【出版報告】【第9回】介護保険で「何が使えて、何が使えないか」を正しく知る
「1割負担だから安心」は半分だけ正しい。制度の全体像を知らないと損をする。
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前回は「完璧にやるより先に少し動く」という介護準備の心構えをお伝えしました。
今回は、いざ介護が始まったときの土台になる「介護保険制度」の基本を整理します。
仕組みを知っておくだけで、準備の精度が大きく上がります。
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■ 介護保険の基本:自己負担は「原則1割」だ.....。
介護保険サービスの自己負担は、原則1割です。ただし所得によって変わります。
・一般(所得が低い方):1割負担
・一定以上の所得がある方:2割負担
→ 単身世帯:合計所得160万円以上かつ年金収入等280万円以上
・現役並み所得がある方:3割負担
→ 単身世帯:合計所得220万円以上かつ年金収入等340万円以上
(厚生労働省「介護保険制度の概要」より)
「1割負担だから大きな出費にはならないはず」と思いがちですが、そこには大事な補足があります。
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■ 「1〜3割負担」で済むのは、給付の対象部分だけ
介護保険が適用されるのは、認定を受けた要介護度の範囲内のサービスに限られます。
在宅の場合でも、保険外のサービス(家事代行・見守り機器・配食など)は全額自己負担です。
施設の場合は、さらに以下が別にかかります。
・食費
・居住費(部屋代)
・日常生活費(衣料品・日用品など)
月額13.8万円(平均)という施設費の内訳には、こうした「保険外」の部分が含まれています。
なお、低所得者向けには食費・居住費を軽減する「補足給付」制度がありますが、申請が必要で対象条件もあります。知らなければ使えない制度です。
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■ 介護サービスを利用するには「要介護認定」が必要
介護保険サービスを使うには、まず市区町村に申請し、「要介護認定」を受ける必要があります。
認定には、訪問調査・主治医の意見書・審査会の判定を経て、結果が出るまで通常30日程度かかります。
認定結果は「非該当(自立)」から「要支援1〜2」「要介護1〜5」の8段階。要介護度が高いほど、使えるサービスの上限(支給限度額)が大きくなります。
▼ 要介護度別の支給限度額の目安(月額・2024年時点)
・要支援1:50,320円
・要支援2:105,310円
・要介護1:167,650円
・要介護2:197,050円
・要介護3:270,480円
・要介護4:309,380円
・要介護5:362,170円
この上限内の1〜3割が自己負担になります。上限を超えた分は全額自己負担です。
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■ 在宅で使える主なサービスの種類
要介護認定を受けると、担当のケアマネジャーがサービスの組み合わせ(ケアプラン)を作成します。在宅で使える主なサービスは以下のとおりです。
・訪問介護(ホームヘルプ):入浴・排泄・食事の介助など
・訪問看護:看護師による医療的ケア
・通所介護(デイサービス):施設に日帰りで通い、食事・入浴・リハビリなど
・短期入所(ショートステイ):施設に短期間宿泊、家族の休息にも活用できる
・住宅改修費の支給:手すり設置・段差解消など(上限20万円)
・福祉用具貸与:車いす・介護ベッドなどのレンタル
この中で特に知っておいてほしいのが、ショートステイです。
本人が施設に数日間宿泊することで、家族が休息を取れます。介護者の疲労蓄積を防ぐ意味でも、上手に活用することが両立の鍵になります。
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■ ケアマネジャーの存在が、制度活用の分かれ目になる
介護保険の活用で最も重要なのが、ケアマネジャー(介護支援専門員)の存在です。
要介護認定を受けると、利用者はケアマネジャーを選び、ケアプランを作成してもらいます。サービスの種類・頻度・事業者の選定まで、ケアマネジャーが一緒に考えてくれます。
制度は複雑で、自分だけで最適な組み合わせを考えるのは難しいものです。ケアマネジャーとの関係を早めに作り、遠慮なく相談できる環境を整えることが、介護を長く続けるための重要な基盤になります。
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■ 制度は「知っている人」にしか機能しない
介護保険は、申請・認定・ケアプラン・サービス利用まで、すべて自分から動かないと始まりません。
何も知らない状態で介護が始まると、慌てて調べながら申請し、認定が出るまでの数週間を何もない状態で過ごすことになります。
一方、事前に「流れ」だけ知っておくと、必要な時に迷わず動けます。
まず覚えておくべきことは、たった2点です。
① 介護が必要になったら、まず市区町村の窓口か地域包括支援センターに相談する
② 認定には時間がかかるので、早めに動くほど有利
この2点を知っているだけで、介護が始まったときの初動のスピードは大きく変わります。
次回は「仕事と介護を両立させた人がやっていた3つの習慣」をお伝えします。
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