なぜ話せない? 親子の間に立ちはだかる、見えない「感情の壁」の正体

前回、私たちは親との対話という険しい壁を乗り越えるための「3つの鍵」—タイミング、ツール、サポート―について、その全体像を明らかにしました。
しかし、これらの鍵を手にしてもなお、多くの人が扉の前で立ち尽くしてしまうのはなぜでしょうか。それは、私たちの目の前に、物理的な鍵では開けることのできない、もう一つの見えない壁が立ちはだかっているからです。
それが、親子双方の複雑な感情が絡み合ってできた、「感情の壁」です。
仕事と介護の両立、終活、お金の話
これらの対話が難しい根本的な理由は、単なる「気まずさ」や「照れ」といった表層的な言葉では到底片付けられません。
その奥には、親子という、世界で最も近くて深い関係だからこそ生まれる、根源的な恐れ、長年かけて築き上げてきたそれぞれのアイデンティティ、そして言葉にされない期待や役割意識が、迷宮のように複雑に絡み合っているのです。
私たちは、知らず知らずのうちに、この「感情の迷宮」に迷い込んでいます。親は親として、子は子としての役割や思い込みに縛られ、本音で向き合うことからお互いを無意識に遠ざけてしまう。家族というシステムは、時に「問題に触れない」ことで、かろうじてその均衡を保とうとします 。しかし、その沈黙の均衡は、危機が訪れた瞬間に、あまりにも脆く崩れ去る運命にあるのです。
この対話の難しさの正体を知ることは、迷宮を抜け出すための最初の、そして最も重要な一歩です。なぜ私たちは、これほどまでに大切な会話を始めることができないのか。なぜ、愛情があるはずなのに、すれ違ってしまうのか?
今回から数回にわたり、この「感情の迷宮」の地図を、少しずつ解き明かしていきます。
そのような状況を解決するための方法の1つが、「私と家族の100年ライフ見える化ノート」です。
「私と家族の100年ライフ見える化ノート 体験ワークショップ」のお申込みはこちらから
開催日①:8月10日(日)20:00~22:00
開催日②:8月11日(月)13:00~15:00
次回は、まず「親側」が抱える、威厳と不安が入り混じった複雑な心境――老いと、役割の変化に対する根源的な恐れ――について、丁寧に紐解いていきましょう。
投稿されたコメントはありません