会社にキャリアを預ける時代の終焉。人生100年時代を生き抜く「自分軸キャリア」という生存戦略

はじめに:なぜ、これまでの「成功法則」は通用しなくなったのか
「良い大学を出て、良い会社に入れば一生安泰」
「会社に忠誠を尽くし、昇進の階段を上り詰めれば、豊かな老後が待っている」
かつて、私たちの多くが信じてきたキャリアの成功法則です。
しかし、今やこのシナリオは、過去の遺物となりつつあります。
前回の記事で述べたように、企業はもはや生涯にわたる雇用を保証してはくれません 。
一方で、人生100年時代を迎え、私たちは70歳、あるいはそれ以降も働き続けることが当たり前の社会に突入しています 。
古い地図が役に立たなくなった航海で、羅針盤も持たずに漂流するわけにはいきません。本稿では、
この予測不可能な時代を生き抜くための、新しい「生存戦略」であり、キャリアの羅針盤となる『自分軸キャリア』の核心に迫ります。
「自分軸キャリア」とは何か?
「自分軸キャリア」とは、組織や環境の変化に応じて、自分自身を柔軟に変化させながら、主体的にキャリアを形成していく生き方そのものを指します 。
会社という組織を、自らのキャリアを形成するための「舞台」や「経験を積む場」と捉え、キャリアの主導権を会社から自分自身の手に取り戻す考え方です 。
この考え方は、従来のキャリア観から2つの大きな転換を促します。
-
キャリアの主導権の転換:「組織主導」から「個人主導」へ
従来のキャリアでは、昇進や異動、給与といったキャリアの重要な要素は、会社(組織)が決定権を握っていました。個人は、組織が敷いたレールの上を走ることが求められていたのです。
一方、「自分軸キャリア」では、キャリアの主導権はあくまで個人にあります 。どこで、何を、どのように学ぶかを決めるのは、他の誰でもない自分自身なのです。
-
成功の定義の転換:「外的成功」から「内的成功」へ
従来のキャリアの成功は、役職、年収、会社の規模といった、他者から見て分かりやすい「外的成功(客観的成功)」が基準でした。 これに対し、「自分軸キャリア」が重視するのは**「内的成功(主観的成功)」**です 。これは、仕事を通じて得られる満足感、成長実感、達成感、幸福感といった、個人の内的な価値観に基づいた成功を指します 。たとえ高い地位についても、心が満たされなければそれは成功とは言えません。逆に、地位や報酬は高くなくても、自分らしい貢献ができていると実感できれば、それは紛れもない「成功」なのです 。
なぜ今、「自分軸キャリア」なのか?
終身雇用が崩壊し、一つの会社にキャリアを預けることがリスクとなった今、変化に対応できることは、もはや選択肢ではなく、必須の能力となりました 。組織に依存するのではなく、自らの足で立ち、いつでもどこでも価値を発揮できる「雇われる力(エンプロイアビリティ)」を高めることが、この時代を生き抜くための鍵なのです 。
ミドルシニア世代は、長年、組織への貢献を第一に考えてきたかもしれません。その働き方は、決して間違いではありませんでした。
しかし、これからの時代は、その考え方を少しだけアップデートする必要があります。組織への貢献を通じて、同時に**「自分自身の資産」をいかに戦略的に築いていくか**。この視点を持つことが、「自分軸キャリア」への第一歩です。
キャリアコンサルタントにとっての「自分軸キャリア」
この考え方は、ミドルシニアのキャリアコンサルタントにとっても、極めて重要な意味を持ちます。資格を取得したものの、なかなかデビューのきっかけを掴めずにいる方も少なくないのではないでしょうか?
その突破口こそが、自ら「自分軸キャリア」を実践すること、すなわち「複業」という形でコンサルタントとしての活動を始めることです。
本業の安定を基盤としながら、週末や空いた時間を使って個人のクライアントの相談に乗る。この小さな一歩が、あなたを「資格保有者」から、実績を持つ「プロのキャリアコンサルタント」へと変貌させます。
さらに、この視点を持つことで、ミドルシニアのクライアントに対して、単なる転職支援に留まらない、より本質的な支援が可能になります。
例えば、「複業・独立準備のコンサルティング」や、今後ますます需要が高まる「介護と仕事の両立支援」といった領域は、ミドルシニアのキャリアコンサルタントが自らの経験を活かして活躍できる、新しいフロンティアなのです。
おわりに:古い地図を捨て、新しい航海の準備を
会社があなたの人生の面倒を一生見てくれる時代は終わりました。
私たちは、自らの手でキャリアの舵を取らなければなりません。
「自分軸キャリア」は、そのための強力な羅針盤であり、生存戦略です。
では、具体的にどうすれば、この「自分軸キャリア」を実践できるのでしょうか。その鍵を握るのが、あなた自身の「キャリア資産」です。
新たなキャリア戦略の第一歩は本読書会から
※キャリアコンサルタント以外の方の参加も大歓迎です。
読書会のお申込みはこちらから
次回は、あなたの内に眠る価値を可視化し、戦略的に蓄積していくための考え方、「キャリア資産」について詳しく解説します。
投稿されたコメントはありません