【第4回】介護費用は月9万円だけではない―平均数字の正しい見方
全20回連載 「老後資金を増やす前に 介護で失わない家計のつくり方」
親の介護、自分たちの介護、仕事とお金―50代・60代が今から考えたい20の現実
「介護には月9万円かかる」と聞いたら、どう考えますか?
介護費用について調べると、「介護費用は月平均9万円」という数字を目にすることがあります。
すると、「月9万円くらい準備しておけばいいのかな?」と思う方もいれば、「そんなにかかるの?」と不安になる方もいるでしょう。
しかし、私はこの「平均9万円」という数字だけで介護資金を考えることには注意が必要だと思っています。
なぜなら、介護にかかるお金は、
・在宅介護か施設介護か?
・介護が何年間続くか?
・要介護度はどの程度か?
・どのサービスを使うか?
・本人の年金や預貯金はいくらあるか?
などによって、大きく変わるからです。
大切なのは、「平均はいくらか?」ではなく、「自分の家庭では何が起こりそうか?」を考えることです。
「月9万円」の出どころを確認してみましょう
公益財団法人生命保険文化センターの「2024年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、過去3年間に介護経験がある人が負担した介護費用は、
一時的な費用 平均47.2万円
月々の費用 平均9.0万円
となっています。
この費用には、公的介護保険サービスの自己負担費用も含まれています。
また、一時的な費用には、住宅改造や介護用ベッドの購入なども含まれます。
【引用・参考】
公益財団法人 生命保険文化センター
「介護にはどれくらいの費用・期間がかかる?」
https://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/1116.html
ここでまず知っておきたいのは、「月9万円」だけが介護費用ではないということです。
介護が始まる際には、住宅環境を整えたり、介護用品を用意したりするなど、まとまった費用が必要になるケースもあります。
在宅と施設では、平均費用が大きく違います
同じ調査を介護場所別に見ると、月々の介護費用は、
在宅介護 平均5.3万円
施設介護 平均13.8万円
となっています。
平均9万円という数字の中には、こうした異なる介護の形が一緒に入っています。
つまり、「平均9万円だから、自分も月9万円」とは限らないのです。
親が、「できるだけ自宅で暮らしたい」と考えているのか?
それとも、「子どもには迷惑をかけたくないから、必要なら施設も考えたい」と思っているのか?
この違いによって、必要となるお金の考え方も変わってきます。
だからこそ、マネープランを作る前に、「本人がどのような介護を希望しているのか?」を確認することが重要なのです。
介護は「月額」だけでなく「期間」で考える
もう一つ重要なのが、介護期間です。
生命保険文化センターの同じ調査では、介護期間の平均は、55.0カ月=4年7カ月となっています。
さらに、4年を超えて介護した人も約4割います。
もちろん、「介護は必ず4年7カ月続く」という意味ではありません。
短期間で終わる方もいれば、10年以上続く方もいます。
つまり介護費用には、「毎月いくら?」という問題と、「それが何年続くか?」という二つの不確定要素があります。
よって、「平均月9万円×平均期間」だけで自分の必要介護資金を決めることにも注意が必要です。
平均値はあくまでも参考材料。
自分の家庭の予算を決める数字そのものではありません。
介護保険があるから大丈夫、とは限りません
日本には公的介護保険制度があります。
介護保険サービスを利用する場合、原則としてサービス費用の1割を本人が負担し、一定以上の所得がある人は2割または3割負担となります。
これは非常に重要な制度です。
しかし、「介護保険があるから、介護に必要なお金はほとんど心配しなくてよい」という意味ではありません。
例えば介護保険施設を利用する場合、介護サービス費の自己負担とは別に、
・居住費
・食費
・日常生活費
などの負担が必要になります。
【引用・参考】
厚生労働省 介護サービス情報公表システム
「サービスにかかる利用料」
https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/commentary/fee.html
在宅介護にも「限度額」があります
在宅で介護保険サービスを利用する場合も、好きなだけ1割、2割、3割負担でサービスを使えるわけではありません。
要介護度ごとに、1カ月に利用できる介護保険サービスの「支給限度額」が設定されています。
例えば、厚生労働省の介護サービス情報公表システムでは、1カ月あたりの利用限度額として、
要介護1 167,650円
要介護3 270,480円
要介護5 362,170円
などが示されています。
この範囲内なら原則1~3割負担ですが、限度額を超えてサービスを利用した場合、その超過部分は全額自己負担となります。
つまり、「在宅なら安い」「介護保険があるから安心」と単純には言えないのです。
高額介護サービス費という仕組みもあります
一方で、介護サービスの自己負担が高額になりすぎないよう、「高額介護サービス費」という仕組みもあります。
所得に応じて月額の負担上限が設定され、対象となる介護サービス費の自己負担が上限を超えた場合、超えた分が支給されます。
ただし、食費や居住費など一部の費用は、この上限制度の対象外です。
【引用・参考】
厚生労働省 介護サービス情報公表システム
「高額介護サービス費」
https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/commentary/fee.html
こうした制度を知っているかどうかでも、実際の家計負担は変わってきます。
「介護保険外のお金」も見落としやすい
さらに見落としやすいのが、介護保険の給付対象外となる費用です。
厚生労働省の介護サービス情報公表システムでは、介護給付以外のサービス費用として、
・通常の事業実施地域以外でサービスを受ける場合の交通費
・通所介護での食事費
・施設での居住費
・日常生活費
などが例として示されています。
【引用・参考】
厚生労働省 介護サービス情報公表システム
「いくらでサービスを提供しているか」
https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/care_services_guide/care_services_guide_03.html
さらに家庭側にも、
遠距離介護であれば実家への交通費。
病院や施設を訪問するための費用。
介護のために仕事を休むことで生じる収入減少。
などが発生する可能性があります。
こうした費用は、「介護サービスの自己負担額」だけを見ていては分かりません。
本当に怖いのは「介護費用+収入減少」
私は、50代・60代の方が介護のお金を考える際に、特に見落としてはいけないのが、「介護費用と収入減少が同時に起こる可能性」だと考えています。
例えば、親の介護のため月々の支出が増える。
その一方で、
通院同行のため休暇を取る。
残業ができなくなる。
出張を断る。
役職を辞退する。
短時間勤務になる。
そして場合によっては、介護離職をしてしまう。
すると、「介護に使うお金が増える」と同時に、「自分の収入が減る」ということになります。
介護費用を考えるときには、支出だけでなく、「仕事と収入への影響」までセットで考える必要があるのです。
平均額を「必要資金」にしてはいけない
介護費用について、
平均47.2万円。
月平均9万円。
平均4年7カ月。
こうした数字を知ることには意味があります。
しかし、平均値をそのまま自分の家庭の必要資金にしてしまうことには注意が必要です。
本当に確認すべきなのは、
① 親はどこで介護を受けたいのか?
② 親自身の年金はいくらあるのか?
③ 親の預貯金などを介護にどこまで使えるのか?
④ 兄弟姉妹など、家族でどのように支えるのか?
⑤ 自分の仕事や収入への影響はどの程度ありそうか?
ということです。
この5つが分からないまま、「平均月9万円だから...」と考えても、本当のマネープランにはなりません。
介護費用は「誰のお金から出すか」を決めることが大切
もう一つ重要なのは、「いくらかかるか?」以上に、「誰のお金から出すのか?」です。
親の介護が始まったとき、その都度子どもの財布から出していると、自分たちの家計と親の介護費用の境界が分からなくなっていきます。
基本的には、
親の年金。
親の預貯金。
親の保険。
親が保有するその他の資産。
などを確認し、「親自身のお金を中心に介護計画を立てる」ことが大切です。
そのうえで不足する場合に、誰がどこまで支援するのか?
兄弟姉妹でどう分担するのか?
を考えます。
「足りなければ子どもが払えばいい」という曖昧な状態にしておかないことが、自分たちの老後を守るうえでも重要です。
今日からできること――親の「介護のお金」を4つに分けてみる
親が元気な今、次の4項目を確認してみてください。
① 毎月入ってくるお金
・公的年金
・企業年金
・その他の定期収入
② 現在持っているお金
・預貯金
・保険
・金融資産
③ 介護が始まった際に必要となりそうなお金
・介護サービス
・住まい
・食費
・介護用品
・その他の生活費
④ 子ども側に影響しそうなお金
・交通費
・仕事を休むことによる収入減少
・一時的な立て替え
・その他の負担
すべての金額が分からなくても構いません。
まずは、「何が分かっていて、何が分かっていないのか?」を整理してみてください。
介護のお金を考える第一歩になります。
老後資金を増やす前に、介護で失わない仕組みをつくる
老後資金を考えると、「いくら貯めるか?」「どのくらい運用するか?」という話になりがちです。
しかし、親の介護について、
どこで介護するのか?
誰が動くのか?
どのお金を使うのか?
自分は仕事をどう続けるのか?
が決まっていなければ、本当の意味で自分たちの老後資金を計算することはできません。
介護費用の「平均」を知るだけで終わらない。
自分の家族の場合に置き換えて考える。
そして、「老後資金を増やす前に、介護で失わない仕組みをつくる。」これが大切だと私は考えています。
次回予告
第5回は、「介護保険があっても、すべての費用が賄えるわけではない」をテーマにお伝えします。
介護保険で利用できるサービス。
自己負担となる費用。
保険外サービス。
施設費用。
そして家族側で発生する見えにくい費用。
「介護保険があるから何とかなる」と考える前に、知っておきたいポイントを整理していきます。
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「介護と老後資金」を一度整理してみませんか?
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介護費用は、単純に「平均月9万円」で考えられるものではありません。
親の希望。
親の年金・資産。
介護期間。
在宅か施設か?
仕事への影響。
ご家庭によって条件は異なります。
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