管理職の「責任感」が介護を失敗させる? あなたを縛る「私がやらなきゃ」という呪縛【55歳からの「親と私の未来」戦略 Vol.3】
前回は、遠距離介護に潜む「3つの見えない敵(時間・お金・情報)」について、厳しい現実をお伝えしました。
それを読んでもなお、
「頭では分かったいるけれど...。」
「そうはいっても...。」
「それでも、長男(長女)である私がなんとかしなければ...。」
「育ててくれた恩を返さなければ...。」
と、覚悟を決めている方もいらっしゃるかもしれません。
特に、普段から責任ある立場で、困難なプロジェクトを完遂してきた優秀な管理職の方ほど、その傾向は強いでしょう。
しかし、今日はあえて申し上げます。
その、仕事で培った素晴らしい「責任感」や「完遂力」が、介護においては最大の落とし穴になる可能性があるのです。
「仕事のマネジメント」と「介護」の決定的な違い
なぜ、優秀なビジネスパーソンが介護で躓いてしまうのか?!
それは、「仕事」と「介護」の性質が根本的に異なるからです。
仕事には、納期があり、予算があり、ゴール(達成すべき目標)があります。計画を立て、リソースを配分し、進捗を管理すれば、ある程度の成果は予測できます。あなたはそれを長年やってこられたプロフェッショナルです。
しかし、介護はどうでしょうか?
納期がない(終わりが見えない):介護生活は数ヶ月で終わるかもしれないし、10年以上続くかもしれません。
予測不能な事態の連続:今日の体調が明日も続くとは限りません。
認知症の症状などは論理的な対応が通じないことも多々あります。
強い感情労働:親の衰えを直視する悲しみ、理不尽な言動への怒り、割り切れない感情が常に渦巻きます。
これを仕事と同じ感覚で、「私が計画を立てて、私が実行して、私がコントロールする」と挑んでしまうと、どうなるでしょうか?
「私がやらなきゃ症候群」の末路
「親の面倒は自分が見るべきだ」
「他人に任せるのは無責任だ」
「忙しい兄弟には頼めない」
このように一人で全てを抱え込んでしまう状態を、私は「私がやらなきゃ症候群」と呼んでいます。
この症状に陥ると、プロのサービス(ヘルパーやデイサービス)を利用することに罪悪感を覚えたり、親の要望(「家にいたい」「他人は家に入れたくない」など)を全て叶えようとしてしまいます。
その結果、何が起こるか。
あなたの貴重な時間と体力は限界を迎え、仕事のパフォーマンスは低下。
精神的な余裕を失い、一番大切にしたいはずの親御さんに対して、ついキツイ言葉を投げかけてしまう。
そして自己嫌悪に陥る...。
最悪の場合、あなた自身が倒れてしまう「共倒れ」や、耐えきれず衝動的に仕事を辞めてしまう「介護離職」につながります。
厳しい言い方ですが、あなたが潰れてしまうことこそが、最大の「親不孝」なのです。
「自分でする」から「プロに任せる仕組みを作る」へ
では、どうすればいいのでしょうか? 答えはシンプルです。
パラダイムシフト(思考の転換)を起こしてください。
これからのあなたに必要なのは、プレイヤーとして現場で汗をかくことではありません。
「介護プロジェクト」の全体を統括する、賢いマネージャーになることです。
優秀なマネージャーは、自分一人で全てのタスクをこなそうとはしませんよね?
適材適所にメンバーを配置し、リソースを管理し、持続可能な体制を築くはずです。
介護も同じです。
「ケアマネジャー」「ヘルパー」「医師」「看護師」「地域包括支援センター」といったプロフェッショナルたちをチームメンバーとして巻き込み、彼らが動きやすい環境を整え、最終的な意思決定を行う。
更に、民間の介護関連のサービスや士業(行政書士・司法書士など)の方や不用品買取業者、不用品整理業者、葬儀社、不動産業者の方などとのネットワークを構築していくことが非常に重要であり、介護者の負担を劇的に減らすことが可能になります。
「自分では極力何もしない仕組み」を作ることこそが、管理職であるあなたに求められる、真の「介護マネジメント」なのです。
「人に頼る=無責任」ではありません。
「人に頼る=賢い戦略」です。
この呪いから解き放たれた時、あなたの介護は、そしてキャリアは、大きく好転し始めます。
次回は、そんなプロたちに相談する前に知っておきたい、親が出している「小さなSOSサイン」の見つけ方についてお話しします。
【「私がやらなきゃ」と一人で抱え込んでいる方へ】 その責任感は素晴らしいですが、少し肩の荷を下ろしませんか? プロの力を借りることで、介護はもっとラクになります。
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