父を見送って―家族として経験した葬儀・納骨・相続の記録(第3回)
第3回 葬儀が終わってから始まった手続き―未支給年金・遺族年金・葬祭費
2026年9月15日(火)午前6時44分、父が亡くなりました。
前日まで特別養護老人ホームでいつも通り過ごしていた父が、早朝に突然倒れ、病院へ緊急搬送され、そのまま帰らぬ人となりました。
9月18日(金)には、家族で父を見送り、直葬という形で葬儀を終えました。
葬儀を終えた時、正直なところ、「これで少し落ち着ける」という思いもありました。
しかし、実際には違いました。
葬儀が終わったところから、遺族としてのさまざまな手続きが始まったのです。
その中でも、比較的早い段階で確認することになったのが、
・未支給年金
・遺族年金
・葬祭費
でした。
今回は、父を見送った家族として実際に向き合ったこれらの手続きについて書いてみたいと思います。
葬儀が終わっても、「何をすればいいのか」が次々に出てくる
親が亡くなった後の手続きについては、私自身も仕事柄ある程度は知っていたつもりでした。
しかし、「知識として知っていることと、自分の父を亡くした直後に自分で手続きをすることは全く違う。」
今回、改めてそう感じました。
葬儀を終えたばかりでも、
「年金はどうなるのだろう」
「父がまだ受け取っていない年金はあるのか」
「母には遺族年金が支給されるのか」
「健康保険から受け取れる給付はあるのか」
といったことを、一つひとつ調べなければなりません。
そして、そのたびに、
年金証書はどこにあるのか。
戸籍謄本は必要なのか。
どの種類の戸籍謄本を取得すれば良いのか。
住民票は必要なのか。
必要な通帳は誰のものか。
誰の名義で申請するのか。
委任状は必要なのか。
どのタイミングで父の死亡を銀行に伝えるか。
という新しい確認事項が出てきます。
父を亡くした直後だからこそ、「こんな時くらい、ゆっくり父のことを考えていたい」という思いもあります。
しかし現実には、そうもいきませんでした。
「未支給年金」という制度を改めて知る
最初に確認した一つが、父の年金でした。
年金は、亡くなったその日で単純にすべてが終了するわけではありません。
日本年金機構によると、年金は亡くなった月分まで支給され、まだ本人が受け取っていない年金などについては、一定の条件を満たす遺族が「未支給年金」として請求できる制度があります。
未支給年金を受け取ることができる遺族には順位があり、亡くなった方と生計を同じくしていた、
配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹、その他3親等内の親族
の順となっています。
父の場合にも、
「これから振り込まれる予定だった年金はどうなるのか」
「どの分が父の年金として受け取れるのか」
を確認する必要がありました。
普段、年金を受け取っている時には、振込日や「何月分なのか」をそこまで意識しない方も多いのではないでしょうか。
しかし亡くなった途端、それらを正確に確認する必要が出てきます。
これも、実際に当事者になって初めて感じたことでした。
「未支給年金」と「遺族年金」は別のもの
ここで、私自身も改めて整理する必要があったことがあります。
それが、「未支給年金」と「遺族年金」は別の制度だということです。
未支給年金は、亡くなった本人が本来受け取るはずだった年金のうち、まだ受け取っていないものを一定の遺族が請求する制度です。
一方、遺族年金は、亡くなった方の年金加入歴や家族の状況など、一定の条件を満たした場合に、残された遺族に支給される年金です。
例えば遺族厚生年金は、亡くなった方の厚生年金の加入状況や、遺族が生計を維持されていたかなどによって受給の可否が決まります。
つまり、「夫が年金を受給していたから、妻には自動的に遺族年金が入る」と単純に考えることはできません。
どの年金を受給していたのか。
加入期間はどうだったのか。
残された配偶者の状況はどうなのか。
一つひとつ確認する必要があります。
だからこそ、分からないことは自己判断せず、年金事務所などに確認することが大切なのだと感じました。
母が受け取る年金についても考えなければならない
父の死は、父一人の年金の問題だけではありませんでした。
残された母のこれからの生活にも関係します。
父が亡くなったことで、
「これから母の収入はどうなるのか」
「遺族年金はいくらになるのか」
「どの口座で受け取るのか」
ということを考えなければならなくなりました。
高齢の夫婦の場合、「お金の管理は夫が中心だった」という家庭も少なくないと思います。
元気な時には特に問題にならなくても、一方が突然亡くなることで、それまで見えていなかった課題が一気に表面化します。
これは今後、この連載の「親のお金と相続」の回でも改めて書きたいと思っています。
「埋葬費」だと思っていたら、制度によって名前も違う
もう一つ確認したのが、葬儀に関連して健康保険から支給される給付です。
一般的には「埋葬費」と呼ばれることもありますが、実際には加入していた健康保険制度によって名称が異なります。
例えば会社員などの健康保険では、「埋葬料」や「埋葬費」という制度があります。協会けんぽの場合、一定の条件で5万円の埋葬料などが支給されます。
一方、国民健康保険や後期高齢者医療制度では、「葬祭費」という名称が使われます。
さいたま市では、国民健康保険または後期高齢者医療制度の対象者が亡くなった場合、葬祭を行った方に5万円の葬祭費が支給される制度があります。
つまり、「亡くなったら一律に『埋葬費』を申請する」わけではありません。
まず、「亡くなった人が、どの健康保険制度に加入していたのか」を確認する必要があります。
これも、実際に手続きを始めてみなければ気付きにくいことだと思います。
葬儀の領収書は捨てない
今回の経験から、非常に実務的ですがお伝えしたいことがあります。
それは、葬儀に関係する領収書や書類は、すぐに捨てないことです。
さいたま市の後期高齢者医療の葬祭費申請では、葬儀を行った人と葬儀を行ったことが確認できるものとして、葬儀費用の領収書や会葬礼状などが必要になります。
父の死後、
死亡診断書のコピー
葬儀関係の領収書
年金関係の書類
銀行関係の書類
戸籍関係の書類
さまざまな書類が短期間に増えていきました。
そこで私は、「父の死後手続き関係」という形で、一か所にまとめて管理することの大切さも感じました。
「これはもう必要ないだろう」と思ったものが、後の手続きで必要になることがあります。
少なくとも一連の手続きが終わるまでは、できるだけまとめて保管しておいた方が安心だと思います。
さいたま市の「おくやみ窓口」という仕組み
さいたま市には「おくやみ窓口」があります。
亡くなった方に関して、区役所内で必要となる複数の手続きを案内・受け付けてもらえる仕組みで、国民健康保険・後期高齢者医療制度の葬祭費支給申請なども対象になっています。
身近な人が亡くなった後は、
「何課に行けばいいのか」
「どの窓口で何をするのか」
を調べること自体が負担になります。
こうした窓口があることを、元気なうちから知っておくだけでも違うのではないでしょうか。
さいたま市おくやみハンドブック
※P60以降は広告です。さいたま市が推奨している事業者ではありません。ご留意ください。
「手続き一覧」を元気なうちに作っておく意味
父の死後、私は改めて思いました。
終活というと、
遺言書
エンディングノート
葬儀
お墓
財産整理
こうしたことを思い浮かべる方が多いと思います。
しかし、家族の立場からすると、「亡くなった翌日から、家族が何をすればよいのか」が分かることも、とても重要な終活です。
例えば、
・年金証書はどこにあるか
・健康保険は何に加入しているか
・通帳はどこにあるか
・印鑑はどこにあるか
・生命保険に加入しているか
・葬儀社はどこへ連絡するか
・お墓はどこにあるか
・家族が連絡すべき人は誰か
これだけでも、家族の負担はかなり違うと思います。
父の死を経験して、終活とは「本人が安心するため」だけのものではない。残される家族が迷わないための準備でもある。
そのことを、以前より強く感じています。
悲しみと手続きは、同時にやってくる
人が亡くなった後、「しばらくゆっくり悲しむ時間がある」と思っていました。
しかし実際には、
葬儀
年金
健康保険
銀行
納骨
相続
次々と現実的な問題がやってきます。
しかも、それらを進めるのは、最も心が疲れている時期です。
今回、自分自身がその立場になって初めて分かりました。
だからこそ私は、これから終活についてお伝えする時、制度や準備の話だけではなく、「残された家族が、悲しみの中でこれだけのことをしなければならない」という現実も伝えていきたいと思っています。
そして、それを少しでも軽くするためにできることが、元気なうちの準備なのだと思います。
次回は、「父を祖父母と同じお墓へ――納骨と四十九日を考える」について、家族として実際に考え、進めていることを書いていきたいと思います。
参考
日本年金機構「年金を受けている方が亡くなったとき」 日本年金機構
さいたま市「葬祭費の手続きについて」 さいたま市
さいたま市「おくやみ窓口」 さいたま市 おくやみ窓口
▼親の介護や介護準備が気になっている方はこちらをご覧ください。

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