【第3回】900万戸の衝撃!あなたの実家も?忍び寄る「空き家問題」という新たなリスク

これまでの連載で、私たちは「人生100年時代」がもたらす漠然とした不安の正体を探ってきました。第1回ではマクロな視点から「超高齢化社会」の現実を、第2回ではより身近な「老後2000万円問題」を再検証し、公的年金だけでは未来を描きにくい構造的な課題を明らかにしました。そして、これらの大きな社会変化が、もう一つの深刻な問題として私たちの目の前に現れています。それが「空き家問題」です。
「実家のことは、まだ先の話」—そう思っている方も多いかもしれません。しかし、この問題は、あなたが考えているよりもずっと早く、そして確実に、多くのミドルシニア世代にとって「自分ごと」になろうとしています。今回は、この静かに、しかし急速に広がる「空き家」という新たなリスクの実態に、衝撃的な数字とともに迫ります。
900万戸という、もはや他人事ではない現実
まず、日本の空き家が今、どれほどの規模になっているかご存知でしょうか。総務省が発表した最新の「住宅・土地統計調査」によると、2023年時点での全国の空き家総数は、ついに900万戸に達し、過去最多を記録しました 。これは5年前の前回調査から51万戸も増加した数字であり、日本の住宅総数に占める空き家率は13.8%にものぼります 。つまり、国内の住宅の約7軒に1軒が空き家という、驚くべき状況なのです。
さらに深刻なのは、その「中身」です。空き家と一言で言っても、賃貸用や売却用、別荘なども含まれます。しかし、最も問題視されているのは、そうした利用目的がなく、長期間放置されている「その他の空き家」です。この「その他の空き家」は、この20年間で約1.9倍に増加しており、その数は385万戸に達しています 。これらの住宅は、適切な管理がされずに放置される可能性が極めて高く、様々なリスクの温床となり得るのです。
なぜ空き家は増え続けるのか?その原因はあなたのすぐそばに
この問題の根源にあるのは、やはり日本の「高齢化・人口減少」です 。そして、空き家が発生する直接的な引き金の多くは、「居住者の死亡」や「別の住宅への転居」であり、その結果として「相続」が発生することです 。
親世代が暮らしてきた実家。しかし、子ども世代である40代、50代の多くは、すでに別の場所に生活基盤を築いています。親が亡くなったり、施設に入居したりすることで、ある日突然、実家を相続することになる。しかし、そこに戻って住むわけではない—。こうしたケースが、利用目的のない空き家を爆発的に増加させている最大の要因なのです。
これは、もはや一部の人の特別な話ではありません。親を持つすべてのミドルシニア世代が、いつかは直面する可能性のある、普遍的な課題と言えるでしょう。
「とりあえず放置」が招く、負の連鎖
「いざとなったら売ればいい」「とりあえず、そのままにしておこう」。そう考える気持ちはよく分かります。しかし、その「とりあえず放置」という選択が、実家を価値ある資産から、お金と手間を吸い取り続ける「負動産」へと変えてしまうのです。
1. 容赦なくのしかかる「税金」というコスト 家は、誰も住んでいなくても所有しているだけで「固定資産税」と「都市計画税」がかかります 。さらに恐ろしいのは、管理を怠り、倒壊の危険などがあると自治体から「特定空き家」や、その前段階である「管理不全空き家」に指定されてしまうことです 。この指定を受けると、これまで適用されていた住宅用地の特例措置が解除され、土地の固定資産税が最大で6倍に跳ね上がる可能性があるのです 。
2. 維持管理という、終わりのない出費 放置された家は、驚くべき速さで劣化します 。屋根の雨漏り、外壁のひび割れ、庭の雑草、害虫の発生…。これらを防ぐためには、定期的なメンテナンスが不可欠であり、その都度費用が発生します 。火災保険料も、空き家は割高になる傾向があります 。
3. 地域社会へのリスク 管理不全の空き家は、景観を損なうだけでなく、不法投棄や放火、犯罪の温床になるリスクも抱えています 。万が一、老朽化でブロック塀が崩れたり、屋根瓦が飛んだりして隣家や通行人に被害を与えてしまった場合、その責任はすべて所有者であるあなたが負うことになるのです。
不安を「行動」に変えるために
「物置として必要」「解体費用をかけたくない」「仏壇など捨てられないものがある」—。空き家を放置してしまう理由は、経済的なものから感情的なものまで様々です 。しかし、先延ばしにすればするほど、家は傷み、金銭的負担は増え、選択肢は狭まっていくという事実から目を背けてはいけません 。
超高齢化、年金不安、そして空き家問題。これらはすべて地続きの課題です。しかし、問題を正しく認識し、早期に行動を起こすことで、リスクをチャンスに変える道筋も見えてきます。
次回は、この厄介な「空き家」という問題を逆手にとり、いかにして「未来の資産」へと転換していくか、その具体的な可能性について探っていきます。「負動産」を「富動産」に変える、新しい資産形成の選択肢にご期待ください。
【次回予告】 第4回:負動産を「富」動産へ!空き家活用という新しい資産形成の選択肢
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