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親のスマホが開かない問題。AI時代の「気をつけるべき落とし穴」と見えない資産の共有術

第15話

「昔のアルバムを見返して、親と心を通わせることはできた。でも、親のスマホやパソコンの中身まではさすがに聞けない...。」
 

前回の記事で、親の思い出(生きた証)を入り口にして対話の糸口を掴んだあなた。
しかし、私たちが生きる現代において、実家の押し入れを片付けるだけでは「介護・終活準備」は終わりません。
 

連載第15回となる今回は、AI時代・デジタル社会ならではの「気をつけるべき落とし穴」であるデジタル遺品(見えない資産)のリスクと、親のプライドを傷つけずにパスワードを共有してもらうスマートな防衛戦略について解説します。

■ 70代の親が抱える「見えない資産」の正体

今の70代は、私たちが想像している以上にデジタル機器を使いこなしています。
LINEで友人や孫と連絡を取り、YouTubeを楽しみ、Amazonで買い物をして、中にはネット証券で資産運用をしているアクティブなシニアも珍しくありません。
 

しかし、親が突然脳卒中で倒れて意思疎通ができなくなったり、認知症が進行したりした時、これらのデジタル機器は一瞬にして「開かずの金庫(ブラックボックス)」と化します。
 

・ネット銀行やネット証券の口座残高がわからない
・クレジットカードに紐づいている有料のサブスクリプション(動画配信や定期購入)が解約できない
・メインで使っているメールアドレスのパスワードがわからず、重要な通知が確認できない

 

紙の通帳や保険証券のように「実家を探せば物理的に見つかるもの」とは異なり、デジタル資産はパスワードがわからなければ、家族であっても手続きが非常に困難になってしまうのです。

■ 【事例】ロックされたiPadと、消えた数十時間の労働時間

都内のメーカーで管理職を務めるCさん(48歳・女性)。
AIシステムの全社導入に伴う業務フローの刷新を任され、息つく暇もない毎日を送っていました。
そんな中、離れて暮らす母親(73歳)が突然倒れ、入院することになりました。
 

母親は日頃からiPadを愛用しており、家計の管理もすべてネット銀行で行っていました。
しかし、Cさんは母親のiPadの「画面ロック解除のパスコード」を全く知りませんでした。

 

入院費の支払いや、引き落とし口座の状況を確認しようにも、iPadが開かないためネット銀行にログインできません。
銀行のカスタマーサポートに電話をしても、「ご本人様でないと対応できない」と断られてしまいます。

 

さらに厄介なことに、母親のクレジットカードからは毎月数千円の「謎の引き落とし(サプリメントの定期購入や有料アプリの課金)」が続いていましたが、どのサービスに登録しているのかがわからないため、解約手続きすらできません。
 

結局、CさんはAI導入の重要プロジェクトの合間を縫って、何十枚もの公的書類を役所で集め、各サービス会社との煩雑な郵送手続きに追われることになりました。
貴重な有休と数十時間の労働時間が「パスワード不明の対応」に消え、Cさんは大きな疲労と時間的損失を抱えることになりました。

■ 「もしものため」ではなく「今のセキュリティ」として聞き出す

Cさんのような事態を回避するためには、親が元気なうちにパスワードなどのデジタル情報(オンラインアカウントなど)の管理について話し合っておく必要があります。

しかし、ここで「万が一の時に困るから、スマホのパスワードと銀行の暗証番号を教えて」とストレートに聞くのはNGです。親に「自分の財産を管理されるのではないか」という警戒心を抱かせてしまいます。
 

親の抵抗感を下げるためのパラダイムシフトは、「将来のため」ではなく、「今(現在)のセキュリティと利便性のため」という文脈でアプローチすることです。
 

「最近、スマホの乗っ取りやネット詐欺が増えてるらしいよ。パスワードを忘れてログインできなくなったらお母さんも困るでしょ? 万が一スマホを落とした時や、トラブルがあった時のために、一緒に整理しておこう。私が設定を手伝うよ」
 

このように、「親が今困らないためのデジタルサポート」という立ち位置で寄り添うのです。

■ デジタル情報の共有と管理のポイント

親と一緒にデジタル情報を整理する際、最低限以下の3つを把握しておくことが重要です。

  1. スマホ・パソコンの「画面ロック解除パスコード」 これさえわかれば、後から大半の情報を確認・推測することができます。最も重要なマスターキーです。

  2. ネット銀行・ネット証券の「IDとログインパスワード」 資産の全容を把握するために必須です。ただし、取引暗証番号(実際にお金を動かすためのパスワード)までは無理に聞かず、「どこに口座があるか」と「ログイン情報」の共有にとどめると、親も安心します。

  3. 有料サービスのリスト(サブスクリプション) 何に毎月課金しているかだけは、クレジットカードの明細を一緒に見ながらリストアップしておきましょう。

これらの情報をただ紙のメモに残すだけでは、紛失や情報漏洩のリスクがあります。
ここで、前回の記事でお伝えした「思い出の保存」を入り口としたアプローチが活きてきます。
 

ファミリーアーカイブサービスの活用を機にデジタル情報を共有できる方法を考えましょう。
クラウド上で安全に管理し、きょうだい間でパスワードやアカウント情報を共有する仕組みを作っておくことで、いざという時の対応が劇的にスムーズになります。

 

AI時代において、私たちの「時間」は最も価値のあるリソースです。
親のデジタル情報を適切に共有しておくことは、あなた自身の「時間とキャリアを防衛する」ための極めて有効な投資なのです。

 

次回の第16回では、さらなる難関である「延命治療」や「介護施設」といった重い希望を、親から自然に聞き出す「魔法のフレーズ」について解説します。
 

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2026年04月03日 18:56

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