「私は大丈夫」という幻想。ある日突然鳴る、実家からの電話の恐怖
「うちの親はまだゴルフに行っているし、元気だから大丈夫」
「介護が必要になるとしても、徐々に衰えていくのだろうから、その時に考えればいい」
もしあなたが今、このように考えているのなら、それは非常に危険な「正常性バイアス(自分にとって都合の悪い情報を過小評価する心理)」です。
親の介護は、多くの場合、私たちが想像するような「ゆるやかな坂道を下るような変化」では始まりません。それは、ある日突然、一本の電話によって強制的にスタートするのです。
■ 介護は「ある日突然」やってくる
親の介護が必要になる原因の上位には、常に「脳血管疾患(脳卒中など)」や「骨折・転倒」が入っています。
これらは、昨日まで元気に自立して生活していた親を、一瞬にして要介護状態に変えてしまう恐ろしいトリガーです。
仕事の重要な会議中や、あるいは夜中に、突然スマートフォンが鳴る。
見知らぬ番号や、実家の近所の人、あるいは救急隊員からの着信。
「お母様が自宅で転倒して大腿骨を骨折しました。今すぐ病院に来てください」
「お父様が近所で倒れられ、救急搬送されました」
何の準備もしていない状態でこの電話を受けた瞬間から、あなたの日常は完全に崩壊し、壮絶なパニック状態へと突入します。
■ 準備ゼロで直面する「初動の絶望」シミュレーション
事前の情報共有が全くないまま親が倒れると、病院やケアの現場で以下のような「初動の絶望」に直面することになります。
1. 医療情報のブラックボックス
病院に駆けつけると、医師や看護師から矢継ぎ早に質問されます。
「かかりつけ医はどこですか?」
「現在飲んでいるお薬は?」
「アレルギーはありますか?」
「万が一の時、延命治療は希望されますか?」
親と離れて暮らすあなたは、これらに全く答えることができません。
命に関わる重要な決断を、親の意思がわからないまま、あなた自身がすべて背負って下ささなければならなくなります。
2. 資産と保険の捜索という途方もない作業
入院手続きや今後の費用のために、親の健康保険証や預貯金、加入している民間保険の証券を探さなければなりません。
しかし、どこに何があるのか全く聞いていないため、散らかった実家の中を何日もかけて探し回ることになります。
3. 仕事の突発的な休業とキャリアへのダメージ
これらの対応に追われ、あなたは会社を突発的に、しかも長期間休まざるを得なくなります。
AIの普及に伴う業務変革やリスキリングが求められる今の時代に、長期の戦線離脱はキャリアにとって致命傷になりかねません。
■ 「もっと話しておけばよかった」という後悔のデータ
実際に親の死や深刻な状態を経験した人のデータを見ると、この「突然の事態」に対する後悔が浮き彫りになります。
親の死を経験した方の97.3%が「生前、会話が不十分だった話題がある」と回答しています。
また、自由回答では
「親が急逝したことで何も準備できていなかった」
「病気や認知症が進み要望が聞けなかった」
といった、突然の事態や病状の進行によって、親の意思を確認する機会を永遠に失ってしまった悲痛な声が多く寄せられています。
一方で、親が健在なうちから将来の整理や準備について
「十分に話し合えている」という人は、わずか5.8%(20人に1人)しかいません。
親が健在な時期には、「まだ困っていない」「まだ先のことだと思っている」と優先度を下げてしまう実態が明らかになっています。
■ 「元気なうち」が、準備のタイムリミット
「親が元気なうち」というのは、安心するための理由ではなく、「今のうちにすべて準備を終わらせておかなければならない」というタイムリミットのサインです。
認知症が進行してから、あるいは倒れて意識を失ってからでは、親の希望を聞き出すことも、資産状況を正確に把握することも不可能です。
「私は大丈夫」という幻想を是非見直してください。
次回の第5回では、この「ある日突然」の事態に無策で突っ込んだ結果、私たちがどれほどの経済的ダメージ(数千万円規模の損失)を被ることになるのか、具体的なシミュレーションで解説します。
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