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第1回 認知症を『怖いもの』だけで終わらせないために

第1回

本人の世界を知ることが、理解の第一歩

認知症と聞くと、多くの人がまず不安を感じるのではないでしょうか?
 

「家族のことが分からなくなるのではないか?」
「何もできなくなってしまうのではないか?」
「介護が大変になり、家族の生活が壊れてしまうのではないか?」
 

そのように感じるのは、とても自然なことだと思います。

実際、認知症は本人にとっても、家族にとっても、決して軽い問題ではありません。

生活の中で困りごとが増えたり、今まで普通にできていたことが難しくなったり、家族の関わり方にも戸惑いが生まれます。
 

ただ、ここで一つ大切にしたいことがあります。

それは、認知症を「怖いもの」「困ったもの」「どうしようもないもの」としてだけ見てしまうと、本人の本当の困りごとや、まだ残っている力が見えにくくなってしまうということです。

認知症の方は、何も分からなくなっているわけではない

認知症になると、記憶や判断、時間や場所の認識などに変化が起きることがあります。
 

同じことを何度も聞く
約束を忘れてしまう
財布や通帳をなくしたと言う
道に迷う
急に怒ったように見える
 

家族から見ると、「どうしてこんなことをするのだろう」と感じる場面が増えるかもしれません。

しかし、本人はわざと困らせているわけではありません。

本人の中では、思い出せない不安、状況がつかめない混乱、自分でもうまく説明できない戸惑いが起きていることがあります。

つまり、家族から見ると「問題行動」に見えることも、本人の側から見ると「困っているサイン」かもしれないのです。
 

ここに気づけるかどうかで、認知症の方への関わり方は大きく変わります。

「正す」よりも、まず「安心」を届ける

認知症の方と接するとき、家族はつい正そうとしてしまいます。
 

「さっきも言ったでしょ」
「それは違うよ」
「何度同じことを聞くの」
「ちゃんとして」
 

もちろん、家族にも余裕がない時があります。

仕事や家事をしながら、親の変化に向き合うのは簡単なことではありません。
 

ただ、本人が混乱している時に強く正されると、内容を理解する前に「責められた」「否定された」という感情だけが残ってしまうことがあります。

認知症の方への対応で大切なのは、まず安心してもらうことです。
 

「大丈夫ですよ」
「一緒に確認しましょう」
「心配だったんですね」
「困っていたんですね」
 

このような言葉が、本人の不安を少し和らげることがあります。
 

正しい説明をする前に、本人の不安を受け止める。
それが、認知症理解の大切な第一歩です。

認知症になっても、すべてが失われるわけではない

認知症という言葉には、どうしても重い印象があります。
 

しかし、認知症になったからといって、その人の人生や人格がすべて失われるわけではありません。
 

好きだったこと
大切にしてきた習慣
安心できる場所
うれしいと感じる瞬間
人とのつながり
その人らしさ
 

それらは、認知症になっても残っていることがあります。
 

だからこそ、周囲が「もう分からないだろう」「何もできないだろう」と決めつけてしまうと、本人の力や希望を奪ってしまうことにもなります。
 

認知症への理解とは、単に症状を知ることだけではありません。

本人がどのような世界を生きているのかを想像し、その人らしさを大切にしながら関わることだと思います。

家族だけで抱え込まなくていい

もう一つ、最初にお伝えしたいことがあります。
 

認知症のことは、家族だけで抱え込まなくてよいということです。
 

「まだ介護認定を受けるほどではない」
「こんなことで相談していいのだろうか」
「家族の問題だから、自分たちで何とかしなければ」
 

そう考えて、相談が遅れてしまうことがあります。
 

しかし、認知症の不安は、早い段階で相談するほど選択肢が広がります。

地域包括支援センター、かかりつけ医、認知症疾患医療センター、認知症カフェ、家族会、介護サービスなど、本人と家族を支える仕組みは地域の中にあります。


大切なのは、困りきってから動くことではなく、「少し気になる」の段階で相談してみることです。

認知症を怖がるだけでなく、理解し、備える

認知症は、確かに不安なテーマです。

でも、怖がるだけでは、本人も家族も動けなくなってしまいます。
 

認知症を知ること
本人の世界を想像すること
責める前に、困りごととして見ること
できることを残すこと
地域とつながること
家族だけで抱え込まないこと
 

こうした一つひとつの積み重ねが、認知症になっても安心して暮らせる地域づくりにつながります。
 

この連載では、『認知症世界の歩き方』の考え方を手がかりにしながら、認知症の方が見ている世界、家族ができる対応、地域で支えるための視点を、50回に分けて考えていきます。


認知症を『怖いもの』だけで終わらせない。
本人の世界を知ることから、理解の旅を始めていきたいと思います。

今日の小さな一歩

身近な親や高齢の方に対して、

「最近、少し変わったな」
「同じことを何度も聞くようになったな」

と感じた時、すぐに責めたり否定したりするのではなく、
 

「何に困っているのだろう」
「どんな不安があるのだろう」
 

と、一度立ち止まって考えてみてください。
 

その視点の変化が、認知症理解の第一歩になります。
 

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2026年06月30日 12:29

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