「何かあったらすぐ帰る」が一番危険?遠距離介護のリアルな実情と「3つの見えない敵」【55歳からの「親と私の未来」戦略 Vol.2】
50代の管理職が直面する、キャリアと親の老いの「魔の交差点」
前回は、その複合危機の全体像についてお話ししました。
第2回目の今日は、特に都市部で働く管理職の方に多い「遠距離介護」の落とし穴について、少し厳しい現実をお伝えします。
「いざとなったら」は、通用しない
ご相談にいらっしゃる方の中で、親御さんが遠方(新幹線や飛行機で移動が必要な距離)にお住まいの方から、よくこんな言葉を聞きます。
「今はまだ元気だし、何かあったらすぐ帰りますから大丈夫です。」
「一応は考えているので、もしもの時は何とかします。」
もし、あなたも同じように考えているとしたら断言します。
その考えが、一番危険です。
なぜなら、「何かあった」その瞬間から、あなたの想定をはるかに超える事態が次々と押し寄せてくるからです。
平日午前10時、突然の呼び出しをシミュレーションしてみる
少し想像してみてください。
あなたは今日、重要な会議のプレゼンを控えています。
そんな平日の午前10時、スマートフォンに見知らぬ番号(おそらく実家近くの病院か警察)から着信があります。
「お母様がスーパーで転倒して骨折されました。緊急入院が必要です。すぐ来られますか?」
さあ、あなたはどう動きますか?
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仕事の調整:プレゼンは?部下への指示は?今抱えている案件の引き継ぎは?一瞬で頭が真っ白になる中、関係各所へ連絡を入れなければなりません。
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移動手段の確保:新幹線のチケットはすぐに取れるでしょうか?空港へ向かう時間は?どんなに急いでも、実家の病院に着くのは夕方、あるいは夜かもしれません。
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到着後の対応:医師からの説明、入院手続き、必要なものの買い出し...。息つく暇もありません。
そして翌日、あなたは気付くのです。
「あれ、いつ東京(職場)に戻れるんだ?」
入院は始まりに過ぎません。
・退院後の生活はどうするのか?
・リハビリは?
・自宅で一人暮らしは可能なのか?
・施設を探すのか?
「すぐ帰る」つもりで行った一度の帰省が、終わりの見えない「遠距離通い」の始まりになるのです。
遠距離介護を襲う「3つの見えない敵」
準備なき遠距離介護は、ボディブローのようにあなたの心身を蝕んでいきます。そこには「3つの見えない敵」が潜んでいるからです。
敵その1:移動時間と体力の消耗
週末のたびに往復数時間の移動。実家に着いたら家事や手続きの山。
休まる暇がなく、月曜日の朝は疲労困憊で出社する。
これが続けば、いずれあなたが倒れてしまいます。
敵その2:見えないお金の流出
新幹線代や飛行機代といった交通費はバカになりません。
月に2回、往復3万円かかれば、それだけで年間72万円です。
さらに親の医療費や介護費が加わります。あなたの老後資金がみるみる削られていく恐怖と戦うことになります。
敵その3:情報不足による不安
離れているため、親の本当の姿が見えません。
「大丈夫」という親の言葉を信じていいのか?電話に出てくれない時の焦燥感。常に漠然とした不安がつきまといます。
物理的な距離は、「戦略」で埋めるしかない
脅すような話ばかりして申し訳ありません。
しかし、これが遠距離介護の「リアル」なのです。
「何かあったらすぐ帰る」「いざとなったら何とかする」
という言葉は、厳しい言い方をすれば、「今はまだ何も考えたくない」という思考停止のサインかもしれません。
物理的な距離はどうにもなりません。
だからこそ、私たちには「事前の戦略と準備」「具体的な行動」が必要です。
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いざという時、誰がキーパーソンになるのか?
(地域包括支援センター、ケアマネジャーなど) -
遠隔で見守るツールはあるか?
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緊急時のきょうだい間の役割分担は?
これらを平時のうちに構築しておくことこそが、遠距離介護を乗り切る唯一の方法です。
次回は、そんな危機に陥りやすい管理職特有の思考の罠、「私がやらなきゃ症候群」についてお話しします。
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