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想定外の介護|第9回 施設で穏やかに暮らしてくれて安心。でも、毎月の費用は想像以上だった

穏やかな暮らしと介護費用

介護には「安心を得るための経済的負担」もあった

※この記事は、私自身の父母の介護経験をもとに構成しています。
介護施設の料金や負担額は、施設の種類、要介護度、所得、医療の必要性、地域などによって異なります。
また、この記事は介護施設の料金設定を批判するものではありません。
父母が安全に暮らせる環境を提供してくださった施設には、家族として大きな安心と感謝を感じています。
 


「施設に入ってくれて、本当に良かった」

父母が介護施設で暮らすようになってから、私には大きな安心がありました。
 

食事を用意していただける。

排せつを支援していただける。

薬を確認していただける。

入浴も手伝っていただける。

夜間も、何かあれば職員の方がいる。
 

父の場合には、インスリンや体調の変化への対応もありました。
 

母についても、排せつや歩行、認知面など、家族だけでは到底24時間支えきれない部分を施設の方々に支えていただいています。
 

「施設に入ってくれて良かった」

これは、私の率直な気持ちでした。
 

それまでの介護への不安が、ずいぶん軽くなりました。

でも、その安心と同時に、別の現実がありました。

毎月かかる介護施設の費用です。
 


「これくらいだろう」と思っていた金額では済まなかった

施設を探している時には、もちろん費用も確認します。
 

月額はいくらなのか。

食費はいくらなのか。

居住費はどのくらいなのか。
 

家族としても、ある程度の覚悟を持って入居を決めます。

ですから、費用がかかること自体は分かっていました。
 

それでも、実際に毎月支払いが続くようになると、「思っていたより負担が大きい」と感じることがありました。
 

一度支払えば終わりではありません。

翌月も。

その次の月も。
 

そして、その先も続きます。
 

介護施設への入居は、家電製品を買うような一回限りの支出ではありません。

毎月続く生活費なのです。
 


「月額料金」だけを見ていた

施設選びをしている時には、どうしても表示されている「月額費用」に目が向きます。
 

でも、実際に生活が始まると、それ以外にも支出があります。
 

医療機関を受診すれば医療費がかかります。

薬があれば薬代もあります。

日用品も必要です。
 

衣類や消耗品が必要になることもあります。

本人の状態によっては、介護や医療に関連する費用が増えることもあります。
 

一つ一つを見ると、それほど大きな金額ではないように思えるものもあります。

しかし、それが積み重なっていきます。

私はそこで、『「施設費用」と「施設で生活するために必要なお金」は、必ずしも同じではない』と感じるようになりました。
 


安心できるからこそ、簡単にはやめられない

ここが、介護費用の難しいところだと思います。
 

もし単なるサービスなら、「高いからやめよう」という判断もできます。

でも、介護施設は違います。
 

そこには親の生活があります。

父母が安全に暮らしている。

職員の方々が毎日見てくださっている。

食事をとり、排せつし、薬を飲み、眠る。
 

その生活を、「費用が高いから来月からやめよう」とは簡単に言えません。
 

特に、自宅に戻した場合に家族だけで支えることが難しい状態であれば、なおさらです。
 

つまり、「経済的には負担を感じても、生活を維持するためには必要な支出」になっていきます。

これも、私には大きな想定外でした。
 


「施設に入れば家族の負担が減る」は半分正しかった

施設に入居すると、家族の直接的な介護負担は確かに減ります。
 

夜中に何度も起きる。

排せつを手伝う。

食事を毎日作る。

薬を管理する。

入浴を手伝う。
 

こうした身体的な負担を、専門職の方々が支えてくださいます。
 

その意味では、「施設に入ってくれて助かった」という気持ちは間違いなくありました。
 

でも、負担が「なくなる」わけではありません。

形が変わります。
 

身体的な介護負担が減る一方で、
 

毎月の費用。

施設との連絡。

医療に関する判断。

必要品の準備。

家族としての意思決定。
 

そうした別の負担が残ります。
 

介護の負担は消えるのではなく、形を変えることがある。

私は実際に経験して、そのことを知りました。
 


介護が長く続けば、総額は大きくなる

毎月の金額だけを見ると、「何とか払える」と思うかもしれません。
 

でも、それが一年続いたらどうでしょう。

二年なら。

五年なら。
 

もちろん、親にいつまで介護が必要なのかを正確に予測することはできません。

そこが介護費用の難しいところです。
 

毎月いくらかかるのか。

それが何年続くのか。
 

どちらも完全には読めません。
 

そして家族としては、「長生きしてほしい」と思う一方で、長く生活すれば、それだけ生活費や介護費用も必要になります。
 

この二つの気持ちは、決して矛盾しているわけではありません。

でも、実際に支払いを続けていると、現実的なお金の問題から目をそらすこともできません。
 


「親のお金で何とかなる」と思っていても

施設費用について考える時、
 

「親の年金で払えばいい」

「親の預貯金があるから大丈夫」
 

と思うご家庭もあると思います。
 

それで十分まかなえる場合もあります。
 

ただ、介護が長期化した場合はどうか。

医療費が増えたらどうか。

もう一人の親にも介護が必要になったらどうか。

そして、本人が自分で銀行手続きをできなくなったらどうか。
 

介護のお金は、単純に、「残高があるか」だけではありません。

「必要な時に、そのお金を適切に使える状態になっているか」という問題も出てきます。
 

これは、後の連載で、私自身がさらに強く感じることになります。
 


父と母、二人の介護になると意味が変わった

親一人分の介護費用を考えるのと、父母二人分を考えるのでは意味が違います。
 

私の場合、父だけではありませんでした。

母にも介護が必要になりました。
 

介護は、「父が終わってから母」と順番に来てくれるわけではありません。
 

親二人の生活を同時に考えなければならないことがあります。
 

その時、
 

毎月いくら必要なのか。

年金はどのくらいあるのか。

預貯金はどうなっているのか。

家族としてどこまで支えられるのか。
 

こうしたことが、急に現実の問題になります。
 

「親が二人いる」という、ごく当たり前のことが、介護が始まると、「二人分の介護生活をどう支えるか」という問題に変わることがあります。
 


お金の話をすると、親を大切にしていないようで嫌だった

介護費用について書くことには、少し抵抗もあります。
 

親の介護とお金を結びつけると、「親よりお金が大事なのか」と思われるのではないか。

そんな気持ちもあります。
 

でも、実際に介護を続けるためには、お金の問題を避けることはできません。

介護施設も、職員の方々の仕事によって成り立っています。
 

食事があります。

建物があります。

24時間の支援があります。

医療や介護の専門職がいます。
 

費用が必要なのは当然です。
 

だから、問題は、「高い、安い」だけではないと思っています。

大切なのは、「家族がどのくらいの費用が続く可能性があるのかを、現実として知っているか」ではないでしょうか。
 


「安心」と「負担」は同時に存在する

この経験から、私は一つのことを強く感じました。
 

介護では、「良いこと」と「大変なこと」が同時に存在します。
 

施設に入ってくれた。

安心した。
でも費用はかかる。
 

職員の方が見てくださる。

ありがたい。

でも毎月の支払いは続く。
 

親が安全に暮らしている。

嬉しい。

でも将来のお金も気になる。
 

どちらか一方だけが本当なのではありません。

どちらも本当です。
 

介護では、こうした複雑な感情を抱えることがあります。
 


「そんなにお金がかかるとは思わなかった」

介護が始まる前には、施設に入った場合の費用を具体的に想像したことがない方も多いのではないでしょうか。

私自身も、「介護にはお金がかかる」という知識はありました。
 

でも、「知識として知っていること」と、「毎月実際に支払うこと」は違います。
 

一回ではない。

いつまで続くか分からない。

父母二人に必要になることもある。

医療費や日用品などもある。
 

そこで初めて、「介護は、生活そのものを支える長期的な経済課題でもある」と実感しました。
 


介護の想定外は「身体の変化」だけではなかった

これまでこの連載では、
 

排せつ。

インスリン。

急変。

入浴拒否。

服薬管理。
 

といった、身体や生活に関わる想定外を書いてきました。
 

しかし介護の想定外は、それだけではありません。

お金にも起きます。
 

施設に入れば安心。

これは本当でした。
 

でも、「安心できたから、もう問題はない」ではありませんでした。

親が安心して生活できる環境を維持するためには、経済的な支えも必要です。
 

これもまた、私が実際に介護を経験して知った「想定外の介護」の一つでした。
 


「うちの親が施設に入ったら」と考えたことがありますか

親がまだ元気なうちは、施設費用について具体的に考える機会は少ないと思います。
 

施設の種類もよく分からない。

いくら必要かも分からない。

そもそも施設に入るかどうかも分からない。
 

だから後回しになります。

それは自然なことです。
 

ただ、介護が始まると、その判断を短期間で迫られる場合があります。
 

その時初めて、

「月々どのくらい必要なんだろう」

「親の年金で足りるのだろうか」

「何年続いても大丈夫なのだろうか」
 

という現実が目の前に来ます。

私は、不安を煽りたいわけではありません。
 

この連載で伝えたいのは、いつも同じです。

「そんなことも起こるんだ」と知っていただくことです。
 

施設で穏やかに暮らしてくれる。

それは家族にとって、本当にありがたいことです。
 

そして、その安心を支えるためには、「継続して必要になるお金がある」。

それもまた、介護の現実なのだと思います。
 


私が作成した「親が倒れる前の介護準備チェックシート」には、「親の年金額を把握している」「通帳・印鑑・キャッシュカードの保管場所を知っている」「主な銀行口座を把握している」といった、お金に関する項目も入れています。
 

介護準備というと、施設探しや病院のことばかり考えがちですが、「親の介護を、経済的にどう支えるのか」について知っておくことも、大切な準備の一つだと感じています。
 

▼親が倒れる前の介護準備 簡易診断アプリはこちらから
 

▼親が倒れる前の介護準備チェックシートはこちらから
 

▼親の介護や介護準備が気になっている方はこちらをご覧ください。

2026年10月21日 10:46

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