対応について、さらに詳しく考えていきます。
 


【経営者・幹部社員・人事担当者の皆様へ】御社の介護離職への備えを確認してみませんか?

「うちの会社は介護の相談がないから大丈夫」

本当にそうでしょうか。
 

キャリア&ライフプラントータルサポートでは、中小企業の経営者・人事担当者の皆様に向けて、「介護離職危険度チェック(無料)」をご用意しています。

自社の制度や相談体制、従業員への情報提供などを振り返るきっかけとして、ぜひご活用ください。
 

▼介護離職危険度チェック(無料)
https://fwjmj.hp.peraichi.com/
 

※このチェックは自社の現状把握を支援するものであり、法令への適合性を公的に証明するものではありません。

また、企業の規模や課題に応じて、次のような支援も提供しています。
 

  • 仕事と介護の両立・介護離職防止に関する企業研修

  • 従業員向け個別カウンセリング

  • 経営者・人事担当者向けコンサルティング

  • 「認知症世界の歩き方」実践ワークショップ

「認知症世界の歩き方」実践ワークショップは、認知症のある方が体験する世界への理解を深め、家族介護への備えや仕事と介護の両立を考えるきっかけとなる体験型プログラムです。


▼法人向けサービスのご案内
https://career-life.org/corporate_services.html


キャリア&ライフプラントータルサポート
代表 山岸 博幸
国家資格キャリアコンサルタント
「認知症世界の歩き方」公認ファシリテーター(旅のガイド)
 


参考資料・出典

1.厚生労働省「令和6年度仕事と介護の両立等に関する実態把握のための調査研究事業」

2024年12月調査、2025年3月報告。労働者調査結果の概要・32ページ、図表33「介護に関する職場への相談しやすさ」を参照。https://www.mhlw.go.jp/content/11911000/001535332.pdf


調査事業の公式掲載ページ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000200711_00009.html


2.厚生労働省「介護休業制度特設サイト/法改正のポイント」
2025年4月1日施行の介護離職防止に関する事業主の義務を確認。
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/kaigo/law-amendment/


3.厚生労働省「仕事と介護の両立支援 ~両立に向けての具体的ツール~」社内研修資料、制度周知資料、実態把握調査票、面談シートなどを参照。https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/model.html


4.経済産業省「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」2026年3月30日改訂。企業経営における仕事と介護の両立支援の重要性、経営者の役割、取り組みの進め方を参照。
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kaigo/kaigo_guideline.html


5.厚生労働省 Webマガジン「働きながら育児・介護を両立――“働き続けられる職場”を考える」
2026年9月10日公開。仕事と介護の両立に関する直近の行政解説として参照。
https://www.mhlw.go.jp/web_magazine/feature/20260910.html
 


※本記事は2026年10月24日時点で確認できる公的資料をもとに作成しています。
統計は調査時点・対象・質問内容を明記し、調査結果と筆者の実務上の考察を区別しています。
具体的な法令適用や就業規則等の整備については、厚生労働省・都道府県労働局の最新情報を確認し、必要に応じて社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

2026年10月24日 07:40

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