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想定外の介護|第2回 面会では元気に見えた母。想像以上に進んでいた生活力の低下

第2回

施設に入った後こそ、家族と施設の情報共有が必要だった

※この記事は、実際の介護経験をもとに、本人の尊厳と個人情報に配慮しながら一部表現を整えて構成しています。
 


先日、特養に入居している母に面会に行きました。

母は、表面的には元気そうに見えました。
表情も穏やかで、こちらの問いかけにも反応してくれました。
※但し、既に私が自分の息子ということは分からなくなっていました。(自分の弟と誤認識しておりましたが、以前からもそのようなことはあったので...。)

私は正直なところ、少し安心していました。
 

「思っていたより元気そうだ」
「施設で落ち着いて過ごせているのかもしれない」
「これなら、しばらくはこのままでいいのではないか?」
 

そんなふうに感じていました。
 

ところが後日、施設から届いた母の状況に関する連絡を読んで、私は大きな衝撃を受けました。

母の状態は、私が面会で見ていた印象よりも、ずっと進んでいたのです。
 


施設からの連絡では、

・母の認知面の変化が進んでいること
・トイレに自分から行く回数が減っていること
・声かけや誘導がないと、排泄の行動につながりにくくなっていること
・衣類や寝具の交換が必要になる場面が増えていること
・歩行についても、膝の痛みがあり、長い距離を歩くことが難しくなっていること

 

そうした日常生活の様子が、具体的に伝えられていました。
 

面会の短い時間では、そこまで分かりませんでした。
 

椅子に座って会話をしている母を見ると、「まだ大丈夫そうだ」と感じてしまいます。

でも、実際の生活は違いました。
 

トイレまで自分で移動できるのか?
排泄のタイミングを自分で判断できるのか?
衣類の汚れに気づけるのか?
声かけを受けて行動に移せるのか?
夜間はどう過ごしているのか?
転倒の危険はどの程度あるのか?

そうしたことは、家族が短時間面会しただけでは分からないのです。

私はその時、あらためて思いました。
 

面会で見える親の姿は、生活全体のほんの一部でしかない。

この事実は、かなり大きな気づきでした。
 


介護における「生活力の低下」は、外から見ると分かりにくいことがあります。
 

会話ができる。
笑顔がある。
受け答えができる。
食事も少しは食べられる。
 

こうした姿を見ると、家族はつい安心します。
 

でも、介護の現実は、会話の受け答えだけでは判断できません。

むしろ本当に大切なのは、もっと日常の細かな場面です。
 

トイレに行きたいと自分で言えるか?
必要な時に立ち上がれるか?
歩いて移動できるか?
衣類の着脱ができるか?
パットの交換が必要なことに気づけるか?
夜間に安全に過ごせるか?
声かけがあれば行動できるのか?
声かけがあっても難しいのか?

 

こうした一つひとつが、生活力です。

そして生活力が低下してくると、自宅での介護は一気に難しくなります。
 


たとえば、ポータブルトイレを置けば解決すると思うかもしれません。
 

でも、実際にはそう単純ではありません。
 

本人がポータブルトイレをトイレとして認識できるか?
そこまで安全に移動できるか?
立ち上がりや方向転換ができるか?
使用後に衣類を整えられるか?
パットの確認や交換が必要か?
排泄後の処理を誰が行うのか?
夜間も対応できるのか?
 

ポータブルトイレは、置けば自動的に安全になるものではありません。
 

本人の理解、動作能力、家族の見守り、後始末、衛生管理があって、初めて成り立つものです。
 

この現実を考えると、施設の方が伝えてくださった

「仮に自宅介護をするなら、一人でいる時間はかなり危険になる」
という意味が、重く響きました。
 

表面的には元気そうに見えても、日常生活の場面では、多くの支えが必要になっている。

これは、家族にとって大きな想定外でした。
 


もちろん、今回の話は、施設を責める話ではありません。

むしろ逆です。
 

日々の生活を見てくださっている施設の職員さんが、母の状態を具体的に伝えてくださったからこそ、私は現実を知ることができました。
 

もしこの情報共有がなければ、私は面会時の印象だけで、

「母はまだ元気そうだ」
「施設で落ち着いている」
「大きな変化はなさそうだ」

と思い込んでいたかもしれません。
 

でも、施設側は、家族が見ていない時間を見ています。
 

朝の様子
食事の様子
トイレの様子
夜間の様子
歩行の状態
声かけへの反応
気分の変化
認知面の変化
他の入居者や職員さんとの関わり
 

家族が面会で見る親の姿と、施設職員さんが日常の中で見ている親の姿は違います。
 

だからこそ、施設に入った後も、家族と施設の情報共有がとても大切なのだと思います。
 


「施設に入居したから、もう安心」

そう思いたくなる気持ちは、よく分かります。
 

家族も、それまで本当に大変だったはずです。
入院、退院、施設探し、契約、荷物の準備、費用の確認、兄弟との相談。
 

ようやく施設に入居できた時、
「これで少し落ち着ける」

と思うのは自然なことです。
 

でも、施設に入った後も、家族の役割は終わりません。
 

直接介護の負担は減るかもしれません。
でも、親の状態を知り、施設と情報を共有し、今後の変化に備える役割は残ります。
 

特に、次のようなことは施設入居後も、定期的に確認しておいた方がよいと感じました。
 

排泄の状態はどうか?
トイレ誘導は必要か?
パットや衣類交換の頻度は増えていないか?
歩行状態はどう変化しているか?
転倒リスクは高まっていないか?
認知面の変化はあるか?
食事量や水分摂取量はどうか?
夜間の様子はどうか?
本人の不安や訴えは増えていないか?
今後、家族として想定しておくべきことは何か?
 

こうした情報は、家族の安心のためだけではありません。

親のこれからの暮らし方を考えるうえで、とても大切な材料になります。
 


今回の経験を通じて、私は「定期的なカンファレンス」の必要性も強く感じました。
 

施設に入居している場合でも、家族が受け身でいるだけでは、親の変化に気づくのが遅れることがあります。

施設の方から連絡が来た時だけ聞くのではなく、こちらからも定期的に確認する。

可能であれば、施設の相談員さん、介護職員さん、看護職員さん、ケアマネジャーさんと、状況を共有する場を持つ。
 

そこで確認したいのは、単に「今、元気ですか?」
ということではありません。
 

「生活の中で、どこに支援が必要になっていますか?」
「以前と比べて、変化していることはありますか?」
「転倒や排泄、認知面で気になることはありますか?」
「今後、家族として準備しておいた方がよいことはありますか?」
「もし状態がさらに変わった場合、どんな選択肢がありますか?」
 

こうした具体的な情報共有が必要です。
 

施設に任せきりにするのではなく、かといって家族だけで抱え込むのでもなく、施設と家族が同じ情報を持ちながら、親を支えていく。

それが、これからの介護には必要なのだと思います。
 


今回、私が一番強く感じたのは、「元気そうに見える」と「生活が自立している」は、まったく別のことだということです。
 

面会では元気に見える
会話もできる
笑顔もある
 

それでも、生活力は少しずつ低下していることがあります。
 

特に、排泄、移動、夜間、安全確認は、家族が思っている以上に大きな介護の分岐点になります。
 

もし、施設に入っていなかったら
もし、自宅で一人になる時間があったら
もし、家族だけでこの状態を支えようとしていたら
 

そう考えると、私はあらためて、施設の支援のありがたさと、自宅介護の厳しさを感じました。
 

そして同時に、親が施設に入っているからこそ、家族はもっと施設と情報を共有する必要があると感じました。
 


親の介護は、始まってから分かることが本当に多いです。
 

でも、すべてを始まってから知るのでは、家族は慌てます。
 

面会で見た姿だけで安心していないか?
親の日常生活の状態をどこまで把握しているか?
施設やケアマネジャーと定期的に話す機会があるか?
もし自宅介護になった場合、どこまで家族で支えられるのか?
兄弟で情報を共有できているか?

 

こうしたことを、少しずつ確認しておくことが大切です。
 

親の介護準備は、いきなり相続や延命治療の話をすることだけではありません。
 

まずは、親の生活の現実を知ること。
そして、家族が見えていない部分を、専門職の方と共有すること。
 

そこから始まる準備もあります。
 

私が作成した 「親が倒れる前の介護準備チェックシート」 では、健康・医療、介護・暮らし、お金・資産、家族・兄弟姉妹、終末期・終活、親への切り出し準備まで、30項目で確認できるようにしています。
 

点数が低くても、落ち込む必要はもちろんありません。

大切なのは、今日から小さく確認を始めることです。
 

介護者になると、想定外のことが次々におこりますので、親が元気なうちに準備を進めていくこと、親とのコミュニケーションをしっかりととっておくことが非常に重要です。

まずは、家族が慌てないために、親が元気なうちに最初の一歩を整理するところから始めてみませんか?
 

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2026年07月07日 20:03

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